劇場公開日 2021年10月1日

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「終わりの心得①」サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ よしおさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0終わりの心得①

2025年4月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

メタリカみたいなメタルバンドのドラマーにスポットを当てた音楽映画を想像し、なんとなく今まで見なかった作品。ようやく見たら、全然違ってました。私の『終活の心得』として記憶に残さねばいけない。

恋人の女性ギターボーカルと二人でメタルバンドをやっているドラマーの主人公が、突発性難聴で音が声が聞こえなくなってしまいます。長年バンドで生活してるんだから、さあどうすんな?というお話。

私は今年50歳になる。人生100年時代ともなれば、折り返しになります。いやそもそも、100年どころか明日、目が覚めない可能性もある。なんも保証ありません。誰しも歳を重ねることにより、目が耳が身体が悪くなる。必ず衰えますわ。おまけに私は色の見分けも弱い。学生の頃、美術の先生に『絵は上手く描けてるが、なぜここをこの色で塗ったん?』と言われ、やっぱみんなと違う見え方してんやなと自覚。なんか暗い感情が湧いたが、今は上手く描けてたんならええやんけと思う。

老眼という新たなる敵が加速装置を搭載してやってきたが、眼鏡があれば本も読めるし、車やバイクの運転もしていいライセンスがあるので、今は特に困ってはいませんが、いずれは受け入れなきゃならんでしょう。

ラストシーン

もはや生活レベルや環境の違いを感じ、恋人の家を黙って去った主人公は、街のベンチに座る。サウンド・オブ・メタルというタイトルは、こういう事かと。高い金を払い手術したものの、元の状態になんか戻るわけがなく、不快な金属音ばかりが延々と彼には鳴り響くわけです。医学的な細かい事はわからないが、どうもそういうもんらしい。

後半の流れから、ネガティブな私は彼が自ら命を絶ってしまうだろうと思って見ておりましたが、補聴器を外し、無音の世界で佇む彼の表情で終わるラストは、彼がこの病気を、聞こえない世界を受け入れたんだなと思いたい。

よしお
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