「演出にうるさい人には微妙だと思う、原作ありきの商業映画って感じ」メタモルフォーゼの縁側 廣田ゆりのさんの映画レビュー(感想・評価)
演出にうるさい人には微妙だと思う、原作ありきの商業映画って感じ
歳の離れた友情のきっかけがBLというコンセプトは面白い。映画は微妙だったが、原作には興味を持てた。(原作は未読)漫画原作のものは映画化すればとりあえず売れはするし、原作に忠実ならファンには喜ばれる。でも私のような映画演出にこだわりや意味を求めてしまう人は、この映画に芸術としての完成度は求めちゃいけないな〜と思った。
下記ネタバレありの感想。
・いまいちなところ
コメディならもう少しコメディに振って欲しかった。途中の雪さんが腰悪かったりホームに入れるか?の話題などが不安を煽る演出に見えて、コメディなのかガチなのか、中途半端に感じた。
芦田愛菜さんの泣きの演技が微妙だった。
演出のせいかもしれないが、ぎゅっと目をつぶってうわーんみたいなのが子役時代の印象が強くて若干引いてしまった。私が演出するなら子役のイメージを拭いたいので、目はつぶらせずに静かに泣かせたいなあと思った。
雪さん素敵だったが、髪の毛がカツラ感凄いのが気になった。
マンガ家がとってつけたような印象でマンガ家っぽくないのも気になる。モデル感強い。役者が悪いのではなく、キャスティングの問題と思う。
演出がクサい。間延びしていて気になる。
わかりやすい演出をするドラマの制作やスタッフだからだとは思うが、個人的に好みじゃなかった。具体的には、序盤の漫画を見せるシーンは2度もいらない。漫画を見せるシーンが全体的に長い。芦田愛菜さんのセリフに「あのッ」が多すぎて気にかかる。セリフも全体的にありきたりな感じ。漫画を見せるところの音楽やテーマとなる曲が変なコメディっぽくてダサい。そんなん説明しなくてもわかるって!てことをセリフでわざわざ言ったりベタな表現は見てて全く面白くない。こんな表現ばかりだから日本人は芸術に対する目を養えないのではと不安になる。もっと高度な表現に挑戦して欲しい。
・良かったところ
娘とおばあちゃんと芦田愛菜さんが一緒にいるところ。昔はみんな10代だったと懐かしんでいてほっこりできた。
漫画の感想を書いても作者に送れなかった雪さんが今回は手紙を渡せたり、うららさんからマンガ家へ作品が渡ったことで、作り手に受け手の想いが伝わったところ。受け手の感想や意見はすごく励みになるし、お互いに相乗効果がある関係が素敵で好き。
うららさんの葛藤と挑戦は10代のリアルを感じて等身大の青春で良い。雪さんや幼馴染がいたからこそうららさんは次もがんばるのではないか。サポートしてくれる人って大事。若い頃の挑戦って素敵だなと思えた。
エンディングの曲が素晴らしかった。特に芦田愛菜さんの歌に魅力を感じた。個性と透明感があってもっと聴いてみたいと思わせる声だった。歌手とはではいかなくても、何かの形で歌声をもっと聴きたい。
・まとめ
総じて演出と脚本にがっかりなところが多く、序盤の10分でもう観るのが辛く感じてしまったが、エンディングの芦田さんの歌声がとても素敵なので良かった。役者さんはみんな悪くなかったが、演出や脚本がどうなの?って印象。無駄が多く、もっと省いたら完結で面白くなったと思う。きっと誰かよくわからない人があーだこーだ言ってつまんなくなったんじゃないかと予想。もしそうならそういうの本当に辞めて欲しい。作品にとってベストな演出や脚本にして、スポンサーやら誰かは余計な口出ししないで欲しい。売れたいのはわかるが、もっと作品に対して敬意を持って接してくれる人が増えてくれると良い。(まああくまでも想像ですが)