「人生のタイミング」偶然と想像 Yuさんの映画レビュー(感想・評価)
人生のタイミング
私はこの映画を素晴らしいと思った。
「その人じゃないとダメなのか。
なぜその人がいいのか。」
と常に考えている自分にとっては
とても共感する作品だった。
例えば今付き合っている恋人、
「その人がいいんだ。君じゃなきゃダメなんだ。」
なんて言葉は本当に存在するのかと考える。
別にその人じゃなくなっていいじゃないか?
別れて時間が経ったらまた別の人に巡り合って好きになって関係は作られていく。
こういったやるせないことが
世界には蔓延っていると思う。
第一話 魔法
最後のシーン、なんでも素直に言ってしまうメイコだが
想像力を働かせて自分の気持ちを全て飲み込んで譲った。
好奇心と優しさが混じった人だからこそ
関係を深くこじらせたのだろう。
三者みんなに共感した。
誰も悪くないよな、私はそう思った。
第二話 扉はあけたままで
何を言おうと瀬川は心という扉は常にオープンである。
それが常に扉を開けておいてくれと頼むシーンで表現されていたと思う。
これは大抵の人間が出来ることではない。
自分の弱みを隠してしまうものだ。
自分自身で直視することさえできない人が多いのだから。
曖昧な状態で生きることも並大抵の人間が出来ることではない。
言語化できない場所で生きる人を私は否定しない。
それを才能だといった瀬川に私も救われた。
第三話 もう一度
その人じゃなくてもいいんじゃない?
その人じゃないとダメなの!
という境目を行ったり来たりするお話。
夏子の心に空いた穴はその人でしかないと埋められなかったのか。
いや、そうじゃなくても埋められたのではないか。
人間は偶然を重ねて巡って生きていく。
この手放したくなかったというやるせない気持ちを
とても上手に表現していた作品だった。
人生、タイミングっていうのは常につきものだなと思う。
仮にこの映画があまり好きでなかった人も
数十年後に見たら好きになってるかもしれない。
あまり響かなかった人は、
きっと相手が傷つかないように
相手優先で生きている人だろう。
そういった人はもっと自分本体で
生きたてもいいかもしれない。
様々な出会いと経験によって
考えは変わっていくものである。
その偶然性を楽しみながら
濱口監督は生きているのだろうと感じた。