ファーザーのレビュー・感想・評価
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AnthonyによるAnthonyの演技は100点
認知症における『徘徊』は無目的にさまよっている訳ではなく、認知機能が低下するので迷ってしまうのだそうです。
カメラは第三者の視点ですが、見ているもの・聞いているものは、Anthonyのそれであることが、徐々にわかってきます。いわゆる、信頼できない語り手と言う奴です。これをサスペンスよりにすると、シャッターアイランドになりますが、サスペンスでもコメディでもなく作ってあるので途中まで良くわかりません。それがこの作品の味といえばそうなのですが、誰もが見て面白い訳では無いでしょう。半眠でみた、ジェントルメンと同じくらい、注意してみないとわからなくなるかもしれません。
アンソニーホプキンスの演技はさすが、オスカーをとるくらいです。仕事のうえ認知症の方には日頃接していますが、瞼をしばしばしながら喋るところは全くそのままです。役作りはしないほうが良いと言っているので、既に認知症になっているかの様です。
細かい疑問が2つ。生ゴミと割れたマグカップを同じゴミ箱に捨ててました。ロンドンのゴミの分別はどうなっているのでしょう?Anthonyのヘッドフォンのコードが右から出ています。おそらく、左右のチャンネルが逆だと思います。エンジニアで几帳面そうなのでそこは間違えないでしょう。おそらく、映像としてあの向きになったんじゃ無いかな。
この作品を見て、観客に何を考えるべきかははっきり語られません。ケン・ローチの映画を見たことがあると、同じイギリスなのにお金がある人はとりあえず人に任せられて良いよね、とも思ってしまいます。監督が語りたいことを語っていたい気がしたので、マイナス1にしました。
認知症の症状、苦しみを疑似体験出来る映画
「ビューティフル・マインド」では統合失調症の幻覚、苦しみを映像化して視覚的に統合失調症の症状を観客に見せていたが、本作は記憶がなくなる。記憶がすり替わっていく。などの認知症の症状、苦しみを視覚的に表現している作品。「ビューティフル・マインド」が統合失調症を疑似体験出来る作品だとすると、「ファーザー」は認知症を疑似体験出来る作品。アンソニー・ホプキンス含めて俳優の迫真の演技も相まって認知症の苦しみや怖さが伝わってきてホラー、サスペンス的な要素もある。本人も自覚がなくて悪気もない。周りの人間も必死にサポートしている。いわば「加害者がいない」のが逃げ場がなくて苦しい…高齢化社会が進んでいる実際の日本でもこうゆう事があり得るんだろうし、介護する。介護される当事者両方にもなる可能性は大だし他人事ではないのかも…
もし自分が認知症になったら見える世界
登場人物が、同じ名前で顔が変わったり
自分の家のはずなのに誰か普通に住んでるし
この前聞いた話がもう変わってたり。。
これ、普通にこの状況を味わうのが
本当に認知症の人の感じる世界だとしたら辛すぎる。。
そして周りの人、家族、子ども、その伴侶、ヘルパーさんとかも皆が辛い気持ちになってしまう。
やはり認知がかなり進んでいてでも体力はわりとある高齢者に対して、娘とかの家族だけで対応するには限界がある、と思い知らされました。
別に娘とかに迷惑かけようだなんてこれっぽっちも思ってないのに、結果的に、本人は普通に生活してるだけのはずがいつの間にか迷惑をかけている。。
自分が認知症になった時に、認知症である自覚は無いんでしょうけど、なるべく迷惑かけずにいたい、と思いました。
ある意味ではホラー
怖かった〜
世に認知症の老人を描いた映画はたくさんあったけれども、本作は認知症になった老人からの視点がメインなんですね。
だから記憶の混同、混濁、事実誤認が数分おきで起きてしまう。
全員が嘘つきなんじゃないか?真実っていったい何なんだ?と、主人公のアンソニーの立場になっても、そして映画を観てる人間にとっても混乱を招きます。
しかもシーンがメインである主観から、娘や介助士側や、第三者のいわゆる「神の視点」の客観にところどころ変わることがある。
これによって、常に「何が正しいかわからない」という状況に落とされました。
この「足場のなさ」が、一種のホラーみたいに感じました。
しかも、認知症老人にとっては「私の言うことは絶対なんだ、正しいんだ」という激しい思い込みがあり、それを否定されると攻撃的になる、実に厄介な状態。
で、映画を観てる最中は、アンソニー・ホプキンスの怪演に夢中になっているのですけれども……
観終わると違う恐怖が起きました。
ひょっとして、歩行者のいる歩道に車で突っ込み、アクセル踏みっぱなしで事故を起こしたのに「ブレーキを踏んだのにかかわらず加速した」と主張する老人とかって。
彼らにとっては、その主張は「正しい」んだ。
主観ではそれしか「真実」じゃないんだ。
そういう脳の構造なんだ。
うわぁぁぁぁぁ、怖えぇ。
枯葉
見当識障害の恐怖を半径5メートルで描く傑作ホラー
時空が歪んだ世界に放り込まれる戦慄と混乱
抵抗をやめ幼な子の様に悲嘆する爺を優しく包むラストカットは秀逸
美談風のビジュアルに誘われ観に来た年配の映画ファン(平日昼ル・シネマ)の心情に思いを馳せ涙
みんな年を取る
認知症患者の立場からみた映像
ロンドンで独り暮らしのアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は認知症により記憶が薄れ始め、娘のアンが手配した介護人を泥棒扱いし拒否してしまう。そんな時、アンから新しい恋人とパリで暮らすと言われたはずなのに、アンソニーの自宅には、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が居て、この家は自分とアンの家だと言う。また、アンソニーのもう1人の娘ルーシーの姿がみえない。何が現実で何が幻想なのかわからなくなっていくという話。
認知症の進むアンソニーの立場から映像化されてるのでストーリーがわかりにくく、自分が認知症になったような気がする作品。
あまり無い作り方なので、変わった感じを味わえて興味深かった。
ホプキンスの熱演が光った。
介護人ローラ役のイモージェン・プーツが可愛かった。
【ネタバレ少し】認知症は人それぞれ、千差万別でしょ。
83歳のアンソニー・ホプキンスが81歳の痴呆、、イヤ認知症を演ずる。
娘が入れ替わり、その、恋人旦那も入れ替わり、今一室にいる経緯もおぼつかない。架空の介護士は出るわ
自分を施設に入れる悪巧みだとの猜疑心にとらわれ、病気か事故で過去に死んだであろう 描写の次女の存在を求める有様。
ただ最後は幼児に戻って施設で大団円って・・・
アンソニー・ホプキンスは高齢なのに普通に演じていて大したものだ。敢闘賞。
ただアカデミー主演男優賞はどうかなぁ?
【羊たちの沈黙】は私の青春ど真ん中ですが、どうにも変に複雑なストーリーと当時の老齢に差し掛かるアンソニー・ホプキンスが好きになれなくて、いまだに全て鑑賞したこと無いしなぁ。
アカデミー脚色賞も取ったらしいけど、どこらへんだろね、ポイントは?
私もいい年だし、人生いろいろ認知症もいろいろ、認知症にならないまでもアンソニー・ホプキンス自身が父を語るように闘病で死を間近にした人は、みんな心も記憶も迷う傾向にあるし、逆に体が健康で認知症が極度に進む人もいるよ。
むしろこの映画の主人公、基本排泄食事は何の不自由もないようだし、その瞬間話す言葉は明確で、その時々は認識してる模様。おそらくベテランの介護福祉士が鑑賞したら、グッドエンドで夢物語だろね。人によるだろけど、徘徊したり、排泄もままならなかったり、自分のことさえ忘れてしまう人も多いだろうから。
コレは観賞用映画、実際はもっと修羅場あるよね。
認知症本人の視点で描写した点は斬新。それは認める。
さすがのアンソニーホプキンス
葉っぱが全て散ってしまった、といったような台詞が終わりの方で出てくるが、ラストシーンは青々とした美しい木々と青空で終わる、このコントラストが美しい。
四季のある日本では、季節や植物の芽吹きや枯れることを人の若さや老いに例えるけれど、記憶を亡くし命を亡くして、土に還ると木々の栄養にもなるという自然の摂理を思う。
何が何だか分からなくなる、認知症という悲しみは、死の恐怖を除くために起こるのか、果たして何なのか。
幸い私は両親義両親ともにまだ元気だが、先々こんなことが起きたらと、想像するのを止められなかった。
変わるがわる訪れる少しずつ違うシチュエーションに、果たしてどれが真実か等と考えて観てしまっていたが、その全ては施設で抱いた幻想であったというせつなさ。
あんなに嫌がっていた介護人をママと言って泣くその姿に、老いの悲しみを感じてしまった。
介護の現場などで働く人や、誰かの介護をしたことのある人からしたら、甘くて滑稽かもしれないが、とても、せつなくて、悲しくて、でも温かい、そんな作品でした。
すっごい映画でした。納得の主演男優賞
日本でも認知症の父親とその家族を描く人間ドラマは制作されている。
例えば中野量太監督の「長いお別れ」は山崎努さんが演じる認知症の父親を見守っていく家族の姿を描いてた。
介護する家族側の視点からみた映画はみたことがあるけれど、本人側の視点から描いた映画をみるのは私は初めてで引き込まれた。
映画が始まるといきなり味わうモヤモヤした違和感。
アンソニーと娘アンのチグハグな会話やいきなり現れる見知らぬ男。
誰が誰だか、ここは何処だか、何が何だか分からない。
父親の視点から描くことで認知症を観客に擬似体験さていく脚本。
繰り返されるのは…時計はどこか、ここはどこか、キミは誰か、パリでは英語を喋らない、記憶と時間の混迷を表すのだろう。
現実と幻想の境界が曖昧になっていくアンソニーは過去へ幼い頃へと向かっている気がした。
認知症のゴールは退行現象なのだろう。
描かない彼のラストは母親のお腹に帰るということなのかもしれない。
…そう言いながら他人事じゃない。
自分がアンの立場やアンソニーの立場に立つ日が来るかもしれない未来を考えながら劇場を出た。
女王陛下じゃないオリビア・コールマンの好演。
そして名優アンソニー・ホプキンスが名優たる理由がよくわかった映画。
どうしても羊たちのイメージが強かったのだけれど本作の演技も拍手もの。
納得のアカデミー賞主演男優賞!
パリでは英語が通じない
父親アンソニーと娘アンの二人を軸に、時間と場所が複雑に交錯しながら展開するストーリー。
アンソニーの視点で展開される物語は次から次へと奇妙なことが起き、住んでいるフラットがアンソニーのものだったりアンのものだったり、ポールがビルだったり、アンは結婚したり離婚したりパリに行ったり、観客の鼻面を捕まえてぐるんぐるん振り回すような、目眩を感じる展開が続く。
父アンソニーが恐らくは認知症であろうことは、誰もが早いうちに理解するだろう。だがこの、繋がりそうで繋がらない不連続な物語の、どこからどこまでが現実なのか、なにか仕掛けがあるのではないか、と、ついあれこれと想像を巡らせてしまうに違いない。
この映画は「騙されまい」という視線で見ている観客ほど騙されてしまう構造になっている。なんのことはない、唐突な幕切れの瞬間になってようやく、認知が歪んでいる目線で見えている世界が、時系列もバラバラに思い出されているだけなのだ、ということに気付かされるのだ。
同じフラットで起きていると見えていた出来事がそれぞれバラバラの場所で起きていたり、同じ人物が別の人に見えたりあるいは別の人物が同じ人に見えるのも、奇妙な形で繋がっているように見えた出来事がそれぞれ別のことだったりするのも、全て認知の歪みと思い出される時系列の順番が狂うことによってそう見えているだけなのだ。
そしてそれに気付かされるのと同時に、認知が歪むと世界がこのように奇妙に見えるのかという事実に、その経験のないわたしは旋律すら覚える。実際にこのような形で世界が見えるのかは知らないが、そうだとしたら、老いというのはなんと恐ろしいものであろうか。
しかしながら、物語の構造に驚かされるのとは別に、アンソニー・ホプキンスの老いた父親の演技にも驚かされる。
もちろんあれは演技に違いないのだろうが、身近に見てきた自分の祖父や祖母の様子をそのまま想起させるような見事な老いの演技に、主演男優賞も当然かと唸らざるを得ない。
そしてこれだけは覚えておこう、娘がパリに行く聞くたびに繰り返される「英語も通じない」というアンソニーの言葉を。
認知症とその周囲を取り巻く人々のリアルさを描く
本作に“希望”というものはない。絶望に近く、より現実的なリアリティさが胸にずっしりと重くのしかかる。
誰もが平等にやってくるものが「老い」
遅かれ早かれ必ず訪れるのが「死」である。
本作の面白いところが、鑑賞者も一緒に現実と幻想を行き来する。認知症を患った主人公アンソニーの目線、頭の混乱を巧みに描いているので、見ている側も何が現実で幻想かがわからなくなり戸惑うかもしれない。
老い、認知症、介護、介護業界を巡るあれこれも考えさせられる。
「人生100年時代」と言われるようになってからもう随分と経つが、介護の問題については日本だけでなく世界的に問題となっているようだ。果たして100年も生きたいか?と訊かれると私はキッパリとノーと答える。
なるべく若くて元気なうちに(欲を言うならある程度孫のお世話をして)、ぽっくりと逝くのが理想。
歳をとると子どもに戻るんだよね。最後のアンソニーのシーンには思わずもらい泣き。アンソニーの名演を超えた名演には圧倒される。
全人類必見の一作
この映画を観たうえで、どうすれば最優秀主演男優賞がチャドウィック・ボーズマン一択と勘違いできるのだろうか。
今年のアカデミー賞授賞式における演出の無能っぷりを再確認させられた。
とはいえ、妥当と言える選出が行なわれたことは喜ばしいことである。
さらに言えば、最優秀作品賞も本作で良かったのではないかと思えるほどの傑作であった。
本作は認知症の症状が主観視点で描かれる。
緻密かつ巧みな演出により、観ている側は文字通り認知症を擬似体験させられ、その恐怖や孤独感を生々しく実感することになる。
深い絶望の果てに誰もが思うのは「この先どう生きればいいのか?」
そこについてもこの映画はひとつの答えを美しく映し出して終わる。
重々しいテーマであるものの、単なるサスペンスにとどまらず、「未知なる世界の体験」という意味で優れたエンタメ作品として仕上がっており全く飽きることは無い。
この体験は、「今直面している人」はもちろん、いずれ当事者となるかもしれないすべての人々にとって、多少なりとも「理解」と「救い」になるはずである。
何が何だか分からない!
腕時計は何処にある❔
これは
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