「誰かの好きが誰かを元気にしている!」メタモルフォーゼの縁側 @花/王様のねこさんの映画レビュー(感想・評価)
誰かの好きが誰かを元気にしている!
鑑賞後は縁側を爽やかな風が吹き抜けて行くような、心地の良い充実感に包まれる優しい作品。
BLと女子高生と老婦人と言う異色の組み合わせではありますが、和やかな雰囲気の中それぞれがそれぞれの好きを持ち寄って縁側でお茶をしながら語らうというシュチュエーションが最高にしっくりくる。
見ていて、こちらも応援したくなる。
情熱や好きを表現していく、好きを発信していく楽しさを一緒に体験していくようなストーリー運びが良かったです。
主演の芦田愛菜さんは言わずもがな。
おそらく原作をご存知なのでは?
等身大の高校生役がピタリとハマっていました。
中でも、自分が趣味として嗜んできた、人目に晒されないように楽しんできたBLを幼馴染の美人の彼女が仲間と教室で楽しんで読み回しているシーンが印象的でした。
それを見て「ズルい」と発するうらら。
美貌も教養も友達も恋人も風になびくサラサラの髪も持っている同級生。
BLと言う自分の趣味の場を荒らされたような、そこの場所まで侵食してこなくたって良いじゃない。と怒りにも似た同担拒否ならぬ、同ジャンル拒否をしたくなる気持ちに激しく共感してしまいました。
また、自分の「好き」を素直に「好きだ!」と発信せず少しずつ距離を縮めて同志を得るうららと雪さんの関係も良いなぁと感じました。
好きな作品を語れる相手がいるって最高に楽しいですよね。
レビューを描くのだって、この作品を観た、観たい誰かと繋がりたい!と言う思いから文字を書いているので、好きを共有できる嬉しさは分かります。
劇中に登場するBL漫画の絵柄が綺麗で、話も巻数を重ねる毎に変化しているので、うららや雪さんと一緒に次の展開は?!とワクワクしながら観ていました。
良い作品に出会い、刺激を受けて自分も作り手になってみたいと言う情熱やイベント参加までの流れも良かったです。
コミケは混むからなぁ。
コミティアくらいが丁度良くない?と思っていたらコミティアに申し込んでいて、だよなぁ!と思わずうんうんと頷いてしまいました。
いや、実際に物を書いて売るってとてもバイタリティのいることなので、うららの行動力がすごいなぁと感心してしまいました。
サークル参加でオフセット印刷で値段が100円って申込料の回収も出来ないから、次回参加が危ぶまれるなとか考えてしまうのは野暮ですよね。
ただ、全国から本当に自分の作品を届けたいクリエイターが集結する場なので、当日空席にするくらいなら申し込むなや!落ちたサークルもいたかもしれないんだぞ?!と謎の怒りを覚えてしまいました。
とは言ってもフィクションなので、あんなコミケ会場で幼馴染に会えたらそれはもう奇跡だよ。
幼馴染の紡はイケメンなのに距離感バグってるのかってくらいうららと距離が近い。
この2人は幼馴染の距離感のままお互いの好きやピンチを助け合える良いコンビだなと思いました。
劇中、走る駆けるうらら。
逃げ足、スキップ、上機嫌、などなど走る表現にこれほどバリエーションを求められることも少ないだろうな。
走る演技って後ろ姿や走り方で感情を伝えられるって、やっぱり芦田愛菜ちゃんは天才だなと感じました。
主役だけど、他の役者さんと喧嘩せず。
でしゃばりすぎず、かと言って存在感のある演技がストーリーを邪魔しない。これを計算ではできまい。
BLに初めて触れる雪役の宮本信子さんも、偏見よりも好奇心が勝る、純粋に自分の心が躍る楽しさをはつらつと演じていらっしゃって、とても好きでした。
男同士?気持ち悪い、悪趣味だって時代は終わったんだなぁ。
私はBLって女性が性対象にされないジャンルなのが観ていて安心できるポイントなんだなと感じています。
自分が性対象になる恋愛ものではなく、あくまで外野の立ち位置から頑張れ!いけいけ!と応援できるジャンルなのかなと。
女は生まれてから少し経つとすぐに自身が性対象に見られることを意識せざるを得ないので、自分が搾取されない恋愛劇を安心して楽しむことができるのかなと感じました。