「美しい映像と音楽、理解しやすいストーリー」竜とそばかすの姫 くにさんの映画レビュー(感想・評価)
美しい映像と音楽、理解しやすいストーリー
細田監督作品と知って、劇場へ。
劇場の大きなスクリーンで描かれる仮想世界は美しく、深みのある唄や音楽で冒頭から惹き込まれました。
主人公は高知県に住む高校生の普通の少女。
幼い頃に事故で母を亡くしたショックから内向的な性格になっていた主人公ですが、仮想世界Uで唄う事や、謎のアバター竜との出合い、現実世界にまで影響を及ぼす出来事を通じて意思や優しさを見つけ心を開いて成長していく、というのが大筋です。
このストーリーが素晴らしいと思うのは、ただのラブロマンスでは無いという事です。
ストーリー冒頭にある幼い頃の母との幸せな思い出、突然訪れた別れ、なぜか知らない子供を助ける為に命を落とした大好きだった母。
この「なぜ?」が残されたままストーリーが進む事が、最後で生きてきます。
顔も素性も分からない仮想世界での相手のために、自分が積み上げて来た物の全てを投げうってでも助けたいという想いや愛情、自己犠牲。
昨今のネットやSNS事情における匿名での暴力が多発する中でも
「繋がるのは人であり、愛情や思いやりを忘れてはいけない」
というメッセージを感じます。
最後、竜のために主人公が暴力に立ち向かうシーンでも、暴言や暴力に訴えない、静かに立ち塞がるという事がその意味を大きくしているのだと思います。
ストーリー上、ご都合主義的な所やインパクトの為大きな数字が使われる所もありますが、話が破綻するようなものではなくエンタメ的側面だと感じます。
確かにもう少しストーリー途中で観客にフォローを入れてあげればもう少し受け入れやすくなったのかなと思う所があったのは残念です。
また美女と野獣的な演出をする事で、誤解されやすくなっているのも事実です。
おかげて竜のバックストーリーを深すぎるテーマと捉える人が散見できるのが勿体ないです。
総括として、観終わって満足感があり、少し涙もできる良い作品でした。
紗に構えたり、わざと難しい解釈や考察などをせず観るのがいいと思います。
個人的に、主人公と父のやり取りが変化してゆくところ、メッセージや最後の「ただいま」が好きです。