「傍観者として楽しむか、安全なところから批評をするか」竜とそばかすの姫 Infinityさんの映画レビュー(感想・評価)
傍観者として楽しむか、安全なところから批評をするか
まず、この映画を見てハッピーになれる人は、ストーリーを深く考えず、考察とかもあまり入れずに、音楽・映像を楽しめる人かと思います、しそういう風に見れば楽しく終われるかもしれません。
・・・それが監督が映画を使って描こうとしたそのストーリーの手の上で踊らされているにしても・・・
以下考えれば考えるほど微妙な気持ちになる点を述べ、ネタバレ込みで注意喚起を込みで書くので、楽しく見たい・見れた人はここまででスキップ推奨。
恐らくこの映画は、「結局のところ、全ての人がこのネット社会の中で、傍観者になってるよ。・・・気づいている私(監督)以外」という問題意識を投げかける装置だったんだと思います。
多くの人が語っているように、ストーリーは印象的な場面を「雑多に」繋いでエンディングまでつながっていますが、ネガティブな感覚を乗り越えて最後大円団として追われた人は、鈴の周りの大人のように(映画的には超展開でご都合的な進みであれ)、最後ハッピーならそれでよしとして問題を終わらせる、見落としてしまっている傍観的立場の人間で、映画を批判している人は、ジャスティンのスポンサーのように、何かがあればすぐに意見を変える無責任な批判者。あるいはDV父のように、信念を持ったもの相手には怯んでしまう卑怯者。
恐らく「竜=監督」が現実世界及びネット社会で批判、攻撃を受けている存在で、「鈴=主人公」という空想的存在が、竜をなんだかんだで助けましたよ、そしてそれと共に、作中で一度示された様々な社会問題も、フィルターを通した先で(現実的にはネットの向こうの世界で)なんとなく一区切りついて、なんかおめでたく終わると、そこにあった問題は遠いものとしてすぐ忘れましたよね?、と今の社会の闇はこういうところなんですというように皮肉的に描いたのだと思います。
そう考えると、一般の人でも考えつくようなストーリーの粗を狙って作ってたとも言えそうで、考えれば考えるほど、エンターテインメントの時間のためにお金を払ったはずなのになぁ、とため息をついてしまいます。
監督と同じ問題意識を共有して「うんうん」と思えそうな人にはいいかもしれません。