「ストーリーは粗いがテーマは良い。映像・音楽は圧巻。」竜とそばかすの姫 なおさんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーは粗いがテーマは良い。映像・音楽は圧巻。
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少女の成長物語として一貫性があり、胸を打つ歌と映像美で劇場で観たことを後悔しないぐらい良作だった。
確かに多くの方の評価にあるように、ストーリーには多少の無理矢理感や疑問が生じる点はあったが、主題を揺るがす程のものではなく私は気にならなかった。逆にそういった細かい点も気になる方からは評価が低いだろうなと感じた。
また監督の過去の作品や美女と野獣と既視感のあるシーンが登場するのも事実。しかし主題は全くの別物なのでここも引っかかるかどうかは個人差が出るだろうなと。
印象深かったのは、母親の死に際の呆気なさとラストの分厚い入道雲の向こうから陽の光が顔を出し始めたカット。
余りにも呆気ない母親の居なくなり方が妙なリアルさすら感じると思って見ていたが、物語後半で、遺された誰かを守りたいという意思が切なくも暖かみをもってすずの歌や父親とのやり取りから滲んでくる演出が素晴らしかった。
全てを終えたラストでも、表向きすずの日常には大きな変化は生じておらず、ただ現実世界でも歌えるようになり父と夕飯を共に出来るようになった程度。一見大した変化ではないがUの世界および鈴の内面では大きな一歩であり、それを象徴するような雲の後ろの太陽が美しく、華美でない印象的なラストとしてこの映画の〆に合っているなと惹きつけられた。
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