劇場公開日 2022年12月3日

「見たかったものがここに」THE FIRST SLAM DUNK ジャンピエールさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0見たかったものがここに

2023年1月1日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

まず人物の動きの描写が、実際の人間の動きのように極めてリアルに描かれている事に驚いた。
フリースローを打つ前に少しだけ顔の汗を拭う仕草、相手ゴール前に迫ったボールホルダーがドリブルしながらパスの出し先を探る微細な目線の動き、シュートモーションでボールリリースの瞬間の微妙な指先の動き、など挙げればきりがないくらい、ベンチで応援してる人とか、フォーカスが当たってないキャラクターの動きさえも一人一人全く違っていて、それぞれ個性の宿ったちゃんとした人間の動きをしている。
モーションキャプチャーを使って実際の人間の動きをトレースしているので、当たり前といえば当たり前なんだけど、よく見るアニメの3D描写のような絵の不自然さは感じず、あくまで井上先生の絵そのまま。
そんな調子で赤木、三井、宮城、流川、桜木、小暮が躍動するもんだから、ミッチーのシュートモーションってこうなんだとか、リョータのドリブルってこんなムーブなのかとか、いちいち興奮せざるを得ない羽目になる。
(当然この動きも井上先生のディレクションによるものだろうから、まさに彼らの動きそのものということ!)
バスケは詳しい訳じゃないけど、素人目には、まさに現実のバスケの試合を、現実じゃ不可能なアングルで見てる気分だった。

今作は湘北のメインキャラ5人のうち、ある一人のキャラクターの過去の出来事と、それを経た今、彼がどんな思いでプレーしているのかが描かれる。
(伏せた表現しなくてもおわかりだとは思うが)
ーー漫画やTVアニメで出てきたキャラクターの他にも、実はスタンドからコート上でプレーする彼を見つめる存在がいたーー
彼のバックストーリーを知った上で、今もう一度原作を読み返したくてたまらない。

話題になった声優さんについてだけど、あくまで個人的な印象で、桜木役の木村昴さんの演技だけは、少し違和感を感じざるを得なかった。
木村さんのイケボを活かすような、イケメンキャラっぽさに比重を置いた感じの演技をされてたので、なんというか、桜木の豪快でお調子者なキャラクターに、常に8割9割程度のパワーボリュームで声を当ててるようなイメージ。
ほんの若干、口調や声のトーンが桜木のキャラクターと噛み合ってない印象がずっと続く、僅かな気持ち悪さ。
「イケメンなジャイアンじゃん」とか「一郎ボイスじゃね」とかいった声が聞こえて来そうな、ともすれば微妙に下手だとも評価されてしまいそうな感じ。
今作は基本的にギャグの要素が少なく、他の四人の声優さんも、どっちかというとアニメ調というよりも自然な感じで演じられてたので、アニメの草尾毅さんの時ほど大げさじゃなくて全然いいんだけど、もう少しパンチというか熱さがあればしっくりきたかもしれない。

かつてスラムダンクを読んで涙した方、熱くなった事のある方、影響を受けてバスケを始めた方なんかは特にご覧になって損はないと思う。
というかもう見てほしいと言ってしまいたい。

ジャンピエール