「端的に言ってつまらない。」竜とそばかすの姫 Ayumiさんの映画レビュー(感想・評価)
端的に言ってつまらない。
これまでの細田監督作品はサマーウォーズ、時をかける少女だけ面白いと感じてました。
それ以外の作品は視聴後に満足した記憶はなかったのですが、CMの歌に惹かれて本作を思い切って観に行きました。
…が、残念ながら無駄足だったと、本編開始10分ほどで悟りました。
幼稚な台詞回し、主人公のいちいち気になるオーバーなリアクション、そこで泣くの?と思えるタイミング…
唯一の笑い要素だったのかなと察するシーンは完っ全に滑っていてそこが一番精神的にキツかった。
文字通り笑えないし、正に拷問の時間でした。
ベルがバーチャル世界に生み出されるや否や間髪入れずに歌い出すシーンは、もう少し本人に感動している描写や溜めがあって良かったのでは?初めてのバーチャル空間、もう少し余韻があっていいよね?と。とっとと本題に入って行かれた感じでした。
こういう細かいところでちょいちょい感じる違和感を挙げればキリがないですし、その度に物語全体の流れを滞らせ、現実に引き戻された。
登場人物たちに説得力がないがために作品自体に感情移入できないまま終わってしまった。
またディズニーの美女と野獣のシーンをそのまま起用したような演出がいくつかあって、違和感を超えて嫌悪感さえ感じました。あんなに堂々とコピペしてて著作権侵害にならないのか??
終盤は男の子の兄弟の背景が薄っぺら過ぎて、主人公の行動の動機とするにはあまりにも説明不足だったし、最も解せないのはラストに女子高生だけ東京に行かせた超絶無理矢理展開です。常識的に考えてあり得ない選択です。
皮肉にも、問題提起したはいいものの広げ過ぎた風呂敷が雑に回収されたことで、後味の悪い終わり方になってしまった。
どちらかと言えば純粋に楽しもうという気持ちで臨みましたが、無駄な試みでした。
これはお話作りのプロになり切れなかった人の作った、社会批判と創作を中途半端に混ぜた中途半端な作品に過ぎません。
なぜなら本作は娯楽としての面白さ、視聴後のカタルシスが欠如しているからに他ならない。
試写会?では外国人達がスタンディングオベーションしてましたが本当に忖度なしなのか疑わしいです。
娯楽を作り出す職人なら人に共感や感動を与えて初めて仕事をしたと言えるし、社会問題に一石を投じるより先に純粋に人を楽しませるエンターテイメントを一から学ぶべきです。理屈が先行してしまって視聴者が置いてけぼりになっている事に気が付いて欲しい。
とは言えそれはその人の元々の感性であるし、この監督に才能があるか無いかは過去作を観れば明白なので、今後は脚本は潔く他の人に任せるべきでしょうね。
そして視聴者の意見が賛否両論あるのは世の常、と看過するのではなく真摯に受け取めて欲しいし、その上で次回作に生かしてほしいと切実に願う。別にこの監督作品のファンでもないですけど、曲がりなりにも未来の日本のアニメ映画界を背負う可能性を秘めているのならこのままで終わってほしくない。
悲しい事に現時点で背負えてるとはと思えないので、あくまで可能性の話ですが。
ただ歌や映像は作中唯一の救いだったと思うので、そこだけは評価したいです。