劇場公開日 2022年12月3日

「SLAM DUNKという物語が抱え持った歪さ」THE FIRST SLAM DUNK くりあさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0SLAM DUNKという物語が抱え持った歪さ

2023年4月10日
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漫画『SLAM DUNK』がどんな話だったかというと、「青春の向け先のない若者桜木花道が、バスケットボールと出会い、良き先輩、良きライバル、良き指導者、良き仲間を得て、世代最強と対等に戦えるようになる成長物語」であった。
本映画は、「幼少期から人生の中心にバスケットボールがあり、それこそが生き甲斐で夢であった宮城リョータの半生の物語」に再構築された。

SLAM DUNKとは、こんなに歪な物語だったのか。

桜木花道が主人公であったなら、ど素人が公式戦で活躍しても、都合よく見せ場が回ってきても、バスケ一筋の相手に勝ったとしても、主人公補正で済んだ。
だってこれは、元ヤンキーのサクセスストーリーなんだから。
挫折と失敗だけで勝利も成功もなければ物語が成立しないじゃないか。

対して本作。
バスケ少年宮城リョータの物語として見たら、何だあのご都合主義の塊の赤毛は。
主人公リョータのための都合の良いお膳立てをするための装置でしかないではないか。

赤毛ヤンキーが片手間に始めたバスケ物語であったが故に許されていたことが、ガチのバスケットボールプレイヤーの物語になったことでリアリティラインが引き上げられ違和感あるものになってしまった。

結果、才能があり努力を惜しまず環境も整った絶対王者であるはずの山王は都合よく素人赤毛の奇行に翻弄され、赤毛の当面の目標でありライバルという役割が主な個性であった流川の存在が消えてしまった。

SLAM DANKはリアルなバスケットボール漫画ではなかった。漫画の構成力と描写力による説得力でねじ伏せられていただけで、桜木花道が主人公な時点で、リアルな漫画ではなかったんだ。

そう、思い知らされてしまった。

星3。「SLAM DUNK外伝 宮城リョータの場合」としてなら星4。

くりぽん