劇場公開日 2022年6月17日

「読んで、育んで、成長して」メタモルフォーゼの縁側 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0読んで、育んで、成長して

2023年1月2日
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鑑賞方法:DVD/BD

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萌える

新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
新年最初のレビューは、正月見るにぴったりなほっこりとしたこちらの作品。

何かがきっかけで友達になる瞬間がある。
この二人はちと風変わり。
歳の差約60歳。
きっかけとなったのは…

夫の三回忌の法事の後、ふらりと書店に立ち寄った75歳の雪。
お料理の本を買う筈が、彼女が買ったのは…
一冊の漫画。何て綺麗…と表紙の絵柄に惹かれて買ったのだけれど、後で読んでみてびっくり!
男同士の恋愛を描いた内容。BL(ボーイズラブ)漫画と言うらしい。
驚いて腰を抜かすどころか、続きが気になってすっかりハマっちゃって。

対応した書店のバイト、17歳のうららはきょとん…。まあ、そうなるわな。
続き求めてまた来たけど、在庫切れ。
そんな雪にうららは…。
実はうららはBL漫画好き。
これがきっかけで続きやオススメのBL漫画を…。

58歳の歳の差で、交流のきっかけがBL漫画。
何とも特異だが、ハートフルなヒューマン・ドラマになっている。

75歳になって知ったBL漫画の世界。今、流行ってるんだってねぇ。
何よりこの歳になっても夢中になれるものがある事が素敵。
キャピキャピ、ワクワクしながらBL漫画を読む姿は、少女が恋愛漫画を読むのと変わらない。
“BLの女”ならぬ宮本信子がチャーミング。

何処にでも居る普通の女子高生のうらら。
BL漫画好きは周囲に隠している。家でもこっそり読み、分かち合える友達も居ない。
なので最初は戸惑ったけど、漫画について話合える相手が出来てウキウキ。
読書好きで優等生の芦田愛菜。演じた役とはちょっと違うけど、そこはさすがの巧演。
青春体現の全力疾走などの爽やかさのみならず、「ずるい」と言う台詞やBL漫画に夢中になるクラスの女子を見る何とも言えぬ表情などの屈折した面も巧い。

『阪急電車 片道15分の奇跡』以来11年ぶりの共演となった宮本信子と芦田愛菜。
以前はアンサンブル共演程度だったが、今回はがっつりW主演。
変わらぬ名女優の宮本信子もだが、すっかり麗しく成長した芦田愛菜に目を見張る。宮本信子曰く、「以前は愛菜ちゃんだったけど、今は芦田愛菜さん」。納得!
老女と少女…と言うより、女子二人、共通の好きなものを楽しく温かく語らう姿がほっこり。普通にガールズ・トーク。
話合ってると、歳の差とか時間が経つのも忘れるほど夢中に。
私ゃ周囲に語り合えるほどの映画好きの友達が居ないので、何かいいなぁ…。

BL漫画も単なる小道具ではなく、大事なキーにもなっている。
実際のBL漫画家が書き、劇中に於いても彼らの恋の行方が展開。
それを見守り、応援する雪とうらら。
知られると恥ずかしいとか偏見の目もあったりする分野だけど、一途にピュアに好きを謳う。
漫画の中とそれが好きな二人がリンクもしている。

“メタモルフォーゼ”とは変化などの意味がある。
うららの成長物語にもなっている。
おそらく学校の成績は優秀な方じゃない。
進路にも悩み。
好きなものはBL漫画だけ。一体私は何がしたいんだろう…?
ある時雪から、「漫画を描きたいと思った事ないの?」。
あるにはあるけど、私の漫画なんか…。
背中を押され、一つの漫画を描く。
BLの世界だが、恋愛に軸を置いたものではなく、出会いや友情を描いたもの。ファンタスティックで心温まる。
うらら自身の出会いや交流や心を反映したような。
その漫画がある人物に読まれ、元気を貰えたと好評。
これほど嬉しい事はない。
一冊の漫画が出会いや友情の始まりとなり、誰かの心に届く。
この一期一会に。

BL漫画を機に、出会いと築いた友情、自身の成長はうららの大切なものとなった。
あの語り合った縁側で、温かな陽光と良き変化を。

近大
CBさんのコメント
2023年1月2日

へえ、「阪急電車」で共演していたんですね。

ああ、いいレビューですね。
一期一会ですね。

CB