劇場公開日 2021年9月23日

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「汝の敵を愛せよ。」マイ・ダディ 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0汝の敵を愛せよ。

2021年10月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「牧師さん、じゃあ、神様信じてんですか?」と、若者が御堂(ムロ)に問う。
否定されても構わないんで言いますけど、クリスチャンに「神様信じてますか?」と問えば、当然「信じてます」と返ってくるが、それは神様を信じているんじゃなくて、"何があっても神様を信じている自分"を、信じているんだと思う。心の重心として、ブレない柱として。その信念があるからこそ、困難に立ち向かう強さが生まれるのだと思う。
何も信じるものがない者は楽だ。だけど、弱いよ。だからその逆に、御堂は、予想もできない強烈な事実と直面しても、強かった。宗教者でありながら悩み苦しむ、人間としてあるべき率直な葛藤は、人間らしかった。それを普段くだけてるムロツヨシがシリアスに演じることで、真実味が加味された。そこも狙いなんだろうけども。例えば佐藤二朗がNHKドラマでかつて引きこもりだった中年の役を演じた時も、いつものイメージからのギャップが激しすぎてグイっと引き込まれた。この映画も、同様。だけど、じゃあ普通にセオリー通り、すぐ泣く役者がおいおい泣いて、娘よ、俺が助けてやるぜ!とか叫んでも、熱いよ、いいから落ち着けよ、ってこっちが冷めてしまうわけだから、これはこれでキャスティングの賜物か。

栗太郎