偶然と想像のレビュー・感想・評価
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風景の切り取りが良い
偶然という状況で発する言葉が人間を描写する。
元カレへの身勝手な心情!
セクハラに身構えながらも真摯に応じる教授、そして制御できない自分!
想いを寄せた高校の同級生との再会!が別々にそれぞれの感情を呼び戻す。
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恣意的な偶然を感じさせないストーリーで3話とも面白かった。ほぼ会話劇なのに引き込む力がすごい。
一番はまったのは、第二話の『扉は開けたままで』。瀬川教授と交わした約束に奈緒が念を押すシーンでは、堪え切れず笑ってしまった。上品な雰囲気の劇場なので笑わないように我慢していたが、奈緒が教授に対して放った二の矢は強烈だった。朗読のシーンは何度も見てみたいというか、目を瞑って聴いて見たい。
『魔法(よりもっと不確か)』は、古川琴音に当て書きしたように感じた。不思議ちゃんのオーラをまとっているから、彼女の行動に妙に納得がいってしまう。
『もう一度』の展開には、びっくりさせられたが、他の章に比べると面白味に欠けたかな。
やはりスクリプトの妙
想像以上に思いっきり笑えて、やっぱ発せられ絡み合うスクリプトが絶妙で、知的だなーと─終いには感動。
正直、絵にはそれほど引きつける力を感じなかったし、音楽もシンプルなクラシックで、ほぼ会話で成り立っている作品集だったので、個々が長く感じたけれど、それでもずーっと面白かったです。長く感じさせないために、短編集という形をとった、と勝手に解釈。それが奏効して、3倍楽しめる映画に仕上がっていた気がしました。
演出も、プロチックなところから素人的なところ或いは台詞棒読み的なところ等々、これまでの濱口映画の集大成(もっともっと進化していくんでしょうけど─)といった様相で、これぞ唯一無二と断言したくなるほどに、シンプルかつ個性的な映画でした。
静かに、しかし深く感動した
「ハッピーアワー」「寝ても覚めても」「ドライブ・マイ・カー」に続く濱口竜介監督の新たな傑作。
これは心に刺さる3つの短編のオムニバス。
①魔法(よりもっと不確か)・・・親友と仲良くなった男性が2年前に別れた元カレだと気づき、彼と再会するが…
② 扉は開けたまま・・・落第し内定取り消しになった男子学生が大学教授を逆恨みし、ハニートラップを仕掛けようと主婦で年上のセフレ女子学生に教授の研究室を訪ねさせるが…
③ もう一度・・・高校時代に友人だった2人の女性が地元・仙台で20年ぶりに再会したが、話が噛み合わず…
「偶然」から導き出される真実は往々にして厳しいものだが、それも一つの通過点なのだろう。未来まで見えた気がした。
極上の短編小説を読んだみたい
ファンタジーが成り立つところ
濱口竜介監督の作品は2作目。
東京芸術大学出身というのが気になってる。
今回の映画は、棒読みぽい台詞の流れに小津安二郎を連想させたり、ドライブマイカーのチエホフを思い出させた。多分、監督自身が信じている世界であることを感じる。
パンフレットに、エリックロメールの名を見て、然もありなんとやけに合点がいった。
日本語理解不能の人が「偶然と想像」を字幕で理解する感覚は、私が見たエリックロメールの映画に通ずると。
(けど、ロメールの方がもっと生っぽさがあった・・)
個人的には、「第3話もう一度」の話が良かった。互いの「もう一度」の再会を脱構築する展開は、とても楽しい。
果たして、初対面の相手(同性)に、私はあそこまで、心を開くだろうか? けど、開いたら(拓いたら)きっと世界は楽しくなる。
パンフレットの表紙に「wheel of fortune and fantasy」を見るに、想像=ファンタジーなんだということにたどり着く。
意味の世界は、それぞれ個々の人間の脳内で形になる。
そもそも、映画はそのようにできているのだ。
ひとつ、世界がより幸せになる映画の手法を目撃した。
色々とこちらの意表をついてきて
偶然の怖さと人間の本性
恐らく本年最後の映画鑑賞になるでしょう。タイトルは「偶然と想像」。最近の作品では「ドライブ・マイ・カー」がよく知られている濱口竜介の最新作で、短編3本からなります。この後に4本分の短編集を制作して完成らしい。「このままいくと、最悪の結果になるかも…」と言う不安をかき立てながら、最終的には軟着陸すると言うお話。
1本目は古川琴音演じるモデルとヘアメイク、モデルの元彼という構成。2本目は芥川賞を受賞した大学教授と、彼にハニートラップを仕掛けようとする学生(ただし人妻で子供あり。同じゼミの学生とちょっと不倫中)のお話。3本目は仙台に高校の同窓会で帰郷した女性と、たまたま駅で出会った同級生と思しき女性の一時の出会い。ほんのちょっとの偶然が思わぬ事態を引き起こす。車中や家、大学研究室などの閉じられた空間の中で言葉を重ね、それが時にこれまでひた隠しにしてきた本性を浮かび上がらせたりもする。
登場人物たちが胸に秘めたもの、ちょっとした嘘が、これまで大切にしてきた人との関係性を壊してしまうかもしれない、そんな危うさが日常に転がっていることを痛感せずにはいられない。それは少し前に観た「ドライブ・マイ・カー」と通じているところでしょう。
この作品は上映館も少ないけれど、何故か2室で日に7回も上映している。昨日は午後3回目の上映で観たが、ほぼ満席で若い人も多い。特に宣伝がされているというわけではないのに、良い作品については、口コミでその良さが広まるということか。
映画の可能性
今年見納め映画。
なんとまぁ、満席だった、とはいえ、一つ空きなのだが、この映画館で満席は久しぶりの事で、さすが御用納めとビックリしたのと、話題性もあるのか?と思った。
色々な偶然とそれぞれの想像が織りなすという画像作りは、非常に面白く映画の可能性を感じたし、映画って改めて、奥深く、そしてこういう映画は好きだなぁ🥰
で、私は3話が好き。何てったって笑いがあった。へー、そんな勘違いが今時あるのか〜、と思いながらも、全く偶然に関わった人と、あんな風に時間や思いを共有出来たのなら その一瞬の人生は楽しそうだし、しばらく幸せな気持ちでいられそうだ。私も欲しいな、そんな偶然。
アヤ役の役者が断然光る。声とその佇まい、ものすごく自然で日々の生活を 少しのクエスチョンを持ちながらもキチンと暮らしている感じを演じていたのがとても良かった。
俳優の力が試される会話劇
偶然がもたらす予想外の展開を楽しめた。
3話とも好きで3話がやっぱり好き
『ドライブ・マイ・カー』以上に好きな映画になった。セリフを聴いているのが楽しい。機械翻訳を通したみたいな硬いセリフの応酬もあれば、本当にリアルに今の日本で交わされている会話みたいなやりとりもある。おざなりに配置されたセリフが一つもないと思った。
1話は友達同士の恋バナのしゃべり方がものすごくリアルだった。特に古川琴音さん天才的。元カレ相手になると、妖精みたいな可憐な声でキッツいこと言うので、お好きな方はたまらないやつでは。知らんけど。青山トンネルや渋谷駅前のデッキの風景がナイスマッチ。
2話は一番笑ったかも。棒読みと相性のいい脚本。森郁月さんって初めて見たけど、初めて見たせいもあるのか、本当に主婦で子どもがいて大学に入り直したけど周囲になじめていない人に見えた。渋川清彦さんは、この人こそカメレオン俳優。
3話はストレートにいい話だった。二人の人生を祝福するみたいに、光あふれ、開放的で、緑たっぷりの画面が多くて、とてもいい気持ちになる。エスカレーター、いい使い方。
居心地のわるい渋谷で見る罠
村上春樹の短編集のような趣向
まさしくタイトルどおり、いずれも「偶然」を発端に、そこから発展する物語を「想像」したような、3つの短編からなる濱口竜介脚本監督作品。
共通するテーマは「性愛」と「心の穴」といったところか。「ドライブ・マイ・カー」以上に、村上春樹の短編集のような趣向が感じられた。
冒頭第1話のタクシー内のシーンから、延々と会話が続く。いわゆる濱口メソッドで、役者にテキストを染み込ませていったのだろう。玄理がとても自然で上手い。
第2話の二人の会話は固いが、小説の朗読がこの作品でも面白い。スリリングだか、結末は苦い。
第3話は、さすがにあり得ないだろうと思いつつ、もしあったら、という想像力が最も感じられた。占部房子と河井青葉の達者さと相まって、ユーモラスで後味が良い。
エリック・ロメールにならって、これからも連作短編を企画しているそうなので、次回作も楽しみに待ちたい。
やっぱり、基本的に、浜口監督が苦手なんだと思う。
いや、「寝ても覚めても」が私的には最低ランクだったと言うのもあり。
概念構成力と知性は別物。明確な答えなど無い問いに対して、何を見せてくれるのかは知性に拠り。物事の本質を見抜き、端的に簡単な言葉で説明するには、概念構成力の高さが要る。
なんか。どちらでも無くって。
会話劇で、これは辛かったです。
1話目は、若い人の恋愛なんで、割と面白かったですし、フェイクは効きました。
2話目が絶望的かも。いや、状況からは「概念化した会話」を期待する場面で、ただ婉曲化しただけの言葉のやり取りからの「直接的行為(自慰)」ってのが。
3話目は好きでした。この辺りが、浜口監督の身の丈じゃないかなぁ、って思いました。
シューマンのピアノ曲は、この映画内容にも合っていると思いました。曲が、っていうより、ロベルト・シューマンと言う選択が。
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