「21世紀の若者こそ、この神のメッセージが必要なはずです 決してマニアだけの音楽映画や、老人の回顧趣味の映像ではないのです」アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
21世紀の若者こそ、この神のメッセージが必要なはずです 決してマニアだけの音楽映画や、老人の回顧趣味の映像ではないのです
アレサ・フランクリン
米国での彼女の存在は、日本の美空ひばりに匹敵するような泣く子も黙る大歌手です
ことに黒人にとっては歌手の女王様です
レディソウルとは彼女だけの称号です
2018年8月16日に他界、76歳でした
もう3年も前の事になりました
彼女は1942年生まれ
最初のレコードは1956年なので、14歳のこと
初アルバムは19歳の1961年のことです
その彼女の2 枚組のライブアルバム「AMAZING GRACE」
1972年6月1日リリース
レーベルはもちろんアトランチック
300万枚以上売れた空前絶後のゴスペルアルバム
というかソウルミュージックファンにとっても、絶対持ってないとアカン!必聴の名盤とされています
この伝説のライブアルバムの録音をしていた現場を、なんと映画に撮っていたのです
それが本作です
アレサ・フランクリン30歳
もうすでに超有名な大歌手になっています
収録は1972年1月13、14日の木曜、金曜の2夜
場所はロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会
どんなに大きな教会かと思い描いていたのですが、本作の映像でみると、小学校の体育館程度ぐらいです
というか新宿の末廣亭の客席を思わせる大きさです
外からみると田舎の小さな映画館みたいな風情です
そこはどこにあるかというと、ロスの南側
ビバリーヒルズから30キロほど下がったところ
サウス・ブロードウェイ沿いにあります
1965年の黒人大暴動で有名なワッツ地区から西にほんの5キロほどのところ
映画「ワッツスタックス」の会場のロサンゼルス・メモリアル・コロシアムは、その教会の前の道を都心方向の北に7キロほど戻ったところです
そちらのイベントの「ワッツタックス/スタックス・コンサート」は、1972年8月20日のことでした
つまりわずか7ヶ月の間にこの2つのソウルミュージックにとり大きな意味を持つことが、ロスのこの狭い一角で起こっていたと言うことです
収録会場にローリングストーンズのミック・ジャガーと、つい先日の2021年8月24日に他界したチャーリー・ワッツの顔も見えます
昔からレコードでこの感動の歌唱を幾度も繰り返し聞き込んでいる人にとっては、その現場がこうであったのかという感動が深くあると思います
ならば、アレサ・フランクリンを初めて知るという人、21世紀の若者にとってはどんな意味があるのでしょうか?
もちろん、意味も意義もあります
むしろ21世紀に初めて彼女の歌唱を、それも本作の映像と共に受け止めることができるのが、羨ましいぐらいです
なぜ49年もお蔵入りしていたのでしょうか?
もちろん、カチンコを忘れていたとかというトラブルかも知れません
しかし、既に何作も長編映画を撮っているシドニー・ポラック監督がそんなミスするでしょうか?
本作の映像に映り込んでいるカメラなどのスタッフの面構え、動き、実際の映像は素人ではないとすぐわかります
そんな初歩的なミスをするものなのでしょうか?
いずれにしても何らかのトラブルで49年も封印されてきて、私たちはレコードの音でのみ、この素晴らしい感動の共有を許されてきたのです
その封印が解けたのです
確かにデジタル技術が進歩したからかも知れません
しかしBLM 運動が尖鋭化し、人種の分断がまた大きなっ問題となったとき、この映像の封印が解ける
そこに自分は、人智の及ばない神のご意志を感じざるを得ないのです
タイトルになったアメイジンググレイスは、本作の中盤、1夜目のクライマックスとして歌われます
その時、私たちは映像の中のクワイヤのメンバーや観客と同様に感極まってしまうでしょう
この歌は日本でも2003年にあるドラマの主題歌となって知られるようにもなりました
もちろんアレサフランクリンの歌唱は別次元のもので比べることもできません
それでも検索すればすぐ日本語訳詞に触れることができるようになったのはそのおかげでしょう
ぜひ訳詞にも触れて下さい
21世紀の米国社会にも、黒人社会にも、私たち日本人にとっても、今必要な大いなるメッセージに聞こえると思います
本作と同じように、半世紀もの時を超えてハーレム・カルチャラル・フェスティバルの映像が「サマー・オブ・ソウル」として映画となり公開されています
なんという符合なのでしょうか!
これこそ神のご意志なのです
この2つの作品をみて何かを感じとりなさいという神のメッセージなのです
21世紀の若者こそ、この神のメッセージが必要なはずです
決してマニアだけの音楽映画や、老人の回顧趣味の映像ではないのです