「いい映画〈風〉」とんび サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
いい映画〈風〉
ありがたいことに、またもや試写会に行くことが出来ました。2週間に1回ペースだなんて幸せです。
ということで今回は、4月8日公開の阿部寛主演「とんび」。重松清原作ということで結構期待していた本作ですが、やはり蓋を開けても安定感のある話で後味がよろしかったです。
阿部寛、北村匠海、薬師丸ひろ子、安田顕、杏などの豪華キャストが繰り広げる人情もの。この時点である程度の面白さは保証されているわけです。
阿部寛は個人的には今までで1番好きな役柄だったかも。昭和の親父、みんなの親父、不器用だけど優しい親父。ヤスを演じれるのはこの人しかいない。男臭さと渋さがたまりませんでした。細菌は硬い役柄が多いですが、こういう役の方が断然好き。ほんとに良かったです。
話と雰囲気としては舞台が昭和ということもあってか、「ALWAYS 三丁目の夕日シリーズ」の酷似している気がする。薬師丸ひろ子出てるし。あの作品と比べてしまうと確実に負けてしまうのだけど、それでも美術にはこだわりを感じられたしお見事な雰囲気作りで、昭和の懐かしさで心が浄化されました。
その三丁目の夕日と劣ってしまう点としては、登場人物が多いのだけどそれを上手くいかせきれてないというところ。前半部分はなかなかの出来だったものの、途中からヤスと息子・アキラの話だけになってしまったのが勿体ない。これだけ人物がいるからそれぞれの話がもっとあっても良かっただろうし、そもそも話以前にキャラクターに関する説明が無さすぎたなと。特に濱田岳なんて、いい味出しているキャラなんだけど急に参戦してなんの人か全く分からない。シリーズを前提に話を作るか、ドラマにした方が良かった。どちらにせよ、この内容を2時間に収めることはかなり厳しいんじゃないかな。
描き不足なのは周りの人物だけでなく、メインストーリーであるヤスとアキラについても。あるようでない2人の話。この映画で最も肝心なのところなのに、親子の会話だとか出来事だとかがあまりにも無い。ただ、迷惑な親父と反抗期の息子の対立という印象しか残らない。原作はもっと描けているはずだよ、重松清だから。140分もあるのに、だらだらしている間が長すぎた。
主題歌はゆずだったし、後味はかなりいい。面白かったな〜と思って劇場を出たけど、よく良く考えれば雰囲気だけは一丁前な描き不足だらけの映画でした。素材はいいのに料理が下手くそ。まさにこの作品のことを言うんじゃないでしょうか。期待していただけに、少し残念。面白くはあるんですけどね、、、あ、糸の監督が作ったんだなって感じがしますよ。