劇場公開日 2022年1月14日

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「エンドロールのあとから・・・」クライ・マッチョ コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5エンドロールのあとから・・・

2022年1月16日
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鑑賞方法:映画館

1 かつてのロデオスタ--が依頼により、一人の少年を母親から連れ出し父親に送り届けるまでのロ−ドム−ビ−。

2 カントリー音楽が流れるなか、主人公が登場するファ−ストシ−ンから依頼を受け旅立つまでは簡潔で良かった。
 しかし、少年を連れ去り逃避行するメインスト−リ−は全然食い足りなかった。
豪勢な暮らしをする毒親の母と家を出て闘鶏する少年の人物造形が雑であること、主人公と住所不定の少年とが街なかで遭遇する場面や少年を連れて町を出る場面には何ら緊迫感がない。逃避行にあっても母親側の追っては実力不足。父親が息子に会いたいとする真意を少年が知ったあとの描写は中途半端。

3 その代わり、サイドストーリーとして、逃避行の最中、車が故障し、止むなく滞在した田舎町での生活描写は、しみじみして良かった。主人公と少年は町の食堂の未亡人家族と仲良くなり、主人公はかつての経歴を活かし住民の中に入っていき、少年は人との触れ合いの中で安らぎを得る。ラストシーンと照らし合わせれば、この町での描写がメインなのかもしれない。エンドロールのあともこの町で残された人生を謳歌する主人公の姿が頭に浮かぶ。そして少年もいずれ父から離れてこの町に戻ってくるのではないだろうか。そんな想像をしてしまう。

4 イ−ストウッドの監督作品としては、出来栄えは良いとは思わない。グラントリノの厳しさはなく、運び屋の緊迫感もなく、枯れてきた感じがする。俳優としては佇まいに味わい深いものはあるが、動けなくなってきている。老境をあるがままの自然体で演じきった。

コショワイ