「路線変更を(大オチまでのネタバレあり)」コンフィデンスマンJP 英雄編 よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
路線変更を(大オチまでのネタバレあり)
前作のプリンセス編が最高傑作と言って差し支えない物語だったので今作はどうなのかと期待半分不安半分で見に行った。
プリンセス編路線ではなくロマンス編路線に進んでしまったのが残念。
まずは冒頭から続く3人の軽快なやり取りを聞いて懐かしいとおもった。
古沢さん脚本の作品自体前作のプリンセス編以降お目にかかれなかったので随分久しぶりといった感覚だった。
現在はコロナ禍真っ只中の為海外を舞台に設定した作品はもれなく合成、あるいは日本でそれっぽい場所で撮影するしか無いわけであるが、今作もその例に漏れなかった。
イタリアっぽいロケ地をよく見つけたなと感心するが家の場面で壁が映るとやはりイタリアの家とは少し違うなという感じがした。
日本を舞台にしても良かった気がする。
ジェシーとスタァの登場のさせ方は強引ながらこれもスタッフさんや出演者一同の想いなんだろうなぁと少しグッときた。
それにしてもこれまで出てきたレギュラーメンバーをちょい役でもほとんど全て登場させてるのは異常。
これから先どこまでこれを続けていけるんだろうか。
冒頭唐突に出てきたツチノコが3人のルーツであるというのは成程と思った。
今回はこの3人のルーツを描く話なんだろうなと。
今までトリオを組んでた3人の対決も面白いし、何より全ての計画を考えていたダー子が目立ちがちだったがボクちゃんやリチャードにもきちんと詐欺師としての才能がある事を描いたのはすごい良かった・・・と思っていた。
しかしロマンス編のように最後に今回ダー子が狙ってた(と視聴者が思ってた)人物が仔猫ちゃんだったり、劇中出てきて立場が二転三転してた人物がこれも仔猫ちゃんだったりと全部がダー子が組み立てたセットでツチノコが踊ってただけというのはあまりにも裏切りすぎ。
もう少しリアルの部分を残しても良かったのでは。
でないとボクちゃんが結局ダー子の掌で踊っていたことになって、折角ボクちゃんの詐欺師としての才能を見れたとおもったのに・・
まぁボクちゃんの1番の才能は自身も本気でやってるから相手を騙そうとせず騙せるということなんだろう。
取り繕うよりも真実の方が強いのかもしれない。
冒頭の英雄に関する文章が本編でしっかり効いてくるのも当たり前と言えば当たり前だけど良い。
みんな英雄に憧れるけど平和な世の中には英雄は必要ないみんなが英雄なんだというメッセージが伝わってきた。
最後の赤星のオチは最高。
演技面で言うと瀬戸康史さんが最高すぎる。
事前の番宣では生田さんや城田さんがピックアップされていたがこの映画の骨は瀬戸康史さん演じるマリムラだった。
そういうところでいうと宣伝にすっかり騙された。
徐々にマリムラの狂気性が見えてくるところが良い。マリムラがその本性を剥き出しにする赤星との対峙シーンはこの映画の中の白眉。
ただお宝を手に入れての喜びようは少々わざとらしい。
次いで良かったのは小手さん。
そのコメディセンスが爆発していて前半大活躍。
コックリがダー子を「お母さん」と呼ぶのが前作の大ファンとしては嬉しかった。
最後の生瀬さんと三文芝居とすっかり定番で楽しい
本編では一切触れられてないがこのテーマに関して日本の戯曲の中のとある一文で締めくくりたい
「嘉肴ありといへども、食せざればその味はひを知らずとは、国治ってよき武士の、忠も武勇も隠るるに、たとへば星の昼見えず、夜は乱れてあらはるる」〜仮名手本忠臣蔵より〜
現代語訳 御馳走があっても食べてみないとそのうまさが味わえないということは、国が平和に治っている時は立派な武士の忠義も武勇も隠れているのに例えられ、それは星が昼には見えないで夜はきらめいて現れるようなものである
英雄も平和な世の中には見えないで乱世になると現れるのだろう。