「根っからのお人善し物語」漁港の肉子ちゃん odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
根っからのお人善し物語
訳ありの母子が流れ着いた東北の漁港の町で出会う善意の人々との交流を描いたハートフルコメディ。最後まで観れば主人公が肉子さんであることが納得できるが肉子さんが中心だと生々しい話になってしまうだろうし、アニメ化でジュブナイル層も意識したのか小学生の娘のキクリンの視点で描かれていますね。
男運の無いシングルマザーの苦労の子育て物語にスポットを当てているのも珍しい、原作の西加奈子さんは大阪育ちらしいのでこの手の話やモデルには事欠かなかったのかも。男への恨み言では無く依存心すら超越した逞しい女性像に同性として共感したのでしょう。
幸不幸の人生観は人それぞれ、食べて寝て働いて便をして、普通が一番という根っから明るい肉子さんだがどうみてもおいしいものが一番の喜びに思えますね。変ったキャラですが日々を描くだけでは漫画で終わってしまうところ、終盤の暴露によって物語の風合いが一変します、全てがそのための伏線だったとは恐れ入りました。
馬頭観音のところで津波の話が出てきたのでもしやとハラハラしながら観ていましたが、原作は震災前に書き終えていたらしいのでほっとしました。
映画はさておき何故、さんまさんが本作の映画化を推したのか妄想が止まりません、脳天気で終始明るい肉子さんのキャラに自身を投影したのでしょうか、「生きてるだけで丸儲け」というさんまさんの座右の銘にも通じるところが伺えます。大竹さんにオファーしたのもダメキャラを見直して欲しいという未練と言うかトラウマ解消願望が突き動かしたのかも・・・。