「なにもかも雑」竜とそばかすの姫 ななさんの映画レビュー(感想・評価)
なにもかも雑
映像と音楽は素晴らしかった。
が、良い所を全て忘れてしまうほど脚本がつまらない、要素をたくさん入れはするものの方向性もバラバラで全くまとまりがない。歌以外に絶対に必要だと思えるシーンがひとつも無い。
何よりテンポが悪い。
オープニングが『u』の説明なのに、その直後が主人公がウジウジしながら『u』のアカウントを作成するシーンと、連続して同じような説明がされる。
みんなが使っているはずの『u』を主人公は触れたことが無く、なりたい自分になれるのはずなのにアバターは写真とリンクさせ自動生成・変更不可と、わざわざ2回も説明した設定も矛盾しており、開始5分で既につまらない。
(主人公の自信のなさや性格の説明の為のアバター作成シーンだと思うが、テンポも悪いし、はわわ私美人になっちゃったは寒過ぎる。変身シーンはポジティブな気持ちで魔法をかけてほしい。)
たくさん要素があるが、全くまとまりがない。
ひとつのテーマを描ききる自信や目的がないのか全てぼんやりとしている。
・嫌われ者の醜い竜と美しい愛され歌姫の交流
・人前で歌うことへの恐怖
・現実とバーチャルでの二面性
・自己犠牲
・親と子のすれ違い
・虐待
さらに同級生とのイザコザや青春ラブストーリーが加わるが、面白くもないし必然性も感じない。
飼い犬が義足なのが、この作品の無駄な情報の多さを象徴している。
児童虐待は繊細に扱うべきテーマだが、雑としか言いようのない内容。
ネットに自由にアクセスし動画も配信出来るのに、やることはバーチャル空間で他アバターをボコるだけの被虐児。
虐待されている子供を見て1秒でも惜しいと、地域しか絞れていないのに飛び出す主人公。
↑を送り出す大人達、なんか認めてくる父親。
なにより虐待への解決策が、勇敢な主人公を見て被虐児自身が勇気を出して立ち向かう!というもの。
虐待を受けてる子供に対し勇気があればどんな壁も乗りこえられる!お前自身で立ち向かえ????
こんなことを主張する人間は児童虐待問題を扱ってはいけない。
フィクションでも言ってはいけないもの、してはいけない主張はある。それが主人公の、作品としての答えならなおさら。
脚本はマイナスだが、映像と歌は本当に素晴らしいので星1。
細かいディテールにこだわった結果、全体は雑な印象受ける作品。
そして監督は2度と虐待問題を取り扱うな。