「いや竜との接点…」竜とそばかすの姫 向日葵さんの映画レビュー(感想・評価)
いや竜との接点…
細田守監督だから神作、と足を運ぶのは今後警戒しようと思いました。
映像美だけにとても残念です。
まず、歌と映像に関してはとんでもない技量を見せつけており、見ていて気持ちが良かったです。
本編は半分以上が3Dグラフィックやlive2dで描かれていますが、違和感はなくきれいな仕上がりで、世界観にもマッチした素晴らしい出来です。
導入と主人公の過去や環境の描写はとても丁寧で分かりやすく、主人公に好感を持つことができます。
しかしストーリーが展開していって、一番重要な、タイトルにもなる竜との関わり方が急展開過ぎます。
主人公の意思にしては動機が薄く、しかし何故か異様に拘り自分が被害に合おうともそこに関わろうとします。
物語を見る限り、主人公目線では誰なんだろう?くらいの印象しかないのに。
物語冒頭に描いた「なんでお母さんは見ず知らずの子を助けて私を置いて行っちゃったんだろう」「批判されるのが怖い」
の答えが出ていない状態で尚且つ友人が調べてって言ったから…くらいの根拠。
竜を見つけた際、「貴方は誰?」の連呼…いやお前が誰なんだ…と思ってしまいます。
多分最初はしのぶくんが竜みたいな展開を匂わせてのどんでん返しを狙っているんですが、最後の最後に分かるなら
竜目線のストーリー描写が欲しかったです。いや誰だよ、なんでだよ、可哀想だけど助ける義理なさすぎだろ。となるのを防いでほしかった。
母親がしたことをずっと疑問に思っていた女の子は、子供を守るために飛び出しました…さらには世間に顔バレすることも悔やまず…その姿と歌声には全世界が泣いたのです…。映像はとても綺麗でしたが、
なんか全世界に本来の顔晒せば信じてくれる〜の流れ、分からなくはないけど
本当にそうだろうか…が強すぎて頭を捻ります。
どんでん返しと終盤のネタバレを
やりたくて仕方がないにしてはバレバレ、しかもそのせいで物語が急展開、更には薄くなっている気がしました。
竜のことを知ってから助けたくなって話を聞きに行くなら分かるんですが、
竜って何者!?教えて!!なんか会ってみたら悪い人じゃないんだよ!(竜は他の人のアカウントを停止させるなどの悪行をしている)みたいな、なんか腑に落ちない理屈ばかりなんですよね。
しまいにはその腑に落ちない展開でおそらくなんかめげずに関わろうとして結果的に助けてくれた主人公を大好きと言ってシーンが終わる…
いや、助かったんですか?
え、どうなったんですか?保護されたんですか?その前の父親が怯えて逃げ帰るシーンも大げさすぎてちょっと難しかったです。心理描写に詳しくないので、細かい設定があったのかもしれませんが、分かりづらかったです。
映像が綺麗、歌が綺麗という点でまあお金の無駄とまでは思わないですが、どうだった?と聞かれたらあ〜と言ってしまいます。
個人的に好きな場面は、主人公が夜行バスに乗っている際の窓の映り込みの指紋の跡。ライティングされるたびに、指紋の跡が光る拘りに、とても興奮しました。
映像美、声優さんに関しても良質だっただけに残念です。