「パンナコッタ」プラットフォーム オクやんさんの映画レビュー(感想・評価)
パンナコッタ
何層にも区切られた巨大な高層ビル風の建物の中で繰り広げられるサバイバル生活を通して、格差社会や食料廃棄という現代病を描くと共に人間のエゴにフォーカスしたワンシチュエーションスリラー。
アイデアはなかなかのもの。おそらく今後リメイクが登場するかも?中央に大きな長方形の穴が開いたコンクリート部屋には二人の人間(自ら希望して来た者や犯罪者として送り込まれた者がいた)がいて、最上階から順番に降りてくるプラットフォームに載せられたあらゆる御馳走を貪り食うだけの毎日だった。下層に行けば行くほど食べ物は底をつき、自殺する者やパートナーを殺して死体の肉を食らう者までいた。ひとつの階層にいる期間は一か月、それを過ぎると階層とパートナーがシャッフルされる仕組み。しかしどのような方法でシャッフルされていたのかは不明。催眠ガスでも嗅がせて眠らせた隙に係員が移動させていたのかもしれない。あともうひとつ気になったのが自らの意志でやってきた者の目的。認定書がもらえる、というセリフがあったがこれによりどんなメリットが生じるのか、このあたりも言及されていなかったのがいただけない。
多少のモヤモヤは残ったが、密室ドラマとしてはまぁまぁの部類。
食糧の一部を取り置きして後で食べようとすると室温が急激に上下動していたので、監視カメラがあったのだろうか。本作は入居者を管理する側の描写をほとんど無視して(唯一女性職員が愛犬と共に入居してくるだけ)ひたすら監視される者だけを映し出す。この一方通行が恐怖を増幅させ、物語を簡素化させてくれていた。最大のテーマは極限状態の連帯だと思う。
餓死寸前という生死の境で人間は他人のために行動できるのか。
主人公は黒人のパートナーと組んでプラットフォームに乗り、一階づつ降下していく。一人分だけ皆が食べ続ければ最下層の人にも食料が行きわたり誰も餓死せずに済むのだ。これを証明しようと二人は説得を繰り返すのだが、従わない者は構わず撲殺していた。遂に二人は333層という最下層にたどり着く。そこにいたのは一人の女の子。最後まで残していたパンナコッタを食べさせた後、プラットフォームに女の子を乗せる。この子が最上階へ辿り着けば管理者へのメッセージになる。高速で上昇していくプラットフォームがラストカット。
極限状態でも人間は助け合える・・・伝えようとしたメッセージは普遍的であるが、造反者を皆殺しにした後では説得力に欠けたと言わざるを得ない。希望と絶望がないまぜにされたような作品だった。