「終焉に向かう世界」ブックセラーズ Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
終焉に向かう世界
本を“モノ”としてコレクションする欲望は、自分には理解できない。
もちろん、豪華な装飾写本までいかなくとも、見事な“挿絵”があれば別だ。それは、文と絵が一体となった“美術品”だからだ。
しかし、「初版本」など集めて何になるのだろうか?
この映画は、題名通り、純粋なコレクターの話ではなく、目利きディーラーの話に終始する。扱うジャンルは、人それぞれだ。
彼らもまた、本という“モノ”を愛するコレクターの側面をもっているようだ。
だから、彼らの“独特の感性”に触れることはできるが、本作を見ても、純粋なコレクターの“ディープで狂った世界”を、あまり垣間見ることはできない。
そこがつまらない。
ただ、ディーラーの話なので、その方面での面白い情報を、いろいろ聞くことができる。
・絵画のオークションとの違い。本は絵画とちがって、他人にみせびらかす“戦利品”になりにくいこと。印刷物なので、よほどの「稀覯本」でない限り、一品モノでもない。
・最近は「初版本」などより、手稿や手紙、本への書き込みなど、“資料”としての価値が注目されていること。ダ・ヴィンチの手稿などはその典型だろう。
・ブックカバー(ジャケット)が、アートとして扱われ始めていること。
あるディーラーがぼやいていたが、基本的に市場は狭い。
インターネットの登場で、中古市場も様変わりしている。
読書を愛する人も減っている。中身を知らずに、本という“モノ”を愛することもできまい。
映画のラストで語られる通り、多様化しないと、終焉に向かう世界のような気がする。
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