「不老不死の薬を使った人と使わなかった人」Arc アーク リボンさんの映画レビュー(感想・評価)
不老不死の薬を使った人と使わなかった人
「老後をどう生きるか、親しい人の死をどう受け止めるか」というテーマをまた新しい切り口で見せた映画でした。
ただ、前半の「遺体にプラスチック加工などを施してボディーだけを永久的に残しておく方法」と、
後半の「不老不死の薬を開発したので、薬使用時の若いまま寿命を長くする」
という2つの手法を1つの映画の上映時間にまとめてしまったため、どちらかだけにスポットを充ててじっくり見せても良かったのでは?と少し思いました。
前半は、要するに遺体処置会社なので主人公は身寄りが無い?のか社内で寝泊まりさせてもらいますが、よく考えるとポーズを取らされてる遺体に囲まれて過ごすって。。慣れてきてもちょっとあり得ないような。。合法な社会の設定だとは思いますが、若い女子社員達、遺体から血液を抜くとかまたプラスチック注入するとか綺麗に洗うとか、そんなにテキパキ仕事出来るものなのかな。。となんだか不気味でした。
後半は、主人公が不老不死の薬を使って90歳だけど見た目は30歳のまま、老人ホームみたいなとこで職員でいますが、入所者は不老不死の薬を使わなかった、使えなかった人とかなので当然入所者さん達は普通にお婆さんとかで亡くなっていくし。。なんか、職員に不老不死の人がいるところへ、普通に寿命で老いて死ぬと分かってて入所したがるだろうか??と、映画の設定に奇妙な感じがしました。
そして今回の映画でクライマックスのように感じた部分ですが、実は主人公が17歳の時におそらく未婚で産んだ赤ちゃんがいましたが、幼すぎる母親だからか母性を感じるよりも一人で育てなくては!という怖さから、なんと出産した病院を飛び出して実の子を置き去りに、捨てていて、
まぁ、実際問題、自宅でこっそり産むのでない限り、出産で入院する時に名前住所電話など絶対に明かしてるはずなので、病院から逃げ出したとしても全く追われず見つからずにいるのは無理だと思うんですが、何故赤ちゃんを育てたおそらくおばあちゃん?主人公の母親とか誰か親族とかは主人公をそのままにしていたのか??どういう状況だったのかそこは全く描かれずにちょっとモヤモヤしましたが。。
とりあえずその赤ちゃん、男の子ですが、世の中に出回った不老不死の薬は使わず、また主人公は実年齢では85歳の時に子どもを産み、なぜかこの二人はいつのまにか気が合い、時々一緒にいるんですが、
結局、
見た目30歳の母親(実年齢90歳)
17歳で産んだ息子、実年齢73歳
85歳で産んだ娘、実年齢5歳
の3人が同じ時を過ごします。
異父兄妹で、母親は同じ兄妹だから
73歳のおじいさんと5歳の女の子は気が合ったのか。。と、
73歳の兄、5歳の妹のペアに驚愕。
2人の母親は見た目30歳。。
で、色々あって彼は気づいて、
73歳のおじいさんが30歳の女性に「母さん!」と言うところが、「不老不死の薬を親だけ使って子が使わないとこうなるんだ。。」、と考えさせられました。
結局主人公は90歳までは見た目30歳でいられますが、薬の効果がきれたのか、135歳では見た目80〜90歳くらいの普通のおばあさんになります。
少しずつ老ける普通の人と、人生の最後のほうで急激に老けるのと、どっちが幸せなんだろうか、、と考えさせられる映画でした。