「長文失礼します。」竜とそばかすの姫 ヤッターさんの映画レビュー(感想・評価)
長文失礼します。
細田風ディズニーヒロイン映画
こう言ってしまっても過言ではないくらい、本作はディズニーヒロイン映画から多分な影響を受けているように思います。ベルという名前や竜の城のデザイン、ジン・キムによるキャラデザインといった表面的なものは勿論のこと、王子様的存在のアシストを得て自己実現を成すという構造もアナ雪2を思い起こさせられます。
また、劇中の楽曲はどれも素晴らしく、これを聴くだけでもこの作品を鑑賞する意義はあると思います。(このような楽曲使いからも、ディズニー映画への意識を感じずにはいられません。)中村佳穂さんのことは今回初めて知りましたが、歌からもお芝居からも魅力を強く感じさせられます。
そこに賑やかでポップなインターネット世界と田舎町の温かな人間社会描写、そして、半径1メートルに存在する社会問題という「細田テイスト」がブレンドされることによって本作が出来上がったのだと思います。
久しぶりの大作、存分に楽しめました。しかし、同伴してくれた妻は後半の展開に納得いかない様子。
「あんな大勢の前で顔を晒せとか、しのぶくんはどういうつもりなんだ」
「『すずが決めたことだから…』じゃねえだろ!あんなとこに一人で女の子を行かせるんじゃないよ!」
うーん、分からんでもないけども。
それに、今回もレビューサイト等では「薄っぺらい」「偽善」といった辛辣なメッセージが。このような感想がなぜ生じるのかを考えました。
思うに、細田監督はとても純粋な方なのだと思います。世の中の問題に対して憂いていることを、物語で救えると考えている。物語の力を信じているとも言えるかもしれません。
クライマックスとなる場面について、多くの物語では、すずがUの空間で歌うという場面になると思います。でも本作はそうではなく、すずが四国からはるばる東京まで文字通り助けに「行く」ことがクライマックスのイベントとして設定されています。「暴力親父のいる家に、子どもたちを助けるべく単身乗り込む女子高生」というのは、現実世界の問題に対しての解決方法としては、行動は直球勝負なのだけど、物語のあらゆる描写よりも現実味に欠けてしまってるようにも思います。アナ雪が(アナ雪に限りませんが)多様性などのテーマについてさまざまなメタファーによって表現し、観客が現実社会の出来事と結びつけて考えられるようにしているのとは違う物語作りのアプローチだと思います。上手いことを言おうとしているわけではなく、「よくないことを何とかしたい」という純粋な思いで物語が作られているのだと思います。それに乗れるか乗れないかが本作の評価につながるのではないかと思います。
僕は細田さんのそういうまっすぐなところ、嫌いじゃないです。