「面白い映画で賛否両論だと思う。私は少し否定側。」竜とそばかすの姫 アニメ勢さんの映画レビュー(感想・評価)
面白い映画で賛否両論だと思う。私は少し否定側。
細田守監督の「インターネット」を題材とする映画として、私の知る限り2作目の今作は、
良し悪しはあれど、良作だったと思います。
○まず良かったと思った点
音楽が映画館で聴くべきものだと感じました。音楽はこの物語中で非常に重要なものであり、その設定がしっかりと納得できる程素晴らしいものでした。映画館ならではの身体の中心が震えるような音だからこその臨場感は流石と言うほかありませんでした。
また演出が素晴らしく、現実部分を通常のアニメで、作中に登場する「U」の世界を3Dで描き分けているのが素晴らしいと感じました。さらに言えば、現実のクジラにはフジツボが付いているのですが、それをスピーカーに見立てた発想は非常に面白いなぁと思いました。
○少しイマイチだと思った点
ストーリーが駆け足で、心理描写が中盤から分かりづらかったことです。とは言っても全体の流れは面白かったです。
サマーウォーズは勧善懲悪の特徴が色濃く出て、非常に分かりやすい映画であるのに対し、今作ではネットの匿名性や誹謗中傷を題材として人間模様が描かれています。この作品は現代の問題を内包しており、誹謗中傷をしているキャラクターを軽々しく責めることが出来ず、考えさせられる内容だと思いました。
ただ、場面が変わるのが少し早く、あくまで私の意見ですが、キャラクター同士の関係の変化に関して取り残されたように感じました。
また、この作品の賛否両論になりそうな部分ですが、現実世界の自分の価値というのが薄弱であると感じました。一応、「現実でも勇気を出せばなんとかなる」という風なストーリーであり、主人公のアバターの価値が高いからこそのストーリーですが、もっと自分を労って欲しいと思うようなことがありました。
○総評
長々と書きましたが、レビューの題名とは違って、私はこの映画を誰かに勧めたくなりました。それはインターネット社会を生きる私たちが考え直さなければならないような内容が、この作品にはあるからです。誰かをコメントで叩くことが多い現代、自分は正義を持って叩いているつもりが、周りがヒートアップしているから自分もそれに乗っかっているだけである事がかなり多いと思います。この映画は、その気付きを与えようとしているのだと感じました。
それと、作中に登場した高知駅がもう完成度が高すぎてビビりました。