劇場公開日 2022年1月14日

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「イーストウッドの楽園」クライ・マッチョ 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0イーストウッドの楽園

2024年9月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2021年。クリント・イーストウッド監督。2年前に見た作品をブルーレイで再見。アメリカ南部でかつてロデオで名をはせた男は今や孤独な老後を送っている。解雇を言い渡された元雇い主から、メキシコから息子を連れだしてほしいと依頼された男は、いやいやながらその依頼を遂行しようとするが、、、という話。
依頼遂行の過程での邪魔とその克服、やがて判明する依頼のもう一つの意味、それとはまったく関係なく依頼遂行の過程で寄り道として生まれる人間関係、次世代への継承。すばらしい。悪人も100%悪人ではなく、正直者も100%嘘をつかないわけではない。白黒入り交じった人間(特に主人公と元雇い主)を光と陰で描く。カウボーイハットは深い影を作り出すための小道具なんだなあ。「楽園」として描かれているメキシコの老婦とその孫たちの家庭には男がいない。それがなんともイーストウッドらしい。老婦が営む料理屋に夕日が差すなかで二人は静かに踊る。静かに舞い上がったほこりと煙が光りのなかをたゆたう。エンド。これが楽園でなくてなんなのか。
なによりも(本当になによりも)90歳を超えた監督自身が出演していることがすばらしい。劇中のどこかでなにかに挫折して怪我を負う(そこから再度立ち上がる)という過去作が多いので、まさか激しいアクションがあるのかと思ってはらはらするが、それはなかった(ファイティングポーズをとる場面はある)。その代わり、かつて「マディソン郡の橋」で60歳を超えてはにかむ姿が絵になるということを証明してみせた監督だけに、90歳を超えてなおはにかむ姿が生き生きと描かれる。これがすごい。生きる映画史!

文字読み