「豪快に予想していたルートから脱輪した」竜とそばかすの姫 あさんの映画レビュー(感想・評価)
豪快に予想していたルートから脱輪した
なぜベルが竜に惹かれたのか分からない、というレビューもあったので心配していたのですが、そこはなんとか自分なりに納得することができました。
突然ライブ中に現れた竜は大勢の人に追われていて、なにか抱えきれない感情があってそれを暴力で発散しているように見えます。
鈴は竜の姿に何となく自分を重ねたのではないでしょうか?(マイクを突きつけられて叫んでしまう→走って逃げる→歌詞(?)を書き殴り結局破いてしまう……など)
お城の中に女性の絵が飾ってあるのも竜の母親に何か不幸があった事を連想させます。
最初は自分に似てて気になってたけど、「傷ついてるから助けてあげなきゃ!」→あれ、これって水難事故の時の母親の気持ちでは……? みたいな感じかな、と思いました。
そんな個人的な解釈も手伝ってか、Uの中で鈴が歌う所は映像的にも凄く綺麗で、印象的でした。もしかして、ベルが出てきて人気が無くなっちゃった歌い手的な女の子って、昔鈴の母親が助けた女の子だったりして……それでエセ正義マッチョは竜の父親なのでは……なんて妄想したりもしたのですが、その後から怒涛の違和感ラッシュ。
鈴「兄弟のところに行く」
は分かりますが、なにを一人で行かせてるんだ大人達……
まず駅でお姉様方は一緒に電車に乗るか鈴の父親に連絡しなきゃだめだし、
鈴の父親は電車に間に合わなくても、せめて兄弟のいる町の駅か、兄弟発見には間に合うように駆けつけて欲しかった……
それが無理でも最悪、暴言親父が鈴の肩を掴んだ時に後ろからそっと暴言親父をたしなめて止めさせるくらいのことはしてくれると思っていたので、鈴が顔を傷つけられた時と、地元に帰ってきて駅で父親が「メシは?」みたいな事聞いた時すごく腹立たしかったです
一番がっかり、というか悲しかったのは鈴が抱きしめた後、竜が泣きもせずに「戦う」と言ったことです。
これ以上14歳の子供に何させようとしてんの???
Uを理想の仮想現実として描こうとするなら、対になる鈴たちの世界はもっとリアリティを持って作って欲しかった。
鈴は兄弟を助けたいと思った事で母へのわだかまりを解消できたし、歌えるようになったし、幼馴染ともいい感じだし。多分竜兄弟の方も気持ちの面では救われた部分があると思います。吹部の子とカヌー男子のカップルも可愛いです。
でも私はこの映画がハッピーエンドだとは思えませんでした。
「可哀想な目に遭った子(鈴や竜)がなんとなく救われたような感じになって良かったね」というコンテンツがUの技術や歌で飾り立てられて、それを一般大衆や、高みの見物決め込んでた保護者面の大人達、同級生達が消費して満足している映画でした。