とんびのレビュー・感想・評価
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終始泣いてしまった
豪快だか感情を伝えるのは不器用なヤス。思っていることとは反対の事を言ってしまうことも多々あるが、愛情が滲み出ているから、泣いてしまう。ヤスの幼なじみ照雲の父、海雲さんが冬の海でヤスとアキラに伝えた言葉と行動の意味に、愛情と厳しさと優しさを感じ涙腺崩壊。血が繋がった家族だけではない、人と人の繋がりにも泣けた。薬師丸ひろ子さん演じるたえ子さんが、会いに来た娘さんの顔をなかなか見れないながらも行動で思いを伝えるシーンもグッときた。アキラ演じる北村匠海さんの声が綺麗だなぁと思って見ていた。照雲さんがヤスの良さをとても引き立てていた。
どこか不器用で真っ直ぐな父親。阿部寛の熱演に随所で泣けました。周り...
どこか不器用で真っ直ぐな父親。阿部寛の熱演に随所で泣けました。周りを固める俳優陣も素晴らしい(個人的には薬師丸ひろ子さん、杏さんが良かった)。様々な親子を通じて絆を感じさせてくれる作品でした。
最高のキャスト、スタッフとこの原作
でなぜか泣けない。
ダイジェスト感が否めない。
予告編で全部見せられていたからかな。
泣かそう泣かそうとしてくるからかな。
私が天邪鬼なんだろうか。
(「余命十年」「コーダ」「ゴーストバスターズ」「マイ・ダディ」は泣きましたよ)
そもそも、あの子はお母さんがどうやって死んだか何も知らなくてかわいそう、という設定があの描写だと無理がある。あの嘘も絶対駄目な嘘だし。
阿部寛、安田顕、薬師丸ひろ子、キャストみんな良かったけれど、大島優子、田中哲司、濱田岳の三人以外はいかにも芝居がかってて、松竹新喜劇の舞台観てるみたい。(松竹新喜劇は泣けます)
見せ場の連続なのでどこがクライマックスなのか、
原作者と同世代だけど、東京の大学へ行くだけなのにあんなだったかなあ。
どうして最初にタイトル出さないんだろう。最後に出す意味あるのかな。「ちょっと思い出しただけ」の時は最後にタイトルが出て、あっと思ったけど。
映像もきれいで、いかにもな音楽も美しいし、何より阿部寛が良かったです。いろいろ書いたけれど、好きな作品です。
最後まで父に「ありがとう」言ってないですよね。
ヒバゴン目撃少年のウソに比べたら大したウソではない
『三丁目の夕日』なみにマツダオート三輪や舞台が昭和感を醸し出していた(夕日ではダイハツミゼット)。その夕日にも登場していた薬師丸ひろ子も小料理屋の女将として好演。日アカの俳優賞でいえば、助演女優賞は確実じゃないかと思えるほど感情を揺さぶられた。もし新設するなら濱田岳にもわき役賞を捧げたい(笑いのパートは彼が独占)。
もちろん主演の阿部寛も良かったのですが、どうしても今までの作品のイメージを焼き直した感じがして新鮮味が足りなかった気もする。銭湯で潜ってしまうシーンでは浮き上がったら古代ローマにテレポートするんじゃないかと冷や冷やしてしまい、暴力的なところやちゃぶ台返し(ちょっと蹴っただけ)では『自虐の詩』をも想起させられた。
笑いあり、涙ありで、マスクがぐしょぐしょになってしまったのも昭和世代のためでしょうか、こうした作品を観たのも久しぶり。アキラの名前も「ダイナマイト150トン」からわかるように小林旭にちなんで命名したのでしょう。何度も歌われてましたが、個人的にはフィンガー5の「恋のダイヤル6700」にハマってしまいました。
細かい伏線とかいっぱいありそうで、親子三世代における絆を感じさせるところが満載。血のつながらない親子と育ての親のプロットも良かった。重松清作品らしい。最後の映像で気づいたのは、ポッポと呼んでいた機関車の玩具。父親ヤスが手作りで作ったモノだったんですね~胴体がカゴメ野菜(トマト?)ジュースの缶だったところが痺れる。それが木工ポッポや箱ごと置いた缶ジュースだったのですね!絶妙!こうなってくると伏線探しに集中してしまいがちになるのですが、気づいたのは終盤。「トンボ学生服」という看板がとんび学生服に見えてしまったのは俺だけじゃないはず。もちろん、くわいの産地は広島県が1位。細かく書くとうるさい!と言われそうです・・・ビー・クワイエット!
薬師丸ひろ子パートで涙が出尽くした感じもしたけど、もちろん泣けるシーンは終盤にもやってくる。笑って泣いて、感情を揺さぶられっぱなしの映画となりました。
安心して鑑賞・・☆
原作は未読だが、TVの連ドラで見ていて内容も了解済み。
尚且つ、この配役なので ハズレはなしと安心して鑑賞。
思った通りの面白さだった。
主役の二人はもちろん、安田顕が良い味を出しているし、薬師丸ひろ子も良い。
阿部寛の妻役の麻生久美子が儚げの女性を上手く演じる。
でも、何と言っても阿部寛の昭和っぽい無骨さが物語をひっぱっていく。
舞台となる商店街が大規模なロケが行られたとのことだが、人情溢れる
懐かしい街に仕上がっている。
その時代を知らない世代にも、夢のような世界。
終盤に描かれる北村匠海の就職試験の際に書かれた作文で父の嘘が
わかるシーンが到達点のよう・・・
年齢層に関係なく色々な人に楽しめる映画。
ただ、佐藤健と内野聖陽のドラマのコンビが印象的だったので、マイナス0.5かな・・
トンビに油揚げさらわれた?
直木賞作家・重松清のベストセラー小説の映画化。これまですでにNHKと
TBSで2回も異なるキャストでテレビドラマ化されている「とんび」。1962年生まれの重松清。作品はノスタルジックで、ジジ臭いのよ。広島県備後瀬戸内市が舞台。港湾の貨物運送会社で働く父親(ヤス)は喧嘩っぱやくて大酒のみだが、人情味があって人気者らしい。奥さんは頭がよくて優しくて美人。麻生久美子は姉さん女房?一粒種の息子(旭:アキラ)が学校に上がる前に美人の奥さんは、息子を庇って、荷物の下敷きになって死んでしまう。ひとり親になったヤスを飲み屋の女将さんや同級生のお寺のものぐさ坊主の照雲夫婦とオヤジの海雲和尚や会社の人たちがアキラの面倒を見てくれて、グレずに成長して、見事に東京の早稲田大学に合格し、出版社に勤務して、7歳年上のバツイチのシングルマザーと結婚して、直木賞を取るような売れっ子作家になりましたっていうお話。アキラは子宝にも恵まれまして、ヤスの葬式の遺影にする写真を息子夫婦家族が選んでいる場面で終わります。大きなサワラを右手に持った写真でした。
阿部寛さんは熱演でしたが、どうもテルマエ・ロマエの印象が強くて、喧嘩っ早く思慮の浅い性格の大酒のみの役にマッチせず。まぁ、真面目なんですな。ドカジャンも似合わない気が。
旭(アキラ)はこんな父親が苦手で、なるべく刺激しないようにして暮らしていますが、つい感情的になっては生意気だと頭ごなしに叱られて、姉御肌の薬師丸ひろ子おばさんや暇な安田顕と大島優子夫婦に助けを求めてしまいます。メイク薄めで、あまり強面ではない麿赤兒和尚のバックアップもナイスアシスト。海雲和尚が雪の降る海岸に連れ出して、訓戒のようなことを幼いアキラとヤスに言う場面や、ヤスがアキラの心に負担をかけまいとしてつき通した嘘を許してやってくれと、したためた手紙が素晴らしい。
照雲役を麿赤兒の実の息子の大森南朋にして、ヤスを安田顕にしても面白かったかも。安田顕と麻生久美子だと俳優亀岡拓次になっちゃうか?
いずれにしても、海雲、照雲親子に油揚げさらわれてしまったような感じでした。なまぐさ坊主のくせして、大島優子みたいな色っぽい奥さんと夫婦水入らずで、羨ましい限りでした。
浜田岳がトラックの相棒で出てきまして、ヤスがアキラの会社によれよれのドカジャンで行ってる間に東京湾で釣りしてたような。テレビドラマの釣りバカ社員浜崎伝助のかずさ屋のきたろうの娘役の娘(田辺桃子)が杏との間にできた長女役でした。
あと、息子の名前を小林旭のAKIRAにして、ダイナマイト150屯を歌わせるのはいかがなものかと。歌、旨くないし、似合ってないス。三橋美智也のとんびがくるりと輪を描いた~ ホーイのホイ(夕焼けとんび)の方が歌詞も映画の内容に合ってたんじゃない?
瀬々監督は商業映画監督になってから、いまいちキレがないっス。
誰かを思い出すあたたかい物語
不器用で、意地っ張りだが真っ直ぐで愛情深いヤスを
まわりの仲間たちは見放さない。
家族のように、自分のことのように。
ある意味
その人生をも共に背負っていくくらいの覚悟で向きあっている。
個人主義が普通な今となっては、消えつつある空気感の
濃すぎる程の関係性は
昭和をかけぬけ平成、令和という時の流れの中で散り散りになっていったようにおもう。
さらに現在は、世界に巻き起こった伝染病による距離感が物理的にも精神的にさらに広く深い川となりあちらこちらに溝を増やし続けているようでもある。
そんな折だからか…
昭和の瀬戸内海にある小さな町がこまやかに再現されてる景色に、人情味溢れる人々の表情やことばが暑苦しくもあり、あたたかくもあり。
スクリーンいっぱいに弾けまくりながらじゃんじゃん
こちらにぶつかってきて
反動で揺れる自分の心がぎゅっとつかまれていることに気づく。
そうやって泣いたりわらったりどきどきしたりの行き来をしながらひとに恵まれて生きるということのありがたみについて考えていた。
運や縁を自分の中であまりに簡単にしないこと。
それは純粋な思いやりと謙虚な誠実さでじぶんとまわりに対峙することかと。
そこで築かれた人間関係にはお金と名誉だけではない世界、ともすれば空虚になる時間に大いなる価値をつけることも示していたように思う。
波止場でどこかの親子をみつめるヤス、それを遠くでみているあきらのシーン。セリフはなくともふたりの互いに対する気持ちが充分にわかる眼差し。
力いっぱいに神輿をかつぐヤスと旭のシーン。ふたりを長く悩ませた親子の優しい嘘と葛藤の陰は掛け声と揺れる肩のうごきにあわせ、ほほえむ美佐子がいる空に消えていった気がする。
また父子のあいだをことあるごとにつないだ美佐子の振る舞い、海になれといった和尚のような存在、友人たちの愛ある小芝居やなじみの仲ならではの気の利かせかたなど、いつもそこにはあったのはかけがえのない人間愛だということ。
切なくあたたかな重松さんの世界、どっぷり堪能。
感化されたかな、幼い頃、まわりにいたおじさんおばさんや家族とのやりとりを思い出して頷いてます。
モデルコンビの親子
テレビドラマを見て号泣して、かなり久しぶりに映画でも見たくなり、鑑賞しました。
泣くのが恥ずかしかったので夜の公演にしたのですが、意外と女性が多いのに驚かされました。
「お前は海になれ」「お前は母親は居ないが、こんなに周りの人に愛されているんだ」
住職の言葉が一番心を撃ちます。
ただ1970年代生まれの私個人としては、内野聖陽さん/佐藤健さんのほうが、このストーリーにはしっくり来ました。
(1980年代以降に生まれた方には、いまのキャストのほうが良いのかもしれません。)
ドラマとの相違点は「神輿のシーンが多い」部分でした。
あとは「詰め込みすぎて、ストーリーが繋がりにくい部分」が多かったので、「ドラマを知らない人」には、少し疑問符が残るシーンがあったのかな?と思いました。
私は昭和生まれの父親で、息子は平成後期生まれ。
息子には、私よりも大きく強く逞しくなって欲しいと願うのは、贅沢なのかも。
でも「あんなバカ親」にはなりたい。
そんなことを帰宅する車の中で考えていました。
孫が二人も居るなんて、少し阿部ちゃんが羨ましかった。
ただ私世代にとって、阿部寛さんは「メンズノンノのモデル」なので、
「カッコ良さ」が染み出していました。
そういえば、北村匠さんって、俳優だと思っていたら、モデルでもあったのですね。
..ん?だから、女性が多かったのか。納得です。
典型的な重松清作品
2022年映画館鑑賞13作品目
4月10日(日)イオンシネマ石巻
1000円
原作未読
堤真一主演NHKのTVドラマ版未鑑賞
内野聖陽主演TBS日曜劇場版未鑑賞
原作は『疾走』『泣くな赤鬼』『ステップ』の重松清
監督は『フライング☆ラビッツ』『ヘヴンズ ストーリー』『64-ロクヨン- 前編/後編』『最低。』『友罪』『菊とギロチン』『楽園』『糸』『明日の食卓』『護られなかった者たちへ』の瀬々敬久
脚本は『私の奴隷になりなさい』『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが、』『あゝ、荒野 前篇・後編』『宮本から君へ』『MOTHER マザー』の港岳彦
舞台は広島県備後
昭和30年代から現代までの話
職場見学に訪れた際の事故で妻を亡くした男が周囲に助けられ息子を育て上げるヒューマンドラマ
父親になった男の生涯
ステップが父と娘ならこっちは父と息子
典型的な重松清作品
原作も多くの人に愛され何度も映像化される名作
運送会社に勤める喧嘩っ早く素直じゃない市川安男に阿部寛
安男の出来のいい息子で早稲田大学に合格する市川旭に北村匠海
幼い旭を庇う形で事故で亡くなる美佐子に麻生久美子
旭が勤める出版社の先輩でバツイチ子持ちで旭と再婚する由美に杏
寺の息子で安男の親友の照雲に安田顕
照雲の妻幸恵に大島優子
寺の坊主で照雲の父海雲に麿赤兒
安男の姉貴分で小料理屋を営むたえ子に薬師丸ひろ子
運送会社の課長萩本に尾美としのり
安男の子分的存在で同じ運送会社に勤める葛原に吉岡睦雄
安男と同じ運送会社に勤める年がかなり離れた後輩広沢に濱田岳
水産会社の社長尾藤に宇梶剛士
小料理屋の馴染み客トクさんに宇野祥平
元嫁ぎ先に置いてきたたえ子の娘泰子に木竜麻生
成長した旭由美夫妻の息子健介に井之脇海
成長した旭由美夫妻の娘美月に田辺桃子
安男の父の再婚相手の連れ子で入院中の父を安男に再会させる島野昭之に田中哲司
旭が勤める出版社の雑誌編集長に豊原功補
安男を不審者扱いにする出版社の真面目な警備員に嶋田久作
旭が取材に訪れた埼玉の木工会社の代表者村田に村上淳
海辺に旭まで連れ出し安男を励ます海雲の説法が泣ける
娘の再会に狼狽する薬師丸ひろ子とピンボケでもしっかり仕事する濱田岳の芝居が特に良かった
由美を連れて小料理屋に訪れた旭に一芝居を打ち怒鳴り散らす安田顕が良い
役所広司や吉田鋼太郎や堀内敬子とはタイプが違うが彼の大声もよく響く
好きだ
強いて上げるなら照雲の妻役はもっと年上のかたが演じた方が良かった気もしないではない
アイドル嫌いじゃないので大島優子が絶対にダメだというわけではないが
母と共に父の勤め先に訪れた息子がはしゃいでタオルを振り回し積んでいた荷物に引っかかり無理に引っ張り崩れてきた事故
積荷の安全管理が不十分だったことは確かに否めない
だが幼い子供とはいえバカ丸出しの巨人ファンじゃあるまいしなぜ突然タオルの振り回したのか理解に苦しむ
だからおじさんは子供は苦手だ
『ドライブ・マイ・カー』絡みで海外の評論家が言っていたが世界中の多くの映画ファンが暴力映画にうんざりしているという
彼の個人的感想だがそうかもしれない
こんな時代だからこそ心が癒される映画を多くの人が求めているのかもしれない
そういうこともあってかこういった作品にあまりケチはつけたくない
自分が損するし損してまで辛口批評する必要性をこれには感じない
実際に何が特に悪いというわけではない
幅広い世代が楽しめるPTAもニッコリ模範的な映画といえる
僕が観た映画館でもあちこちから鼻を啜る音が鳴り響いた
検温はセーフだから風邪でもないだろうし換気はバッチリだから花粉症でもなかろう
一般大衆的にいえば普通に泣ける映画なのだ
所謂お涙頂戴とか感動なんとかかもしれない
それでもやっぱりボロクソに叩くにはかなり無理がある名作
素直に涙を流せばいいじゃん
恥ずかしいことじゃない
ただ感動しすぎて我を忘れうっかり忘れ物をすることもあるかもしれないので席を立つ前に冷静になろう
NHKドラマ版や日曜劇場版が観たくなった
教訓があるとすれば両親にありがとうといえる大人でありたいと感じた
備後の洗礼
良かったですね。安男の反応をわかった上での行動が愛情の深さを表していました。みんなが旭を育ててくれた事が汲み取れ、母親を事故で亡くした分を取り戻してます。あれはあれで幸せな事ですね。
配役が素晴らしい不器用な父子の絆物語
予告編を観た時は、それ程期待していなかったが、感動的で示唆に富んだ見応え十分の作品だった。昭和の濃厚な人間関係を軸にしたベタな展開の父子の絆物語であり、ストーリーに新味はないが、何と言っても配役が素晴らしい。どの役柄も、適役の俳優を配しているので、作品に落ち着き、安定感があり、150分弱という滔々とした川の流れのような長尺の作品をじっくり味わって鑑賞できる。
本作の舞台は1960年代の瀬戸内海に面した備後市。主人公は、運送業者のヤス(阿部寛)。幼い頃、両親と離別した彼は、待望の長男(北村匠海)が誕生し、妻の美佐子(麻生久美子)と3人家族で貧しいながらも幸せに暮らしていた。しかし、妻が突然の事故で急死し、周りの仲間達に支えられながら、父親として懸命に子供を育てていくのだが・・・。
多士済々の俳優陣が適役を得て活き活きと演技している。特に、作品の中心である主人公の3人家族役、麻生久美子、阿部寛、北村匠海は、最適役であり得意な役柄での演技が光る。
出番は前半だけだが、妻・美佐子役の麻生久美子の存在感が際立っている。夫への愛、長男への愛、全てを優しさで包み込んでしまうような愛に溢れた演技、佇まいが作品の雰囲気を作っている。時代劇・散り椿で悲運の妻役を演じた時にも感じたが、この手の役柄は麻生久美子の独壇場である。
阿部寛は、武骨で不器用であるが、周囲の人々に愛される、放っておけない役柄を、らしい演技で熱演している。特に母親についての長男との確執、分かっていながら素直になれない父親の心情を台詞回しと体全体を使った演技で巧演している。
北村匠海は、自分の気持ちをうまく父親に伝えられない鬱屈した長男の心情を、目の表情と、ぶっきら棒な台詞回しで表現している。阿部寛と演技の相性が良く、本当の親子の様な雰囲気を作っている。
ベタなストーリーでも構わない。出演者が持ち味を活かした演技をすれば面白い作品はできると実感できる作品である。
優れた、作家、監督、俳優
原作は読んでいませんし、テレビドラマは見ていなかったので、全く初めて目にする作品でした。見終わった感想ですが、まずは原作者の力量が非常に高いのだろうと思いました。作品を読む(観る)者に対して、自分は親に対してやるべきことをしたのか、あるいは子に対して十分に愛情を注ぐことができたのだろうかと思わせる場面をたくさん盛り込んであって、心を揺さぶります。巧いです。さすがに流行作家だけのことはある。
次に監督の力量。私は、「糸」と「護られなかった者たちへ」を見せてもらっていたので、高く評価していました。評価を裏切らない出来映えでした。巧いです。
最後に俳優ですが、予算に余裕があるからでしょうが、脇役にも上手な俳優さんを使っていてスキが在りませんでした。例えば、田中哲司など。それぞれ巧いです。主演の阿部寛はその存在感で文句なし。最後の、海岸で息子家族を見つめる表情がかっこ良すぎました。
以上を総合して、全体として、よく出来上がっていると思いました。ただし、ちょっとひねくれた見方をすると、何もかも巧すぎて、罠にはまって騙されているのではないかという疑念も持ちます。私に限ったことですが、もう一度観たいかと言われると「?」がつくように思います。
ちょっと比較する対象が陳腐であるかもしれませんが、「カメラを止めるな」は最初は素晴らしく面白い映画だったが2回目に観たときは全く面白くなかったことに通じるものがあるのではないかと思っています。同じ監督の作品でも、「幸せの黄色いハンカチ」は素晴らしいが、「遙かなる山の呼び声」はよくできているが、あまり評価されなかったというようなことがあり、「巧い」だけではなく、それを凌駕する意図の深さというものがなければならないということでしょう。
振り返ると、「護られなかった者たちへ」には、とんでもない筋があったものの、監督自身の熱い思いがあったように感じます。
親一人、子一人 今は言いませんねぇ
テレビドラマで 内野聖陽と佐藤健の『とんび』を見ていました。
父親の 阿部寛。 不器用な 飲んだくれの父親を 演じていても 何だか、かっこよすぎて
男手一つで 子供を育てる悲哀さ というものが どうも 私には ピッタリこない。
しかしながら 昔は 子供を 地域の人達で育てていく て感じでしたよね。
人の手も 触ると すぐ消毒する 今のご時世、とても考えられない時代でした。
薬師丸ひろこ のお店に 生き別れの娘が 会いに来たとき 実母である 薬師丸ひろこの
厳しいながらも 愛情溢れる言葉には 自然と いつまのにか涙が、こぼれてきました。
昔懐かしい 時代を 振り返るには 良い映画かもしれません。
不器用な愛情
今や古いと言われるかもしれないけど、昭和の不器用だけど愛情たっぷりな父親像。
僕はやっさんのように愛情たっぷりで子育て出来なかった。
山あり谷あり、映画のようにいつか子供達がこんな自分でも父親として、孫を連れて会いに来てくれる日が来ることを願う。
人は優しさを取り戻すことができる
阿部寛の演じる市川安男は、暴れん坊の大男だが普段は真面目でよく働く。キレやすいから要注意だが、そこが面白くてからかう仲間もいる。何度も騒動になるが、安男が人を怪我させたりしないことは、みんなわかっている。
瀬々監督と阿部寛は前作の「護られなかった者たちへ」に続くコンビで、相性がとてもいいようだ。無理のない演出で自然な演技ができる。そのおかげだろうか、男の優しさや誠実さが、無口でぶっきらぼうな態度の中に滲み出る。そこにじんわりとした感動がある。
俳優陣は概ね好演で、照雲さんを演じた安田顕が特によかった。安男があまり歳を取らないのに対して、照雲さんは徐々に老けていく。見た目もそうだが、歳を取るにつれて人柄が丸くなっていくのは、演出というよりも安田顕の演技力だろう。
ハイライトは息子の入社試験の作文を読む場面だ。二十歳の誕生日に和尚の手紙を読み、父の本当の優しさに触れたことで、旭は人間的にひと回り成長する。二十歳の誕生祝にこれほど素晴らしい手紙はない。旭は安男だけの子供ではない。照雲さんの言う通り、街のみんなの子供なのだ。たしかに戦後の昭和はそういう時代だった。
それがいい時代だったのかどうかはわからない。善意もあったが、欲望や差別が剥き出しだった時代でもある。それに対して、今は欲望や差別を隠蔽する時代だ。そして匿名の悪意が猖獗を極めている。男の優しさなど、どこかに消えてしまった。
しかし人は優しさを取り戻すことができる。別れが照れくさくて便所にこもっていた安男も、これが旭との今生の別れになるかもしれないことに気づく。そして追いかけて手を振る。どうか達者でいてくれ、息子よ。阿部寛の渾身の演技に泣かされる。素晴らしい作品だ。
不器用男の愛する息子との人生
昭和37年、瀬戸内海に面した広島県備後市(架空)で、運送の仕事をしているヤスは愛妻の出産により息子のアキラが誕生した。ところが、妻が幼いアキラを連れてヤスの職場に来てた時、荷崩れによる事故で妻が亡くなってしまった。それから男手一つで子育てとなったが、周りの仲間たちに支えられながら、息子を愛し育てた。そしてある日、母の死の真相を知りたがるアキラに、ヤスは「父さんを助けようとして死んだ」と嘘をついた。アキラは父と衝突するたび「父さんが死ねば良かった」というようになり、父子の関係がギクシャクしてしまった。さてどうなる、という話。
主演、阿部寛の不器用な生き方での親子の絆を描いていて、感動した。
感動して、不覚にも涙が出てしまった。ありきたりのストーリーといえばそうなのかもしれないが、主演の阿部寛と北村匠海が素晴らしかった。他の、安田顕、薬師丸ひろ子、杏、麻生久美子、麿赤兒、大島優子、濱田岳など共演者達も良かった。
岡山でロケしたらしいが、昭和の広島を再現した風景も美しく、マツダのオート三輪の動いてる姿など見応えあった。広島弁もみんな違和感なくて良かった。
強いて揚げれば、野球少年役だった北村匠海の坊主頭はカツラみえみえだったし、北村匠海が阿部寛と神輿を担ぐシーンで身長差から肩から浮いてるのに手を上から持ってた事、肩で支えられない時は両手で下から支えないと。それと阿部寛が亡くなった時には北村匠海の娘は30歳くらいのはずだが、若すぎてそんな年齢にみえなかった。これらは違和感あったが、ま、その程度。
良い作品でした。
じゃけん
元のドラマ版は未視聴です。
『糸』が2020年ワースト5に入るくらい自分とミスマッチで、瀬々敬久監督のその他の作品もハマらずじまいの作品が多く、かなり不安の中鑑賞しました。
全体通して良い話だったなーと思ったのですが、どうしても端折っているなと思う場面が多々見られ、その繋ぎ方が上手ではなかったですし、撮影にとにかく違和感を感じた作品でした。
昭和の親父だなと思うくらい昔気質で、とにかくキレやすいダメ親父というのを強調して描かれますが、ここは阿部寛さんの演技力も相まって豪快でした。浴場で風呂に潜った瞬間に「テルマエ・ロマエ」かな?と思ってしまったのでフフっとなりました。阿部さん、北村さん、杏さん、薬師丸さん、安田顕さん、大島さん、と役者陣に不足なしと言い切って良いくらいの演技合戦は最高でしたし、濱田岳さんのほんわかしたキャラクターはとても好きでした。
原作からのエピソードをだいぶ抜粋していると思っていますが、暁の幼少期、中学生、高校生、上京後、妻との出会い、父親の死去、と描かれますが、高校生のフェーズがそこそこ長めで、上京後のエピソードがかなり薄くなっており、そのため結婚の挨拶で地元に訪れるシーンはなんだか冗長に感じてしまいました。ウルッときそうなシーンはありましたが、どうしても無理のある展開にスッと引いてしまいました。
重大な欠点として登場人物を一貫して同じ役者に任せているというのもあっておそらく昭和37年の多分30代くらいの阿部寛さんは完全に今の阿部寛さんですし、北村匠海さんは中学生時は完全にヅラですし、親になった50代なんて髪型と服装をそれっぽくしただけのいつもの北村さんですし、その息子・娘達は確実に20代〜30代のはずなのにすごい若いですし、とここ何とかならんかったかな…メイクとかもう少し頑張れたのにな…と思ってしまいました。
あと撮影にとにかく違和感がありました。人物を撮るカットも何か合成したかのようなブレがありますし、ラストのドローンでの引きの映像なんてグラグラしててとても見づらいものになっていました。慣れないことはしないで良いのに…。
やはり瀬々監督の作るドラマに自分は合わないんだなと再確認。映画って観るまで分からないですね。
鑑賞日 4/10
鑑賞時間 12:15〜14:45
座席 D-7
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