「【ホロコーストに関わった近代ノルウェー最大の罪により、或るユダヤ人一家の悲劇的運命を描いた実話。観ていて心理的にキツイ作品であるが、世界がきな臭い現代だからこそ観るべき映画の一本だと思う作品である。】」ホロコーストの罪人 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【ホロコーストに関わった近代ノルウェー最大の罪により、或るユダヤ人一家の悲劇的運命を描いた実話。観ていて心理的にキツイ作品であるが、世界がきな臭い現代だからこそ観るべき映画の一本だと思う作品である。】
■第二次世界大戦中、1939年。ユダヤ人一家のブラウデ家は幸せに暮らしていた。
チャールズ・ブラウデ(ヤーコブ・オフテブロ)は、アーリア人のラグンヒル(クリスティン・クヤトゥ・ソープ)と結婚し親族から祝福を受けていた。
だが、1942年にナチス・ドイツがノルウェーに侵攻すると状況は一変する。チャールズらブラウデ家の男性はベルグ収容所へと連行された。
政府の圧力が強まるなか、残された母サラとチャールズの妻は逃亡の準備を進める。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・観ていて、心理的にキツイ作品である。流れが幸せな一家を映し出す序盤から、ベルグ収容所へと連行されたチャールズらブラウデ家の男性達に課された、過酷なる労働のシーンのギャップが凄いからである。
強制的に呼び出され、身分証明書にユダヤ人の”J"のスタンプが、機械的に次々に押印されて行くシーンは、彼らのその後の運命を象徴するようである。
・一方、残された母サラは価値ある資産を全て没収され、スェーデンへの逃亡を準備していくのである。
・だが、ノルウェー秘密国家警察のクヌート・ロッドの指示で、ノルウェーに住むユダヤ人、全員が警官とタクシー運転手らによりオスロ港に強制移送されるシーンも恐ろしい。
・オスロ港に待っていたのは、アウシュビッツ強制収容所へと移送した貨物船ドナウ号である。そこには、ベルグ収容所から移送されて来たアーリア人の妻を持つチャールズ以外のブラウデ家の男性達、父、二人の兄がいるのである。
・そして、ラストシーンはアウシュビッツ・ビルケナイ強制収容所に到着した彼らが、全ての衣服を脱ぎガス室へ歩む姿である。
<エンドロールで流れるテロップも重い。ノルウェー秘密国家警察によりアウシュビッツ・ビルケナイ強制収容所に移送されたユダヤ人は、ブラウデ家の人達を含め773人。生き残ったのは僅か38人と出る。
更に、移送を指示したノルウェー秘密国家警察のクヌート・ロッドは、定年まで勤めあげたそうである。
だが、事件から70年経った2012年1月。
当時のストルテンベルグ首相は、ホロコーストにノルウェー秘密国家警察や一部の市民たちが加担していた事を認め、政府として初めて公式に謝罪を行ったとある。
私は、過去に学ばない国に未来はないと思っている。
故に、最近懸念しているのは、毎年夏になると公開されていた旧日本軍に関する映画が、一部のミニシアターでしか、上映されなくなった事である。
世界がきな臭い状況になっている今だからこそ、日本でも旧日本軍に関する映画が制作、公開されるべきだと思うのだが・・。>