「少女が心の傷を乗り越える」竜とそばかすの姫 あいさんの映画レビュー(感想・評価)
少女が心の傷を乗り越える
1人の少女が心の傷を乗り越え成長する作品。
現代的映画。
情報量過多。最近流行りの邦楽が、歌詞を詰め込み、たたみかけるように歌うのと同様に、この映画も大量の情報に溢れ、その海の中から拾える範囲だけ拾っていくしかない。情報を拾う力が問われる作品かもしれない。受け身で見ていても細かい説明などしてくれない。
テネットといい、観客はストーリー展開から置いていかれるもので、何度も映画館へ来場させようという魂胆なのか。
◆素晴らしかった点
・孤独感。
母を失った孤独、意中の人と結ばれないという孤独。クライマックスに向けてこの孤独が、別の孤独へと変化していくところが素晴らしい。
・映像の美しさ。美しいが不自然ではない、違和感なく体感出来てしまう。
・声優陣のナチュラルさ。
その現場にいるかのような生々しさがあった。
各人の個性が出過ぎていないので、全体的にまとまりがある。
◆情報化社会
インターネット、SNSの威力をファンタジックに反映した映画でもある。
・U
批判のコメントなど、ネット社会の残酷さをありのまま描いた。
・ネットによって、物理的に遠くにいる、面識のない誰かと深く共感できる、分かり合える、というネットコミュニティの生々しさ。
・部屋の窓の外の景色や、夕方のチャイムが2回鳴ることなど、ネット上に晒した情報により、ある程度の住所を特定されてしまう恐ろしさ。
◆そのほか覚え書き
・なぜベルと竜が心を通わせたか?
鈴は母親を失ったあと、狂ったように心の声を紙に書き出し、何枚も何枚も書いては捨てた、狂気的な時期がある。
現実世界の竜も、父親に罵られ、心に傷を負い抑圧された。そして助けると言ってくる人たちがいても解決しない現実に対する不信感、怒りを抱え、Uの世界で過激な戦いを繰り返す。
鈴の狂気的な時期があったからこそ、竜の痛みを理解できたのかもしれない。
・ベルのAsの見た目
まるでルカちゃん→最初からルカに憧れていた描写あり。深層心理が反映された?
・現実世界の描写が生々しいのは、Uの世界との差を出すためか
・現実世界の竜を助けるのは、母親の死の理由を理解するための流れであったために、細かい描写はなかったのかもしれない