「星はいつも三つです。」お隣さんはヒトラー? フェルマーさんの映画レビュー(感想・評価)
星はいつも三つです。
クリックして本文を読む
プロローグは1930年代の東欧、幸せそうな一家の声。ユダヤ人のようだとわかる。
一家はそろって写真を撮るが、ひとりだけセルフタイマーのタイミングがずれて写らなかった男がいる。
映画で写真を撮る場面は、この先の不幸を暗示する。
映画の文法を使ったすぐれた導入部。
続いて1960年南米、というクレジットが出る。ひとり暮らしの老人はプロローグでひとりだけ写真に写らなかった男だ。
1930年代の東欧に家族と一緒に暮らしていたユダヤ人の男が1960年には南米でひとり暮らしをしている。男の身の上に何があったか、知識として知っ
ている。
そのため、ユーモラスなトーンで進んでいく映画なのに、この映画を「楽しんで見ていいのか」という思いにずっとつきまとわれていました。映画との距離感がつかめなかったです。
映画の半ば、隣人がヒトラーなのではないかという疑いを抱き続けている男が隣人の愛犬を死なせてしまった
場面で、ようやく私も呪縛が解けて映画を楽しめました。
さて、隣人の正体は?
決して下品で目をそむけさせられるような描き方ではないのですが、この作品には放尿、排便、嘔吐、犬の大便といった「生き物の最も醜いもの」が繰り返し登場します。
ホロコーストを下敷きにしていながらユーモラスな作品だけに、汚穢を頻出させることで蛮行、醜さを忘れさせまいという意図ではないかと思いました。こんなに面白い映画になるのだから、ナチスやヒトラーも悪いばかりではなかったんじゃない、などと思っては大変。現に映画には、ヒトラーを強く信奉する連中も登場しています。
コメントする