「人生はいつも青コーナーから。を教えてくれる、一風変わったお勧めな作品です。」BLUE ブルー 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
人生はいつも青コーナーから。を教えてくれる、一風変わったお勧めな作品です。
観た方の評判が高い事が気になり、鑑賞しました。
で、感想はと言うと、良い。良いです。
鑑賞前は全くのノーマークの作品だったので、観て良さをしみじみと噛み締めています。
ドキュメントの様にボクサーの生き様を淡々と描いていて、必要以上に美化していないのが良い。
四者四様のボクサーとしての在り方が物凄く興味深い。
ボクシングが大好きだけど、勝ちに恵まれない瓜田。
ボクシングの才能に恵まれ、日本タイトルを目前としながらもパンチドランカーの病に苛まれる小川。
ボクシングを形から入ったがいつの間にかプロのボクサーして取り組む楢崎。
才能に恵まれるがプロテストに失敗し、スパーリング中の不慮の事故でプロボクサーを諦めた洞口。
本来なら松山ケンイチさん演じる瓜田を中心に東出昌大さん演じる小川との光と影の対比が描かれる所を榎本時生さん演じる楢崎と守谷周徒さん演じる洞口も描かれていて、なかな絶妙なバランス加減。
また、木村文乃さん演じる千佳が良い。
さっぱりしていて可愛らしい♪
物凄く泥臭いかと思ったら全然そうでもなく、それぞれに苦悩や葛藤はあるが、必要以上にドロドロしてない。
ある意味でさっぱり。
「それはそれ。これはこれ」みたいに割り切っている感じが面白いが人によってはあっさりし過ぎと言う意見もありそう。
また、タイトルマッチ以外では青コーナーも赤コーナーもあまり意味はないと言うのは知らなかったので勉強になりましたw
瓜田以上に成長と活躍を見せるのが楢崎。
最初はなんちゃってボクサーだったけど、いつの間にか真摯にボクシングと向き合う姿が良いんですよね。
でも、なかなか勝ちに恵まれないし、時折ウザいのもたまに傷w
小川は才能に恵まれたボクサーではあるけど、パンチドランカーとして苛まれている。
真っ直ぐに歩けない。時折呂律が回らない。吐き気を催し、仕事や生活にも支障を来すのがリアル。
そんな才能に恵まれながらも光と影を東出昌大さんが演じているのが良いんですよね。
昨年のスキャンダルで作品の出演が遠ざかっていましたが、元々良い演技をされる方でもあるので、この小川役はバッチリ。
私生活と役者としての技量はまた別物と考えているので、活躍はやっぱり嬉しい。でも作品のお蔵入りや降板になるお痛は程々にw
難点は瓜田が主人公でありますが、小川にも楢崎にも焦点がきちんと当たったいる分、瓜田の存在感が薄い。
10敗以上していて勝ちに恵まれないが、決して練習を怠っている訳ではない。
また、後輩に偉そうに言われても、それを受け流せる大人な対応が取れるが、ボクサーとしての苦悩や葛藤が薄い。
ボクサーとして資質が薄いと言う訳では無いと思うが、闘争心と言う点では向いてないのかも知れない。
元彼女の千佳を後輩の小川に取られている点を普通に受け止めている点も大人ではあるが、全てを手に入れたい!と思うからこそ勝ちへの執念を異常な程燃やす。そう考えるとボクサーとしての向いてないのかも知れない。
とても珍しい感じの主人公であるのは間違いないし、かなり難しい役どころを松山ケンイチさんが演じているのは流石なんですが、ちょっとこの辺りで評価が分かれる所ではあるかと思います。
なので、瓜田が誰にも知られずに引退をしてからの件がちょっと長いので、焦点がボケる感じはしますし、主人公の意義もブレる。
また間延びをする感じはしますね。
あと細かい所では、会場の後楽園ホールでの歓声と客入りの加減がちょっと合っていない。
東のボクシングの聖地でメッカの後楽園ホールでの撮影をしているのは物凄く評価が高いんですよね。
レンタル料もそれなりに掛かるし、リングを組み立てるのも別途で掛かる。
この辺りを疎かにするとリングが最初から設置されている「新宿FACE」や「新木場1stRING」で済まそうと妥協されるんですが、新宿FACEや新木場1stRINGではやっぱりボクシングのイメージは薄い。
なので、聖地・後楽園ホールでの撮影は物凄く評価しますがコロナの影響で客入りを制限しての撮影にしては歓声が大き過ぎる。
また後楽園ホールは天井が高いので満員でも無い限り、こんなに歓声が密にならないし大きくならない。
でも、コロナ禍の入場制限をかけての客入りでは500人程度では歓声も薄いので難しい所ではありますが、気になりました。
普通、ボクシングの映画を作る場合はもっと光の部分を大きくして、感動モノに仕上げるんですが、この作品はそう言った勝ちを含めての栄光の部分が少ない。
瓜田はボクシングを引退して卸売市場で働く。
小川は念願のチャンピオンになって、結婚もしたが、タイトル防衛戦で失敗し、引退。
パンチドランカーの影響で仕事にも支障を来す程の身体になっている。
楢崎はとりあえずボクシングは続けている劇中ではまだ勝ちに恵まれていない。
一握りの者を目指していたが小川ですら、その一握りになれたが初防衛戦で敗れて、引退した後の健康障害に苛まれているのがリアル。
唯一の救いは楢崎が明るく元気にボクシングを続けている事ぐらい。
割りと救いが無いと言えば、救いが無い。
でも見応えはある。
小川が主人公なら割りとしっくり来ますが、そうでもない。
かと言って瓜田は主人公らしくない。
主人公はボクシングを通しての若者で青コーナーに立つ者とする割りとしっくり来るかな。
あと、竹原ピストルさんの「きーぷ、うぉーきんぐ!!」が主題歌ですが、個人的にはアレクサンダー大塚選手の入場曲の青西高嗣さんの「AOcorner」がぴったりハマるかと思うんですが如何でしょうか?
とても珍しい感じのボクシングをテーマにした作品ですが、見応えはあります。
ボクシングが終わっても人生や生活は続く。
皆が「あしたのジョー」のジョーの様に真っ白な灰になるのに憧れるがそうは出来ないし、またそうなってはいけない。
それぞれのラウンドの後に続くエキストララウンドに焦点を当て、それでもボクシングが好きだと言う気持ちを描かれている。
人生はいつも青コーナーからのスタート。
とても大人な作品でありながら、清々しさを感じる作品です。
結構お勧めな作品なので、興味があれば是非是非です♪