「Never! Never! Never!」アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
Never! Never! Never!
ゴスペルについて、自分は何も知らず、アレサ・フランクリンという歌手も初めて知った。
ただ、(奇しくもこの録音の直後に亡くなった)マヘリア・ジャクソンと比較すると、アレサの“声”には、正直なところ、あまり魅力を感じなかった。
ふくよかな響きのマヘリアの声に対し、録音の質もあるかもしれないが、アレサの声質はアタックが強いものの、やや平板に聞こえる。
試しにググると、まず「ソウルの女王」と出て、「ゴスペル歌手」ではない。素人目には、なるほどと思う。
ステージ・パパ(?)の父親は、「娘は一度も教会から離れたことはない」と語っているが・・・。
この映画の魅力は、「よりライブ感の強いライブ」を感じられるところに尽きると思う。映像の画質の悪さなど、小さな話だ。
もともと音源だけの名盤アルバムだったようだが、映像を見ると、どう展開するか読めない“生モノ”を相手にして、突き進んでいった様子が分かる。
普通のコンサートではないし、かといって、普通の教会での催しでもないのだ。
観客には参加を呼び掛けるし、アクシデントも起きそうになる。
5台のカメラによって、会場全体の状況が分かる。
アレサ、クリーブランド、バックコーラス、観客、そして、狭苦しいスペースに閉じ込められて演奏しているミュージシャンたち。
アレサは大汗かいているし、急に演奏を止めて録り直しを要求したりする。
コーラスは時に起立したり、手を叩いたり、涙ぐんだりしている。
(ちなみにチャーリー・ワッツ(当時31歳)は、なぜか滅茶苦茶若く見えた。)
表題曲「アメイジング・グレイス」は、かなり工夫を凝らしたのか、「こんな曲だったっけ?」と思うほどクセのある演奏で、それほど良くは思えなかった。
しかしクリーブランドは、涙でピアノ演奏を止めてしまうほど、感動している。クリーブランド自身のヒストリーや信仰が、心に溢れてきたのだろうか?
第2夜の最後に、会場がカルト的な雰囲気に包まれるさまも映し出されているが、それがコンサートではない、本来の教会の姿なのかもしれない。
ネットでCD「Amazing Grace: The Complete Recordings」を見ると、第1夜と第2夜で曲がかなり重複しているので、この映画はアルバムの2/3以上の曲をカバーしているようである。
(ちなみに「ホーリー・ホーリー」は、「Wholy Holy」で「Holy Holy」ではないようだ。)
演奏は、一流のミュージシャンを雇ったようだが、さすがというか、ライブの流れに上手く合わせている。
ピアノよりは、オルガンの音が目立ち、演奏が途切れそうになるところでも、しっかりと音をつないでいたと思う。