「アメリカへ移住した韓国人のルーツを情感豊かに!」ミナリ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカへ移住した韓国人のルーツを情感豊かに!
2020年(アメリカ)監督:リー・アイザック・チョン。
良い映画でした。各国の賞を総なめにしました。
題名のミナリは韓国の香味野菜・セリのことです。
セリは2度目の旬が最も美味しいことから、子供世代のために、親世代が懸命に生きる・・・との意味が込められています。
すごく辛い苦労話を聞かされる覚悟で観ましたが、
全然そんな心配は入りませんでした。
1980年代に韓国からの移民者の家族。まだ30代の父親のジェイコブ、母親のモニカ、姉娘のアン、そして弟のデビッドの4人家族。
今のアメリカへの移民の事情は詳しくありませんが、1980年代には移民に優しかってようですね。
大きな農作地を買うだけの融資が受けられて、耕作機械も種も肥料も買えます。
トレーラーハウスとお母さんのモニカは不満ですが、私の目から見ると立派です。
ベッドもひとり1台。部屋数も多い。調理器具も揃っています。洋服だって「着の身着のまま」じゃない。
着替えが豊富。食事にも困らない。
第一にお父さんは農園主で小作ではありません。
畑だって、石ころだらけの土地を騙されたり、しません。
土地はそれなりに肥沃です。作物が日照りや大雨で全滅したりもしません。
これは苦労と言えますかね?
お父さんはとても野心家です。
「韓国野菜の生産で、絶対に成功して金持ちになるんだ!!」
側で見ているお母さんは、悲観的な性格です。
心臓の弱いデビッドを連れて行く病院が、1時間もかかる・・・と、気を揉みます。
パール・バックの『大地』とかスタインベックの『怒りの葡萄』などを思い浮かべていた私は拍子抜けでした。
こんなもの、苦労のうちに入らない・・・って思っちゃいました。
口喧嘩ばかりのお父さんとお母さんは、打開策として韓国からスンジャおばあちゃんを呼び寄せます。
まぁまぁ、このスンジヤおばあちゃんの「ぶっ飛んでること!!」
スンジャおばあちゃんの登場で、映画は劇的に面白くなります。
花札が趣味で、孫のデビッドへのお土産は花札です。
そしてテレビでプロレスを観るのが大好き。
真面目でも模範的でも無い年寄りです。
はじめデビッドはおばあちゃんを嫌います。
またこのデビッドも笑わしてくれます。
小太りでチビで、デビッドってミドルネームなのかな?
(ジェイコブもモニカもアンもデビッドも、韓国人の平べったい顔には不似合いです、正直言って!!)
デビッドは、おねしょなど、エピソードに欠きません。
この映画を観ていると、韓国人を迎えるアメリカ人も、同輩の韓国人も、子供たちの学校友達も父兄も、悪い人は一人も出て来ません。
と言っても、ラストには衝撃的な展開がありますが・・・。
お終い行くにつれて盛り上がる映画で、スンジャおばあちゃんの役割が、
この映画を劇的なストーリーへ導きます。
こんなにアメリカ人が良い人ばかりで、間違い無いのかしら?
昔はアメリカは移民を優しく受け入れていたの?
原作者のノスタルジーなのかしら?
(移民を優しく受け容れるような世界情勢はもう過去のことでしょうか)
過去鑑賞(2021年/07/05)
うーん、実際カナダで生活していると、今でも時々アジア人差別を感じることもあるから、当時はもっと大変だったろうと思いますよ。
あんまりアメリカ人を悪人にしなかったから、ハリウッド大作扱いされた気がしました。