偶然と想像のレビュー・感想・評価
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M1グランプリ同様に。
何故…
虚実皮膜の間
上映前に濵口監督のビデオメッセージが現れ、肩の力を抜いてご覧下さい、と仰る。予告編も未見で、この題名では何やら哲学めいて自然と身構えていた者にとって、そう云われてみても……
「魔法」の冒頭、タクシーの後部座席での女性二人の長いシーン、あぁ『PASSION』の最初のシーンと同じだぁ、乗り物の好きな監督!
『天国はまだ遠い』の玄理が出てる、久し振り。そして台詞のリズム相変わらず弾み、遣り取りは自然で惹き込まれる。“三日後”またもや〈偶然〉は三人を引合わせる。
唐突な古川琴音へのズームアップ、何だこりゃ、と思っていたら、琴音の元カレであった事をぶちまける〈想像〉のシーンであって、実際は波風立てずに身を引くという場面がカットなしに続いている。あざやかな演出。
三人それぞれの役作りとその関係性が映画ならではの表現で描かれる。もとより映画はフィクションでありフィクションは〈偶然〉を織り交ぜて虚構の話を作り上げるが、その作り話と作り話の間に人間の微細で繊細で摩訶不思議なリアルが潜んでいるように感じられる。言語化は難しい。だから映画表現が……
「魔法」だけで息が切れました。
最後に『ハッピーアワー』の桜子役の菊池葉月の名前がエンドロールに音楽?担当として出ていました。
名作の予感がする
濱口竜介監督、脚本による三部作である。いずれも女性の愛と性をテーマにした人間関係を描く。仏教用語で言えば「縁起」の本質に迫ろうとした作品とも考えられる。仏教の「縁起」は原因と条件の関係性を主要概念とするからだ。
第一部は二十代、第三部は四十代の年齢の女性が主人公である。第二部だけは年齢が不確かだが、およそ三十歳前後と思われる。時代設定は現代ないし近未来だ。観客は身構えずに鑑賞できると思う。
古川琴音が演じた二十代は、幼児が自分の存在を主張するように自己肯定感で一杯だ。子供は仕方がないが、大人になってもそういう人は、周囲から見ると鬱陶しい存在である。他人の場所や心の中に、文字通り土足で踏み込んでくる。中島歩の台詞にあったように、ほとんどストーカーだ。他人の価値や権利を認めず、自分との比較で上か下かだけを唯一の価値観とする。常に他人と勝負しているようなもので、本質的に共生はできなタイプである。精神医学で言えば、アベシンゾーと同じ自己愛性人格障害だ。救いがない。
友人を演じた玄里の台詞回しがびっくりするほど上手かった。古川琴音よりも10歳上の分だけ演技に幅がある。34歳だが二十代の役もまだまだこなせる。注目女優のひとりに加えることにした。
森郁月が演じた推定三十代は、二十代とは逆に自己肯定感の低い役で、自尊感情の強い人に負けて言うことを聞いてしまう傾向にある。不良の手下、いじめっ子の取り巻き、それにブラック企業の社員などが同じ傾向を持つ。どこかで自分を肯定したいが、壁に跳ね返されるばかりで、自分はこんなものだ、こんな人生なんだと諦める。
芸達者の渋川清彦に棒読みの台詞を読ませたのは、本を読んでいるかのように森郁月に聞こえさせたかったためだと思う。わかりにくいが、森郁月が教授に会いに行ったのは、もしかしたら教授から自己肯定感が与えられるかもしれないという無意識の淡い期待があったためだとも考えられる。そこに必要なのは説法であって、感情ではない。渋川清彦が無感情で話すことに意味があった。
占部房子が演じた四十代は、精神的に安定していてホッとする。とはいえ、心の中では自己肯定と自己否定の相克が常にあり、何かにつけ心を揺さぶられている。相手役の河井青葉が演じる主婦は、心が動かない生活を嘆く。日常にドキドキすることもワクワクすることもないと言うのだ。そこに現れた見知らぬ女が、何か異質なものを持ち込もうとしている。物的には何も変わらないが、精神的には大きく心を揺さぶられる。それが嬉しい。
占部房子と河井青葉。いずれも四十代の女優で落ち着きがある。演じたふたりのそれぞれの心の中では理想と現実、希望と絶望、執着と諦観といった割り切れなさがあるのだろうが、生きていくことには前向きだ。このふたりの芝居は演技も自然で、いつまでも観ていられる気がした。
本作品は脚本も演出もとてもいいし、役者陣の演技も素晴らしく、たくさんのシーンが心に残った。名作の予感がする。
新感覚の会話劇って感じ! 面白くて笑えた!
3本のショートムービーで構成。
それらに関連性は無し。
一度に3つの映画が観られてお得な感じも良かった!
①魔法 4.0点
古川琴音さんがとても良い!
何で彼女はスクリーンで観ると美しいんだろう(笑)
タクシーの中の会話がリアル過ぎ!
アドリブで喋ってる感じが凄い。
ストーリーも実際にある様な展開。
カフェのシーンは大爆笑!
②扉は開けたまはまで 3.5点
主婦で学生。奈緒役の森郁月さん。
知らなかったけど美しい。
この作品は会話劇の真骨頂と言った感じ。
棒読みに近いセリフなんだけど丁寧な喋り方が印象的。
ある小説を奈緒が朗読するんだけどエロい(笑)
そしてメッチャ笑えたー(笑)
③もう一度 3.0点
「偶然と想像」と言うより勘違いから始まる展開。
同窓会アルアル的な感じで面白い。
これも実際ありそうな展開で笑えた。
本作は会話がポイントなので音声だけでも楽しめる作品かも。
役者の皆さんがの丁寧なセリフが心地良かった。
劇場鑑賞案件ではない感じだけど、笑えるシーンの観客の一体感はとても良かったです( ´∀`)
棒の世界
ワンシチュエーションの演劇的な何かが好きな監督なのだなと、「ドライブマイカー」を思い出しつつ納得。
左側の2秒と静止していられないナルシストと後方の「新聞屋さんにチケット貰ったから来たわ」的なイビキマダムに辟易しましたが、マダムは起こしたし兄さんは一瞥したら1分位は静止出来る様になったので、まぁまぁ良しって事で。スマホ弄りも日に日に目立つようになってきたし、何だか悲しいものでございますね。
三本の短編でしたが、全て序盤から中盤まで何かしらイライラ(もしくはムカムカ)な展開なので、「しまった…」なんて思ったりするのですが、三本共にラストでは何故かスッキリしてる不思議な作品群。妙な不穏さや独特のユニークさ等々嫌いでは無かったのだけれど、やっぱり「読み合わせ」の様な棒台詞の応酬は「んむむ??」な感じが拭えませんでした。でも、不思議な魅力はある映画なので、気持ちと時間に余裕のある時にでもどーぞ。
観終わってちょっと幸せな気持ちに
今年最後の映画、皆さんのレビューを観て決めました
演者や内容よりも濱口監督に期待する声が多かったですが、オムニバスという形と共に各々の話の内容も、つながりはないけれども、人生において偶然が何をもたらすのか、偶然を避けた人生などありえないし、予定調和の完璧な人間性を備えている人生だって、わずかの偶然が転機にも転落にもなるおもしろさを感じました 登場している人の人生にとっては、起こって欲しくない偶然でも、離れてみている観客とすれば、日々単調な生活においても何かしら彩が添えられる「期待」を持ちました 第一話の古川さん演じる芽衣子のいやらしさも偶然がなければ包まれたままだったろうに、でもその「もう一人・真実の芽衣子」が現れていくことに、わくわく感すらありました
対照的な第三話、ウイルスによって元のようなコミュニケーションを必要とする時代に戻る中、いくつになっても不安と不満が渦巻く日々の生活において、偶然の出会いがもたらした清々しさ、いいラストでした
私河井青葉さんのファンで、彼女決して中心には出ない役が多いのですが、短編で2人だけの展開でしたから、彼女の安定した演技に大満足でした (12月23日 京都出町座にて鑑賞)
圧倒的な傑作
圧倒的な傑作。
会話劇で、セリフ量はかなり多いはずなのに、それでも能動的に見させる作りになっていることこそ映画のマジックなんだと思う。画面の中にたくさんの情報があふれてる。類推させるだけの何か。類推させようとする何か。その仕掛けがたくさんなされているから面白い。短編同士でリンクしていないようで通底しているところはリンクしているし、前菜・副菜・メインのように、盛り付けが高度(時間の概念が長くなる)になっていくところも良い。
1話。タクシーのシーンの美しさ。どこであんな長回しが撮れるんだろう。恋バナの後向かう場所。そこから始まる怒涛の会話劇。素晴らしい。古川琴音が演じる役、自分だったら絶対面倒くさくて関わりたくない女だけど、この男なら関わっちゃうんだろうな…と思わせる説得力が男性側の佇まいにある。急なズームも良い。
2話。セフレは教授のこともともと好きだったんじゃないかな…。教授の佇まいの品の良さと、出てくる言葉の品の悪さのギャップに笑う。未だに大学教授はそのドメイン使いがちだからね・・・。面白い。
3話。偶然が過ぎる。覚えていてもいいような気がするけど、時間の経過とはそういうものなのだろう。それでいて、関係性が如実になってもせっかくだから…となるのも確かになぁとなった。
会話とはセックスである。エロい。最高の映画体験だった。
会話の内容が入ってこない。
偶然と想像が織り成す独立した3つのストーリーで描かれるオムニバス作品。それぞれ掘り下げたらおもしろそうだけど、ほぼほぼ1対1の会話劇が続くので正直退屈してしまった。濱口監督のスタイルなのか、うまい役者さんでないと大惨事になりかねない抑揚をつけない独特のセリフ回しも、確かに印象的ですけど私はハマらずです。
3本ともなかなかマニアックな展開で要は、偶然は必然であって、想像がいつの間にか現実になるみたいなことなんですかね。3本目の「もう一度」はまさにそんな感じでした。
オムニバスなのでテンポはいいはずなんですけど、なんかやたら長く感じてしまった。会話の内容も途中から興味なくなってしまって惰性で聞いてました。
濱口竜介の世界観
あり得ないような偶然と想像をテーマに異なる3つの物語がオムニバスで紡がれる。全体的な評価は3.5だけどそれぞれ評価が異なるので以下3編をそれぞれ細かく書きました。
1.魔法 ★★★ 3
タクシーの後部座席での女の子二人の恋バナ。
カメラの長回し、膨大な台詞の量、哲学的な台詞…冒頭から濱口イズムがガンガン溢れてるよね。ドライブマイカーでも車の後部座席の会話が重要なシーンだった。別れた恋人が親友といい感じとか聞くと誰もがモヤモヤするよね。そのなんとも歯痒い気持ち、わかるよ。主人公の女の子古川琴音ちゃんの独特の空気と話し方、適役だわ。
2.扉は開けたままで★ 1.5
大学に通う、娘もいる主婦が同じ大学の男の子とセフレ関係にあり、その男の子に懇願されて大学の教授を陥れるハニートラップをするも、全く違う展開に…最後に重大なミスを侵して本人は離婚し、教授も大学を辞めるというストーリー.あの大学生の男が不幸になればいいのに。
申し訳ないけど、この設定が生理的に受け付けない。劇中の教授のセリフにあったように、不倫とかハニトラとか下ネタを中盤に挿入することにより程よいスパイスになるけど、私はどうも拒否反応がでちゃうんですよ。評価0だったんだけど、教授がいい人すぎて、あの録音のシーンとかなおと教授のやり取りが面白すぎてそこで点数アップです。教授、仙人か!
3.もう一度 ★★★★ 4
三章では舞台は変わって仙台に。中盤のどんでん返しに爆笑!うそ、こんなことってあるの?ってな偶然と、会いたかった人に相手を見立てて話をするという“想像”
彼女たちは40代、この年代に差し掛かると人や主婦には響くんじゃないかな。二人の思いがけない邂逅が胸にジーンとくる作品だ。
“時間に殺される”っていい表現、これ、現代人のほとんどがそうだよね。
「トライメライ」などをはじめとするクラシックピアノがいい。
ああまあだった
会話をずっと聞いているので眠くなる。特に第1話は雰囲気がとても悪い。あんなふうに議論を吹っ掛けられてばかりいたらどんなに好きでも続かない。第2話は、そんな程度のことでクビになったり離婚したりするだろうか。するかもしれないけど、まったく間違いが許されない恐ろしい世の中だ。第3話は相手のことをお互い自分に都合よく勘違いしていたのがあり得そうで面白い。
第2話と第3話は子どもを持っている女性が、人生が子ども中心にならない。あまり子どもに対する気持ちがなさそうだ。
第3話、高校生の息子が好きなアニメのフィギュアをリビングに飾るか? 変なやつ。
最高の会話劇。
二話目、抑揚の少ない話し方で気付く、言葉が本来持つ力
本編前の映像で、監督が気楽に観てって感じの事をおっしゃっていたので、言われた通りに気楽に観ました。
『魔法(よりもっと不確か)』
最初のタクシー内での芽衣子とつぐみの会話、よく有りそうな感じなんです。
だけど、面白い考え方が所々に挟まるから、長くても飽きないんですよね。
それから、場面を移したオフィスのシーンは、カズと芽衣子の強い言葉の応酬。
ここは、考え方の面白い台詞の連発で、楽しかったな。
この話の最大の偶然は、女子社員の戻ってくるタイミングですよね。
このタイミングがずれてたら、違う未来になっていたよね。
『扉は開けたままで』
この話の瀬川と奈緒の会話のシーン、渋川さん演じた瀬川は抑揚が少なく感情がこもらない話し方なんですよ。
そして、その話し方で奈緒の事を次々と自然に肯定していくの。
ここのシーン、私は感動したな。
それでね、話の上手な人って、抑揚の付け方が巧くていろんな感覚を使って、人の心を動かすじゃないですか。
逆に言うと、瀬川の話し方で感動したというのは、これは言葉の持つ本来の力だけで心を揺さぶられたんだと思うの。
心揺さぶられたから、最後の結末は残念だったな、そういう映画だから仕方ないんだけど。
『もう一度』
これは、会話が自然なの。
なので、無さそうで実際無いだろうって話なんだけど、なんだか有りそうって思えてくるんですよね。
三本とも面白かったから、これからも楽しみです。
出来るだけ前情報を入れずに
短編オムニバス(三話立て)という形式、正直「どうか?」と半信半疑で挑みましたが、結論としては三話共に丁度よい尺と面白味でなかなかの満足度でした。
公式サイトやトレーラーは見てもいいと思いますが(私は全く見ずに挑みましたが)、一部の紹介サイト(当サイトを含む)や記事の解説はやや説明しすぎ。短編ですし、この偶然性を前もって知ってしまっていることは勿体なすぎです。
劇場でも特に渋川さんや占部さん、河井さんなどのベテラン勢が演じる二話目、三話目では時折笑い声が起きるほどの意外な言葉や展開があり、これは出来れば前情報少な目でご覧になることをお勧めします。
人の関係性、距離感とそこで交わされるコミュニケーション、濱口作品は脚本(説得力のある言葉と論理)と役者への演出にもつながる「本読み」が観ている側へ程よく想像力を持たせてくれて最後まで面白く感じさせてくれます。
私は、特に第二話の『扉は開けたままで』の渋川さん演じる大学教授で作家の「瀬川」がとても良かったな。彼の言葉には言われている奈緒でなくても救われた気になれます。
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