「笑いと涙が交差する、人情パンチが強めの良作」とんび 山田晶子さんの映画レビュー(感想・評価)
笑いと涙が交差する、人情パンチが強めの良作
重松清のベストセラー小説を、阿部寛(ヤス役)と北村匠海(ヤスの息子アキラ役)の共演で実写映画化。原作やTVドラマは昭和37年から平成の入口で終わるが、映画では令和までオリジナルで描かれている。
本作は、「64 ロクヨン」「護られなかった者たちへ」の瀬々敬久監督がメガホンをとり、監督の指名で港岳彦が脚本を務めている。〝今観るべき映画”にするのが脚本開発における最大の課題。
私は本作を見て、その課題はクリアできていると感じた。特に後半に出てくるアキラの作文がカギとなり、親子の心の距離をぐっと近づけ、普遍的な人間模様を描き出すことに成功していた。
実親の愛を知らない不器用なヤスが様々な人に助けられながらアキラを育てている姿は、破天荒でありながらも息子への愛情を感じずにはいられない。というより父子の歪な愛の形がどこに到着するのかも最後までわからない。
ヤスの生活の一部となっている商店街には古き良き日本の活気と人情があり、いつまでも見ていたい風景だった。
約1ヶ月間の撮影では岡山の街を封鎖し、地元のエキストラ総勢500人という大規模なロケを実施。風景の小道具などに美術スタッフがこだわり、雰囲気はしっかりと描かれていた。
この風情も見どころだが、重松清らしい人情模様が映画全体に表れているので、子供から大人まで楽しめる作品に仕上がっている。
不器用な大人の優しい「嘘」にも注目してほしい、今の時代に見たい作品だった。
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