劇場公開日 2022年4月8日

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「優れた、作家、監督、俳優」とんび ハルヒマンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0優れた、作家、監督、俳優

2022年4月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作は読んでいませんし、テレビドラマは見ていなかったので、全く初めて目にする作品でした。見終わった感想ですが、まずは原作者の力量が非常に高いのだろうと思いました。作品を読む(観る)者に対して、自分は親に対してやるべきことをしたのか、あるいは子に対して十分に愛情を注ぐことができたのだろうかと思わせる場面をたくさん盛り込んであって、心を揺さぶります。巧いです。さすがに流行作家だけのことはある。
次に監督の力量。私は、「糸」と「護られなかった者たちへ」を見せてもらっていたので、高く評価していました。評価を裏切らない出来映えでした。巧いです。
最後に俳優ですが、予算に余裕があるからでしょうが、脇役にも上手な俳優さんを使っていてスキが在りませんでした。例えば、田中哲司など。それぞれ巧いです。主演の阿部寛はその存在感で文句なし。最後の、海岸で息子家族を見つめる表情がかっこ良すぎました。
以上を総合して、全体として、よく出来上がっていると思いました。ただし、ちょっとひねくれた見方をすると、何もかも巧すぎて、罠にはまって騙されているのではないかという疑念も持ちます。私に限ったことですが、もう一度観たいかと言われると「?」がつくように思います。
ちょっと比較する対象が陳腐であるかもしれませんが、「カメラを止めるな」は最初は素晴らしく面白い映画だったが2回目に観たときは全く面白くなかったことに通じるものがあるのではないかと思っています。同じ監督の作品でも、「幸せの黄色いハンカチ」は素晴らしいが、「遙かなる山の呼び声」はよくできているが、あまり評価されなかったというようなことがあり、「巧い」だけではなく、それを凌駕する意図の深さというものがなければならないということでしょう。
振り返ると、「護られなかった者たちへ」には、とんでもない筋があったものの、監督自身の熱い思いがあったように感じます。

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ハルヒマン