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お隣さんはヒトラー? : 特集

2024年7月22日更新

【設定バツグン系映画、見つけた】第2次世界大戦から
15年。ホロコースト生存者の隣家に、ヒトラー激似の
人が引っ越してきた!?生きてた?いやそんなバカな…
でも似すぎ…ザワつく展開→心に染みる強烈な結末へ!

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長年、映画を見続けていると、「設定だけでもう激しく見たい!」と、嗅覚が働く作品に出合うことがある。今回、熱烈におすすめしたい「設定バツグン系映画」を見つけてきたので、その珠玉の設定をプレゼンさせてほしい。

舞台は、第2次世界大戦から15年。ホロコーストを生き延びた男の隣家に、あろうことか、死んだはずのアドルフ・ヒトラー激似の男が引っ越してくるのだ。もうこれだけで、「どうなっちゃうの?」とザワザワ&冷や汗が止まらない。

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この記事では、そんな斬新設定で始まる映画「お隣さんはヒトラー?」(7月26日公開)の魅力をたっぷりとご紹介。驚きとともに見始めたら、途中で大爆笑の時間をはさみ、最後にはちょっと泣いていたので、この唯一無二の“映画の旅”を、読者の皆さんにも体感してほしい!


【予告編】アドルフ・ヒトラーは生存していた!?

【強烈に見たくなる設定】決して出会ってはいけない…
ヒトラー激似の人&ホロコースト生存者が隣人に!?

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見る前から心がざわつくのは、史上最も出会ってはいけない、禁断の組み合わせ。

主人公は、ホロコーストで家族を失い、ただひとり生き延びたポーランド系ユダヤ人のポルスキー。故国を離れて南米コロンビアへ渡り、町外れの一軒家で暮らしていたが、1960年のある日を境に、彼の穏やかな生活は一変する。

そう、自分から全てを奪った、あの憎きヒトラーにめちゃくちゃ似たドイツ人の男ヘルツォークが、隣に引っ越してくるのだ。


●隣人はヒトラーなのか? それとも… ヒトラー確定フラグが立ちまくり、最後まで揺れる展開に目が離せない
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「お隣さんはヒトラーなのか?」という疑念で、夜も眠れなくなるポルスキー。彼はその真偽を確かめようと、行動を開始する。ここからはポルスキーの作戦とともに、彼のなかで疑惑が確信に変わっていく、ヘルツォークの「ヒトラー度」を追いかけていこう。

・【ヒトラー疑惑5%】南米の、人里離れた一軒家で平和に暮らす“ホロコーストを生き延びたユダヤ人” 隣に、高齢のドイツ人が引っ越してきた!?

・【ヒトラー疑惑20%】ひょんなことから挨拶に行くと…青い瞳が、ヒトラーそっくり あまりにも似ていたので思わず二度見

・【ヒトラー疑惑30%】怖すぎるので大使館に相談するも、「ヒトラーは1945年に自殺した」と取り合ってもらえない… こうなったら、自分で証拠を掴むしかない!

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・【ヒトラー疑惑60%】2階の窓からカメラで監視! 推定年齢・身長・癇癪持ち・犬好き・喫煙者嫌い…共通点がザクザク出てくる

・【ヒトラー疑惑80%】余暇は絵を描いて過ごす隣人、しかもヒトラーと同じ左利き 何か画風も似てる…疑惑が確信に近づいていくが…

・【ヒトラー疑惑-100%】証拠探しのために(やむなく)交流するうちに、チェス仲間に! めっちゃ素敵な肖像画も書いてくれた… やっぱりヒトラーじゃないのかな、この人…

・【ヒトラー度2000%】ある日、主人公は、隣人がヒトラーだと確信する場面を目撃してしまう…


●隣人は本当にヒトラーなのか? しかしそんなことがあり得る? 憎悪を抱く“ホロコーストを生き延びたユダヤ人”はどうする? 予期せぬ騒動が巻き起こる――絶対に映画館で目撃して!
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用心深いヘルツォークの意味深過ぎる言動に振り回され、ヒトラーフラグが立ちまくりながらも、最後まで疑惑と確信の間で揺れるポルスキー。そんな彼が「隣人はヒトラーに決まりだ!」と確信するある出来事とは? しかし本当に"そう”なのか? そして並々ならぬ憎悪を抱くポルスキーは、何を思うのか? 結末はどうなるのか? 予期せぬ重要シーンから、物語が劇的に動き始めるので、是非映画館で衝撃を味わってほしい。


【こんなの見たことない】ナチス映画の新たなカタチ
歴史を覆す“IF”×豊かな鑑賞後感=唯一無二

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ここまでの記述でも伝わっていると思うが、本作はナチス映画、ホロコースト映画の系譜のなかでも、かなりの変わり種・個性派だ。この項目では、本作を唯一無二にしている、ふたつのポイントを解説する。


●【今、IFから始まる物語がアツい!】「ヒトラー生存説」「南米逃亡説」ふたつの“もしも”が導く、あるかもしれなかった世界線
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実はこの夏シーズン、映画界で歴史上の“IF(もしも)”から始まる物語が盛り上がっていることをご存知だろうか? アポロ11号の月面着陸が「もしフェイクだったら?」という噂から着想を得た「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」、タイトル通りの“IF設定”を描く「もしも徳川家康が総理大臣になったら」などの公開が続き、ひとつのブームだと言っても過言ではないだろう。

ヒトラーは、第2次大戦末期に自殺したとされているが、西側諸国はその遺体を確認できていない。さらに戦後、ナチス高官のアドルフ・アイヒマンらは、中南米に逃亡している。本作は、そんな歴史の裏で長きに渡り囁かれてきた「ヒトラー生存説」「南米逃亡説」という、ふたつの“もしも”を出発点にしている、“IF(もしも)映画”のひとつだ。


●【おすすめの逸品】日本でも毎年、多くの作品が公開されるナチス、ホロコースト映画 なかでも「お隣さんはヒトラー?」の圧倒的斬新性は、従来の実録ドラマ&勧善懲悪劇とは一線を画す
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多数の作品が製作されているナチス、ホロコーストを題材にした映画。今年の上半期だけでも、第96回アカデミー賞で国際長編映画賞・音響賞を獲得した「関心領域」をはじめ、「ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命」「フィリップ」などが公開されている。

特に強調したいのは、そのジャンルのなかにあっても、本作は驚きの設定や先の読めない展開で、唯一無二のポジションを築いていることだ。例えばアウシュビッツ強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む、収容所所長と家族の暮らしを描いた「関心領域」は、おぞましい“音”がどこまでも想像力を掻き立て、鑑賞後はひどく打ちのめされる。

一方、本作は、同じく壁一枚で隔てられた男ふたりの関係を緊張感たっぷりに描きながらも、その思わぬ変化を丁寧に見せていき、鑑賞後は豊かな余韻がいつまでも続く(このあたりは、レビューで詳述する)。ジャンルファンもきっと、これまで語られることのなかった視点、まさにナチス映画の“セオリー”を覆す新機軸に、心を掴まれるに違いない。

ちなみに本編鑑賞前に、背景知識を詳しく知りたい方は、下記動画をチェック。懐かしの番組「CBSドキュメント」の雰囲気で、ピーター・バラカンさんと吉川美代子さんが、ナチス映画のテーマの変化や現在の世界情勢を詳しく語る、予習にうってつけの内容となっている。


【解説】ピーター・バラカン&吉川美代子 スペシャルトーク


【編集部レビュー】まさかこんな感情になるとは…気付
けば涙 1ミリも結末を予想できない超絶ギャップ映画

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最後に、本編を鑑賞した映画.com編集部員である筆者のレビューをご紹介。結論を一言でいうなら、本作は「超絶ギャップ映画」だった。鑑賞中、いろいろな感情がめまぐるしく生まれ、戸惑いながらも、ラストでは頬に涙が伝っていた……。


●【中盤まで:ゾクゾク→爆笑】ヒッチコック「裏窓」的な覗き見サスペンスにシビれ、男ふたりの駆け引きに大笑い
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「ヒトラー度」の項目で前述した通り、中盤までは、「病的なほどとにかく疑う男ポルスキー×何やら怪しい動きを連発する男ヘルツォーク」の駆け引きに魅了される。ポルスキーは書店でヒトラー関連本を買いまくり、特徴を覚え、2階の窓から隣家を監視。

かのアルフレッド・ヒッチコック監督の名作「裏窓」を彷ふつとさせるスリル満載の、覗き見ミステリー的なお楽しみで、物語に一気に引き込まれる。ひとつ、またひとつと証拠が見つかるたびに、ポルスキーとともに「ヒトラーなのか? 違うのか?」と葛藤し、一緒に推理するような感覚もワクワクする。

また対峙するのが、どちらもかなり偏屈で頑固な老人同士というのもポイントが高い。「お隣さんはヒトラーなのかも……」という深刻なシチュエーションの割に、(本人たちは必死なのだろうが)口汚く罵り合う極小スケールの“ご近所トラブル”感に、なぜか笑いがこみ上げてくる。ヘルツォークのヒトラー度が増すにつれ、ポルスキーの額に刻まれたシワが深くなり、その百面相もまた、大笑い必至だ。


●【終盤:まさかの涙】仲良くなったのに、ヒトラー確定の証拠が見つかって…いつまでも胸に残る切ないラストにグッときた
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そして本作を唯一無二にしているのが、“出会ったら最後”なふたりが、少しずつ友情を育んでいくという、完全に想定外の展開。負けず嫌いのふたりは、チェスの対局を重ねながら、仲良くなっていく。だがポルスキーは、その関係を利用し、証拠集めに精を出していた。

ある日、ヘルツォークが描いた自身の肖像画を見て、ポルスキーの心は激しく揺らぐ。肖像画は、“描いた人”が“描かれた人”に向ける感情が如実に表れると思うのだが、絵のなかのポルスキーが、めちゃくちゃ良い表情をしているのだ。それを家に飾り、眺めるうちに、「隣人はヒトラーじゃないのかもしれない」「というか、ヒトラーだと信じたくない」と考えるように。そう、ポルスキーは、壮絶な過去を抱えながらも、目の前の男を「信じたい」と思えたのだ。その変化を繊細に表現したキャスト陣の芝居が、静かで味わい深い。

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しかし、それまでの積み重ねを容赦なくゼロにするかのように、ヘルツォークのヒトラー疑惑が一気に高まる事件が起こる。肖像画のあたりで涙腺は緩んでいたが、その事件を見て戦慄し、そして胸に迫るラストでまた涙……感情の揺れが激し過ぎる。ロシア出身イスラエル在住のユダヤ人であるレオン・プルドフスキー監督が、「善と悪を割り切るのは難しい」と語る通り、終盤のポルスキーとヘルツォークが感情をぶつけ合うシーンは切なく、やりきれない。

結末について、ここでは詳しく語れないが、これまで描かれてこなかった視点で、戦争に翻ろうされた人々の苦しみに光が当てられていることを伝えておきたい。鑑賞前には想像もできなかった境地へと連れていかれる、「見たことのないヒトラー映画」を、是非映画館で目撃してほしい。

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