劇場公開日 2021年4月23日

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「個性豊かな古書店主とコレクター達、古書に魅せられた人々の金言がパンパンに詰まったとにかく楽しい99分」ブックセラーズ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0個性豊かな古書店主とコレクター達、古書に魅せられた人々の金言がパンパンに詰まったとにかく楽しい99分

2021年4月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

世界最大規模の書籍市、NYブックフェアに集う個性豊かな古書店主とコレクター達が語る古書に魅せられた人々の実態を綴ったドキュメンタリー。書籍に限らず何かに取り憑かれた人達というのは魅力的ですが、マンモスの標本付探検記等の希少な大型本を取り扱うソフトボール狂のデイヴ、父から引き継いだアーゴシー書店を切り盛りするジュディス、ナオミ、アディナの三姉妹、米国版お宝鑑定団的な番組で全国的な知名度を持つ若手ブックセラーのレベッカ・・・本作に登場する人達もとにかく皆チャーミング。皆それぞれの理由から本の魅力に魅せられて古書の世界に飛び込んできた人達。ビル・ゲイツが史上最高額で競り落としたダヴィンチのレスター手稿から二束三文の奇書まで取り扱われる本も様々、それらを求める人もまたそれぞれに歴史を持っている。書籍の中にも外にも無限の世界が広がっていることが本に憑かれた人ならではの圧倒的な蘊蓄とユーモアで嬉々として語られるのを眺めているのは至福のひとときで、何度も温かい涙を流してしまいました。

一方で急速に変化する世界の中で本が果たす役割も様変わり、丁寧に装丁された紙の書籍に代わって電子書籍が台頭、古書の売買もネットで簡単に出来る時代。そんな時代の変化に対する考え方も人それぞれで、この世の終わりが来るかのように悲観する古参の古書店主もいれば、多様性が尊ばれる世界に変容しようとしている今だからこそ古書の存在に新しい意義が与えられ様々なアイデアが湧いてくるのだと快活に笑ってみせる若手もいる。形あるものであるが故に失われるものもあるけれども、それでも彼らのような変わり者が元気に跋扈している限り古書店の灯は消えないという希望が、彼らが一堂に介したダイニングテーブルの上を飛び交う陽気な会話の中にはっきりと見えます。

とにかく楽しい99分ですが、そこに辛口のユーモアをドンとのっけてくるのが本作のガイド役を務める作家のフラン・レボウィッツ。彼女が要所要所に放り込むコメントが痛烈で場内に観客の笑い声が何度も響きました。そしてエンドクレジット後にも彼女がとっておきのネタをブチまけるので最後まで席を立ってはいけません。

そして本作に纏う軽快で優雅な雰囲気をさりげなく盛り上げるのがジャズのサウンド。その繊細な響きは映画館の音響だからこそガッツリ堪能できるものですので、是非とも映画館で鑑賞して下さい。特に読書家の方には猛烈にオススメします。

よね