時の面影のレビュー・感想・評価
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そこに浮かび上がる悠久の時の流れが心を揺さぶる
本作は原題”The Dig”さながら、考古学の常識を変えたサットンフーの遺跡発掘を描くとともに、そこに埋もれ、日の目を浴びなかった主人公らのドラマを丹念に掘り起こす。核となるレイフ・ファインズやキャリー・マリガンの演技は、決して想いを主張しすぎることなく、むしろ内側にてじっくり醸成させた”寡黙さ”が印象的。そんな彼らの見つめる景色は悠久の時を描くキャンバスのようでもあり、アングロサクソン人のこと、身近な人の死、戦争の足音、夜空の星々、さらにはいつか地球から宇宙へ飛び出す未来のことさえ包み込みながら、追想は無限に広がっていく。そこで見つかるのが埋葬用の船というのも極めて示唆的だ。ここはある意味、古代人の終着地であり、なおかつ新たな世界へ向けた出発点。死を思い、死を超えていく場。歴史ロマンを味わい、主人公らの生き様を讃えるべく、昨今、多くの観光客がサットンフーを訪れているというのも頷ける話だ。
優しく素敵な映画
戦争が始まる前の時代に丘を掘って遺物を発見するとともに、いろいろあって生きていることの儚さを感じさせてくれる映画。
光の入り方、画面のカラーがきれいで好み。
生きているうちに何かしなくちゃと思わせる。
約2時間、大きく盛り上げるタイプの演出はなく、静かにするすると進行していく。
女性の主人は治らない病、イギリスの歴史をひっくり返す大発見、事故、戦争、
演出によっては、ドラマチックになるだろうけれど、ここでは静かに見せる。
儚さを感じた。
現代はThe Dig 。
過去の遺物を掘る。昔の人たちも人生の儚さについて考えたことがうかがえるし、
苦労して掘って出てきたのは船の形の墓で、しかもそれは今にも崩れそうな状態。
少年の父親はすでに亡くなっていて、今度は母親が病気でいつ死んでしまうとも限らない。
戦闘機が落ちてパイロットは死んだ。従兄弟の青年はこれから戦争に行くところだ。
生きている時間ひとときを大切にしている。
全てのショットがとても大切に優しく扱われている、そんな気がする。
光の使い方、作品中のカメラを構える眼差し、プリントされた写真もそうだ。
正直いうと、2時間を3回に分けて観たけれど、観てよかった作品。
穏やかな人間関係としっとりした景色に癒されていく感覚
1)本作の遺跡について 考古学や歴史には疎いので簡単に調べてみた。 ヨーロッパの西にあるブリテン島には古代、ケルト人が居住していたが、前1世紀にローマ帝国の属州となる。5世紀になるとゲルマン民族大移動に伴いローマは撤退、代わりにゲルマン民族の一派アングロ=サクソンが侵略、さらに11世紀にはヴァイキングと呼ばれるノルマン人が移住して、現在の英国の基礎が形成されるに至る。 かくしてブリテン島には、ケルト人・ラテン人(ローマ時代)・アングロ=サクソン人・ノルマン人などの人種と文化が重層的に混じり合っている。 ローマ帝国撤退後の中世初期は文化の消えた暗黒時代と考えられていたが、そうではなかったことを証明したのが本作のサットン・フー遺跡だった。 2)エディス・プリティについて 英国の裕福な実業家の娘として生まれ、幼い頃は世界中を旅していた。両親の死後、巨額の遺産を相続していたので、映画にあるように「発掘してみたいから広大な土地を購入」するくらいわけのないことだったはずだ。 そして彼女が発掘を依頼したのがアマチュア発掘家バジル・ブラウンというわけである。 3)映画について およそ遺跡の発掘、しかも実話でドラマティックな映画などできるわけもないのだが、この作品はもともとそんなことを狙ってはいない。 大遺跡発掘を軸に、地主のエディスやその子とアマチュア発掘家との交遊、発掘関係者のほのかなラブロマンス、遺跡発見の先陣争いをする公立博物館や考古学者の功名心、彼らの協力ぶりを、ドイツのポーランド侵攻の迫る慌ただしい英国の社会情勢の中で描くこと――それが本作の企図である。 きわめて地味なスタンスなのだが、自転車で走るレイフ・ファインズ、何とも上品なキャリー・マリガンをはじめ、登場人物たちからそこはかとない魅力が漂ってくる。決して高ぶらず、さりげない会話で好意を伝えあう交流ぶり、彼らの身に着けるジャケットやブラウスの色合い、雨が多く鬱陶しいがしっとりした英国の丘陵の緑…。 ハリウッド映画の派手な原色や大音響、ショッキングな演出等に疲れた目と頭が癒されていく。まさに佳作と呼ぶにふさわしい作品かと思う。
壮観
発掘のために土地を購入するなんて、すごいな〜と。
個人の財力でそんなことが出来るものなのかと思ってしまうが、実話ベースなのでそうなんだろうな。
でもちゃんとそれ以上のものが見つかったということで映画にもなったのだが、もしかして埋もれた話はたくさんあるのだろうか?
時代背景は明るくない、とにかく暗い。
戦争、病気で暗雲立ち込める中、コツコツ掘り進めていくうちに急展開していくところが清々しい。
過去から未来へ、引き継がれる景色が壮観。
リリー・ジェームズの出る映画はいい映画が多い
『アングロサクソン』色々な説があるので、確証は無いが、アングロサクソンをイギリス人の祖先とすれば、ドイツはその元祖になってしまう。ヒトラーがゲルマン人をアーリア人と言っているが、アングロサクソンの元と考えた方が、正解に近いと思う。 すると、その国を相手に戦う事になる。 さて、この映画の主旨は?なんか、奥が深い様な気がする。 単純に伝記映画として見たくない。 ひいき目だけれど、リリー・ジェームズの出る映画はいい映画が多いと僕は思う。また、監督も舞台の人。脚本もしっかりしているし、演出を矛盾なく進む。
静かに、淡々と、ゆっくり…
世紀の発見なのだが、レイフ・ファインズ、キャリー・マリガン共に抑えた演技で台詞も少なく、発見に騒ぐ周りの人々との対比が良かった。過去から未来への繋がり、リリー・ジェームズの恋、迫りくる戦争の影、要素が良い塩梅で絡み合い、落ち着いて見られる作品。
静かに流れていく
第二次世界大戦直前のイギリスで、余裕のある生活を送る未亡人が、著名では無いけど知識と経験の豊富な発掘家に遺跡の発掘を依頼する。 全体的に落ち着いていて丁寧に作られた雰囲気のある作品だった。 開戦直前の当時のイギリスの暗い様子も伝わってくる。 背景にある時代では、丁度ドイツ軍がポーランドを侵略していて、イギリスの説得も功を成さずにポーランドから撤退しなかった為、イギリスも参戦する事となる。この当時のナチスも「ポーランドでドイツ系住民が逆転されているから保護を行う」という理由に侵略していた。 この映画が作られたのは去年だが、現在(2022年3月)の世界と丁度被るものがあり、なんとも言えない気持ちになる。
ちゃんとしている
隅から隅まで、ちゃんとしたいい映画だと思った。ひねりはないが、イギリスらしいいい映画だった。自転車で始まるオープニングは、なんか他で見た事ある気もするけれど。 レイフ・ファインズが随分な年寄りに見える。いくつなんだこの人?あとは、少年がすごく良かった。ブラウン夫人も好きだ。
日常のなかにある情熱
かの有名なサットンフーがこのような情熱に支えられて発掘されたということが、まず驚きで、教えてもらえたことに感謝。 さらに、人の一生は、短いようで、何かを成し遂げようと努力すれば成し遂げられる。そのためには普通の生活のなかでも、強い意志をもって行動しなければならないのだと、Mrs.prettyの思いが伝わってきて切なくも、力強いな。 脇で支える人々も、それぞれが主人公だなーとしんみり。 最終的にきちんと発掘者の名前が記載されるところなど、過去と現在の歴史に惑わされず、前に進むところが救い。
とてもしっとりして良さげな映画だが...
内容はあと一歩物足りない感じ
途中で目に見えて脚本が迷子に陥ったような感覚を味わった
女主人と最初の掘削する人の関係を描きたいのか?
若い男と主婦とのロマンスを描きたいのか?
掘削する考古学者の有名、無名による社会の対応の違いを描きたいのか?
よくわからなくなってた感じがある
音楽は重厚でイギリスの田舎の風景にあってる気がしたし
キャストも悪くない印象だったからもう一押し何かが欲しかったかもね
先に生きた人間の痕跡を探す作業と
今生きてる人間に焦点を当てる事に集中して欲しかったかな
奥さんが指輪を投げ出し若い男のもとに走るのは
とても現代的な感じがした
今はみんな我慢しなくて良くなった時代なのかもね
本当に自分に合うと感じた人と過ごすべきなのかも
そんなメッセージはいいんだけど
全体的にまとまりを欠いた感じかな
雰囲気はとても良かったのでもったいないと言うか残念な映画でした
地味だけど滋味
文芸ドラマのキャリーマリガンでなく、ふつうの現代人の、あまり真面目でないキャリーマリガンが見たいのだった。 トレーラーをみるかぎりPromising Young Woman(2020)が、それな感じだったが、日本へ来たんだろうか。来るんだろうか。 ネットフリックスの新作にキャリーマリガンがいて、わくわくしてみたが、やっぱり文芸風のドラマだった。 そんなドラマのなかでも、精彩ある人だが、なんとなくハメを外さない役回りばかりのひとである。 だらだらした主婦みたいな、立派じゃないキャリーマリガンが見たいと、キャリーマリガンを見るたびに思う。 Promising Young Womanはサンダンスでの好評という信頼性に加え、rottentomatoesでも91がついていた。 昨今のご多分に漏れず、禍で公開が遅延し半端な感じに終わったようで、どこかの配信サービスがアプローチしてくれたらいいなと思う。 この映画はレイフファインズとキャリーマリガンが主人公だが、やがて発掘にたずさわる様々な人物があらわれ、焦点がぼやける。 やはり、あらかじめストリーミング(NetFlix)配信が決まっているものは、いわゆるディレクターズカット風な、枝が付いた状態で供給される──ような気がする。 理念はあるし、撮影も優れているが、まったりな進み具合と相関が入り乱れることで、テンポを欠いている。 その感慨は、すべてではないが、NetFlixの映画に共通している。 おそらく劇場公開よりも、実験やイレギュラーを試せる余地がNetFlix公開にはあるのだろう──と思われる。むろん、じっさいは知らない。 が、そうじて尺が長め。もっと編集できる。──と思えてしまう。 発掘地の地主エディスプリティ(キャリーマリガン)は不治のやまいにかかっている。 やはりじょうずだが、じょうずだから余計に、薄幸のキャリーマリガンなんてこりごり。老けっぽい顔も痩身もだいすきだが、いかんせん、いつだって文芸キャラ。で、これは、また冒頭の話に戻る。 映画の軸は、ゲイ疑いのある夫をもったペギー(リリージェームズ)とプリティの弟との熱愛へ寄り道する。 破綻はしないが、まだるっこしい。 やがて戦争がはじまり、発掘のドラマはそこで費える。 いろいろconsも述べたが、映画の結論は高尚で、あなたの功績や努力は、いま認められないかもしれないし、存命中に浮かばれることはないかもしれないが、いつかきっと認められる──という話。静かだけど、力強い物語だった。
何となく雰囲気で上手くいくので退屈!!
ピンチが来ても雰囲気で先に進んでしまいますし、演出が平坦すぎるのもどうかという感じでした。眼鏡の女性の恋愛話も主人公とは直接は関係ないですし、取って付けたような印象でした。
Netflix限定の映画で、久しぶりに素晴らしい作品
個人評価:4.0 過去の記憶が未来へと受け継がれる。人生を見つけだす事と、土を掘り歴史を見つけ出す行為を対比させ、とても紳士的かつエレガントな脚本に仕上がっている。また華麗なるギャツビー当時は、キュートの象徴であったキャリー・マリガンが、人生を重ねた深みのある顔立ちとなり、死期の近い母を素晴らしく演じている。 レイフ・ファインズも素晴らしく、脇にはリリー・ジェームズという完璧な布陣。 Netflix限定の映画で、久しぶりに素晴らしい作品に出会えた。
人生は一瞬よ・・・ 大切にするべき瞬間があるのよ・・・ それぞれ、...
人生は一瞬よ・・・ 大切にするべき瞬間があるのよ・・・ それぞれ、矜持というか、胸の内に譲れない確固たる物を持たないと・・・流されたゴミばかりの、掃き溜めみたいな、かっこ悪い世の中になるよね・・。 凛としたキャリー・マリガン、よろし。 リリー・ジェームスもよろし。 レイフ・ファインズは、あんなうらびれたお爺さんの役もできるのね😲
すべてつながってる、考古学が教えてくれること
《塚》採掘。過去と繋がっている予感。歴史的発見の裏にあったドラマ、日の目を見なかった功績にスポットを当てる。美しいロケーションとそれを動的に捉える撮影。職人気質紳士の似合う正直者なレイフ・ファインズと、心配になるほど痩せ細ったキャリー・マリガン = 歳を重ねた演技派二人の見事な演技と関係性。単なる雇用主従関係でなく、なんだかもっと人と人として信頼し互いを尊重し合うような。華やかさの抑えたリリー・ジェームズのメガネ姿はときめく。戦火の悲恋を予感させる。相手役ジョージ・マッケイが合いそう。 《時間》という概念と(僕らの頭上に広がる)宇宙。未来の人と先祖をつなげる仕事。意義があるから戦争が近づいても掘り続けている。幕を開けただけ。バイキングよりもっと前、六世紀のアングロ・サクソン。まさしく驚異の発見、見つけたのは誰かの墓でなく人の生き様。歴史的大発見を前に迫る戦争、第二次世界大戦の影。それが過去になる前に瞬間を捉える。刻一刻と病魔に蝕まれていく。死んで朽ちて終わり?いや、私達も悠久の時の一部。 真上から撮られる墓地への道と採掘現場。採掘することは墓掘りか。展開望遠鏡を覗くように、あるいは空襲のように、上下に角度のつけたカメラワークが、気のせいか、普段より目に入った。それは例えば全景を捉えるためということもあるだろうけど、それ以外の面でも様々なことが考えられた。地平線の広がる広大な土地。 軽いから私を?私の名前はペギー 入隊も近いしね 別の人といるときの方が幸せそう
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