「毎作、ふやけた精神に喝を入れてくれる監督」クライ・マッチョ ぽぽさんの映画レビュー(感想・評価)
毎作、ふやけた精神に喝を入れてくれる監督
映画には過小評価されている名作が数多あるが、これもその一つだろう。(そもそもイーストウッド監督自身が、超超超レジェンドなのにぞんざいに扱われているのだが…。)
イーストウッド監督は時機に応じて現代社会に必要なメッセージを送ってくれるので、それを注意深く受け取らなくてはならない。
今作のテーマは“マッチョ”。トランプの台頭と共に過熱するアメリカの男性至上主義、マスキュリズム…への監督自身のアンサーである。そしてこれまたトランプによって関係性が悪化しているメキシコを舞台に描かれている。
最近は日本でも「男らしく」「男なら」という言い回しはネガティブな意味として使用されることが避けられているが、「イーストウッド流男らしさ」は惚れぼれとしてしまう。逗留していた町でマルタというメキシコ人女性に気に入られるのも無理はない!だって女・子どもに威張らないし、「カウボーイは自分で料理する」と台所に立ってディナーを作ってくれるし、動物にも優しいし、ちゃちゃっと自動車を修理するし…。真の“マッチョ”とは、宗教や資本主義が生み出した男性像ではなく、本来はこれが自然な姿ではないだろうか。
礼拝堂のシーンも重要。分断するアメリカの問題と真正面からぶつかる気骨を感じる。監督は神についてどう考えるか…?
ポリコレが迷走した時にイーストウッド作品を観れば、心が正しい位置に戻る気がする。
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「“マッチョ”は過大評価されてる」「雄鶏にはいいが」「称賛しすぎだ」「人は自分をマッチョに見せたがる」「力を誇示するために」「それが何になる」「雄牛に踏み潰されたり」「馬に15メートルも吹っ飛ばされたり」「くだらんよ」「バカしかやらない職業だ」「まるで…」「すべての答えを知ってる気になるが」「老いと共に無知な自分を知る」「気づいた時は手遅れなんだ」