科捜研の女 劇場版 : 特集
シリーズ初心者の映画好きが“科捜研沼”にハマるまで
魅力あるキャラが続々……実際に観たらえらく驚いた
この特集は、「科捜研の女」というタイトルは知っているし、ちょっとは興味もあるけれど、いきなり映画を観ても分からないんじゃないかな……という人に向けて書いている。本作は、むしろ初心者のほうがスムーズに“世界観”にハマることができると思う。
20年以上も続く超人気ドラマを映画化した「科捜研の女 劇場版」が、9月3日から公開される。最大の見どころは、沢口靖子演じる“マリコさま”の人を惹きつける恐るべき吸引力と、超個性的な科捜研メンバーたちとのチーム感だ。
本記事では、なぜ「科捜研の女」がこんなにも長い間幅広い世代から支持され続けているのか、シリーズの魅力をおさらいする。そのうえで、マリコさまのあまりに破天荒な行動をまとめた“伝説”を掲載。記事の最後には「シリーズをちゃんと観たことがない初心者(映画.com編集部員)」が、劇場版を鑑賞し“科捜研沼”にハマってしまった模様もレポートする。
【作品概要】20年続く人気ドラマがついに映画化!
シリーズの魅力は? 映画では何が描かれる?
普段エンタテインメントに多少なりとも触れている人なら、「科捜研の女」というタイトルはどこかで聞いたことがあるだろう。そんな超人気ドラマが、初の劇場版としてスクリーンに登場する。
●科学捜査で事件に迫る……20年続く人気“最長記録”ドラマ
ドラマのタイトルにもなっている“科捜研”とは、科学捜査研究所の略称。科学を駆使して、数々の難事件を解決する、警察組織最強のスペシャリスト集団・京都府科学捜査研究所の面々が、活躍する姿が描かれている作品だ。
本作は1999年に連続ドラマとしてスタートし、2020年には「Season20」を迎えた。現行の連続ドラマ最多シリーズを更新し続けている、まさに伝説的な作品だ。
科捜研シリーズの魅力の一つは、科学捜査の面白さ。急激に発展する科学技術のトレンドを即座に取り入れており、劇中では「そんなことまで可能なの?」と驚くような科学捜査が展開。映像には常に真新しさが感じられ、今度は何が描かれるのか、と期待に胸躍らせながら鑑賞できるのだ。
しかし“科学的”というと、観る側のハードルが上がってしまいがち。ともあれ、そこは登場人物の“バラエティに富んだ個性”が物語を柔らかいものにしてくれている。
主人公である法医研究員・榊マリコは本当に無茶苦茶な人なのだが、その伝説は次項でお伝えする。マリコ以外にも同僚の宇佐見裕也(風間トオル)ら科捜研メンバーをはじめ、捜査一課の熱血刑事・土門薫(内藤剛志)ら魅力たっぷりの面々ばかり。密かな恋愛模様や友情、仕事に対する情熱、さらには美しい京都の景色など、事件解決以外の要素もたっぷり楽しめるのである。
●映画化の一報にネットは歓喜! 物語は榊マリコ“最期の決断”を描く
「『科捜研の女』シリーズ映画化」の一報が出た際は、インターネット上では大きな反響が巻き起こった。一例を紹介すると「『科捜研の女』映画化するのか! メチャクチャ見たい」「もし映画化されたら、初日に絶対見る!って決めていた」「大きいスクリーンで見られるの幸せすぎ」などなど、ファンにとって念願だったことが伝わってくる。
そんな劇場版の物語は、衝撃とともに幕を開ける。京都・洛北大学の研究棟に「助けて、殺される」という悲鳴がこだまし、棟の下に落下した白衣の女性科学者の遺体が発見される。マリコら科学捜査研究所は事件性を疑うが、裏付けの証拠は発見されず、不審な点が多く残っていながら転落死として処理されてしまう。
一方で土門刑事は、被害者が通称「ダイエット菌」と呼ばれる細菌の研究について、東京にある帝政大学の微生物学者・加賀野亘(佐々木蔵之介)の元を訪ねていたことを突き止め、ある疑惑を投げかける。時を同じくして、日本のみならず世界中で、科学者が変死する事件が頻発。そして、魔の手はついにマリコにまで――。
本作で “シリーズ最強の敵”加賀野を演じるのが、名優・佐々木蔵之介だ。この男が事件とどう絡んでくるのか? 現代科学では解明できない最高難度のトリックを前に、マリコは想像だにしない衝撃の“最後の決断”を下すのだ。
【キャラの魅力がすごい】特に榊マリコがすさまじい!
事件解決にまっしぐら、驚愕の“伝説”を一挙に紹介!
20年以上に渡りシリーズの主役として君臨する沢口靖子/榊マリコ。本作最大の見どころとも言える彼女の破天荒ぶりについて、ドラマシリーズで見せた“マリコ伝説”を例にご紹介しよう。
●初登場シーンがとにかくすごい
まずはSeason1の第1話「声紋は語る!京都大文字の夜 謎の女が…」の初登場シーン。なんとマリコは青いごみ袋に頭を突っ込み、髪の毛にゴミをつけながら登場するのだ。
一発で「この主人公、タダモノではない」と視聴者にわからせる、絶大なインパクトを与えたマリコ。真相を究明するためには手段を選ばず、猪突猛進で周囲を巻き込みながら突き進む姿は、沢口の持つ美しさとのギャップでなんとも魅力的に映る。
●バスジャック犯にも果敢に応戦… 「私を縛って!」と衝撃発言も
ほかにも驚愕のエピソードは数知れず。2018年にテレビ朝日が発表した「ファンが選ぶ名作エピソード・ベスト10」で1位に輝いたSeason16の第16話「地獄のバスツアー/マリコVSバスジャック犯!! 100均グッズで決死の鑑定」(すごいタイトルだな)では、バスジャックに遭遇し監禁される。しかし犯人に臆することはなく、人質の持ち物を使いミニロケットを飛ばして事件を解決した。あまりに破天荒。
さらに犯人の罠にはまり監禁され、ぐるぐる巻きで床に転がされたり(Season16・第17話)。グルメサイトのカリスマレビュアーが殺害された事件(Season17・第1話)では、「みんな! 私を縛り上げて!」と絶叫し、実験のために牛肉とともに天井から吊るされた。ほかにもウサギの着ぐるみや探偵、メリーポピンズを思わせるいで立ちのコスプレを披露したりと、事件を解決するためにはNGなし!
ドラマシリーズでは数々の伝説を残してきたマリコだが、劇場版でもその無茶苦茶な魅力は健在、どころか映画ならではのスケールにパワーアップ! 「そんなことまでやっちゃうのか!?」と目を剥くような破天荒ぶりをお楽しみに。
【レビュー】シリーズ初心者が観たら“沼”にハマった
衝撃展開が連続! 思っていたより5倍ぶっ飛んでた!
※ある編集部員の体験記
「科捜研の女」については、これまでなんとなく沢口靖子さんが主演だ、最先端の科学捜査が秀逸だ、くらいの薄~いイメージしか持っていなかった。そんな状態で劇場版を観ても楽しめるだろうか……なんて気持ちで鑑賞。しかし帰り道ではWikipediaで登場人物や、全Seasonの詳細をガッツリ調べるほど、まんまと“科捜研沼”にハマってしまった。
●スケールの大きさ、物語とマリコのぶっ飛び具合が半端ではない
まず作品を観て驚いたのが、スケールの大きさ。京都を皮切りにロンドンやトロントなど、世界を舞台にした同時多発的に起こる科学者の転落事故死というミステリーは素晴らしく壮大だった。さらにワイヤーアクションを駆使した躍動感溢れるシーンもあり、思わず「めっちゃ痛快なエンタテインメントじゃん」と心のなかで快哉を叫んでしまうほどだった。
さらにマリコというキャラも、映画でじっくりと見ると、イメージ以上にぶっ飛んでいた。凛とした佇まいとキラキラした目は“吸い込まれる”ようだが、いざ事件の真相究明のためスイッチが入ると、地位や立場はお構いなし。忖度なんて言葉はマリコの辞書になく、利用できる人や物は利用し倒す。多少無理筋であっても「じゃ、お願いね!」とだけ言って要求を通し、風のように去っていく。
それでも沢口靖子さんのキャラもあってか、観ているこっちも「しょうがないなあ」と映画の登場人物のようにつぶやいてしまうから不思議。一方で、劇場版のラストでとったマリコの行動は、とても科学者とは思えないほどぶっ飛び過ぎており、普通に度肝を抜かれたので、読者の皆様は乞うご期待!
●その他のキャラクターも魅力抜群! ドラマシリーズを一気見したい衝動に駆られる
そんなマリコをとりまく仲間(じゃない人もいるけど)が、また何ともいえず濃ゆ~いキャラクターばかり。2時間という尺のなか次々と登場し、作品をいい意味でぐちゃぐちゃとかき回すので、まったく飽きることなく鑑賞することができた。
個人的には、最強の敵としてマリコの前に立ちはだかった佐々木蔵之介の怪しさと圧倒的な存在感には驚かされた。あそこまで静かに、強くぶつかり合うのを“感じる”のは、秀逸な脚本と、演じる俳優の高い演技力のなせる業。これだけでも豊かな気分になった。
ディープな「科捜研の女」ファンには、初期のころの懐かしいメンバーたちが次々に登場するオールスター感謝祭的な展開も胸アツなのだろう。渡辺いっけい扮する倉橋拓也が登場するが、マリコとの関係の詳細を知らなかったため、試写室から出るとすぐに検索。「あーなるほど、そういう関係だったか」と状況を把握したとたん、過去のドラマを一気見したい衝動に駆られた。
気軽な気持ちで観たら、どこまで足を踏み入れても終わりがない、深く魅力的な沼が待っていた。もう私は肩まで浸かって出られない。ぜひ、あなたも“科捜研沼”にハマってみてはいかがだろうか。