「ここ数年で稀に見るレベルの駄作」竜とそばかすの姫 南野コミチさんの映画レビュー(感想・評価)
ここ数年で稀に見るレベルの駄作
あまりに投げやりな出来に監督は本当は作りたくないものを無理矢理作らされてるのではないかと思うほどでした。
だめだと思う点はいくつもありますが、一番は観客に対して不誠実なところだと思います。
設定を観客に開示しない不誠実さ。
Uの世界に入っている間、本来の肉体がどのような状態になっているのか、決して見せません。偶然見えないのではなく、クライマックスのみんなが集まって歌うシーンなどで明らかに意識的に主人公の現実の姿を見せていません。これは不誠実だと思います。
プレイヤーキルによって現実の肉体がどうなるのかも観客に見せなければ、竜がどれほど悪いことをしていて、あれほど嫌われているのか観客には伝わりません。
そもそもUが何を目的にしたツールで、あれが出会い系なのかゲームなのか、何なのかも不明。主人公たち以外のアバターはウヨウヨ中を彷徨ってるだけでUの中で何かをしている様子も描かれない。
主人公が何を思って、竜に近づいたのか分からないなどのストーリーで「ん?」と思うようなことも多々ありましたが、私が一番不満に感じたのが、この、Uに関する設定を開示せずになんとなくストーリーを進める不誠実さです。
「現実は変えられないけど、Uでは変えられる」的なことを繰り返し言ってましたけど、それなら、ユーザーの外見とか素質を元にアバターを作成するのもおかしな話だと思います。一から自分の好きなように作成できなきゃおかしい。主人公は運良く(?)人型のアバターを引き当てられましたけど、人型ではない虫やなんだか分からない珍奇な格好のアバターもいたことを見ると、結局は生まれ持っての本人の努力とは関わりない部分の素質が全てという主張にもなり得ると思います。
ここは致命的にストーリーと設定が矛盾している点に思えます。