「「死」は「生」の一部」Arc アーク おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
「死」は「生」の一部
イオンワンデーフリーパスポート3本目
予告のシュールな雰囲気と不老不死というテーマに惹かれ、楽しみにしていた本作。それなりに楽しめましたが、ちょっと思っていたのとは違いました。
ストーリーは、プラスティネーションという技術を用いて、生きているかのようなポーズで遺体を保存する仕事に就いたリナが、不老不死を研究する夫により永遠の命を手に入れ、命のあり方について考えるというもの。もっとSF的な展開になるのかと思いきや、不老不死をめぐる人々の受け取り方の違いを通して、命について静かに考えさせられるような作品でした。
話自体は興味をそそりますが、序盤から終始暗い絵づくりで淡々と物語が進み、盛り上がりやおもしろみに欠ける印象でした。そのため、何度か瞬間寝落ちしてしまいました。予告で印象的だった、紐で遺体にポーズをとらせるシーンも、物語上の重要な要素ではなく、ちょっと拍子抜けでした。
ただ、冒頭シーンが伏線として終盤に収束する展開は悪くなかったです。また、若さを保ったまま年齢を重ねるリナを、芳根京子さんが好演していたのもよかったです。見た目は変わらないのに、年齢相応の変化を感じさせる演技だったと思います。
作中に「死は生の対極ではなく、生の一部」という言葉がありましたが、これが最も印象的でした。もし今現在、不老不死が選択できるとしたら、自分はどうするだろうと考えてしまいました。すぐに飛びつきそうな気もしますが、果たしてそれでよいのかと躊躇する自分もいます。古い人間の価値観であり、不老不死を選択できない人間の負け惜しみだとしても、「生」がより輝くために「死」は必要な気がします。不老不死を願う人類も、最後に老いを選んだリナも、所詮は無い物ねだりなのかもしれません。