「音の質・・・聞こえれば、それで良いというものでは無いのが分かりました。」サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
音の質・・・聞こえれば、それで良いというものでは無いのが分かりました。
ルーベンの場合(ミュージシャンが音を失ったら?)
身につまされるストーリーでした。
目(見える)と耳(聞こえる)のどちらかを失うとしたら、
目と耳のどちらを選ぶだろう?
そんな問いかけをしたことがありませんか?
私は、やはり「目」を選ぶと思います。
ミュージシャンでドラマーのルーベンは、ボーカルでギターを弾く
ルーと2人、レーラーハウスで全米を移動しながら、ツアーをするのが
ここ数年の日常だった。
ルーとルーベンは恋人関係にあり、マネージャーであり
公私を共にするパートナーだった。
ある日突然ルーベンは難聴を発症する。
それは瞬く間にルーベンの聴力を奪った。
病院で聴力検査を受けて診断を聞く。
取り急ぎ2人は、教えて貰った
「聞こえない人たちのコミュニティ・・・支援センター」を
訪ねる。
突然の事に苛立つルーベンをリーダーのジョーは暖かく迎える。
失聴を受け入れて「手話」を学び、役割分担をして協力し合って
共に生活をする。
静かで豊かな思い遣りの生活があった。
映画を見た限りでは健常者で指示したり命令を下す人は居なかったように
見受けました。
ボスはジョーだけ。
失聴を受け入れた様子のルーベンだったが、
彼ははまだ諦めていなかった。
トレーラハウスを売り払い身の回りの金目のものを売り払い、
難聴を治す最後の手段、
《人工内耳インプラント手術》を受けたのだ。
耳の奥に人工の内耳チップを埋め込む手術を受けて、
4週間後に《音入れ》という操作を行う。
補聴器のようなサウンドプロフェッサーを装着して、
「スイッチオン(音入れ)」をするのだ。
確かに聞こえる。
しかしキンキンして不快感がある。
実際には入念で根気強いリハビリテーションが必要とのこと。
個人的には「難聴のインプラント手術」
これは初耳でした。
この映画は、
無音、
ノイズ、
(メタル・・金属を埋め込んだ音は、耐え難く不快だし、
(ノイズはパーティーなどの多数の人がつとろう場面や、
(交通量の多い雑踏などがうるさく感じる、ようです。
手術を受けたルーベンはルーの実家の父親(マチュー・アマルリック)を
訪ねる。
ルーは留守だったが、夕方、2人はひさしぶりに再会を果たす。
すっかり印象の変わった2人。
黒髪でボブヘアのルーシーは、すっかりしっとりした大人の女性に
なっている。
ルーベンも髪を殆ど坊主頭にして、雰囲気が変わっている。
身を引くように、翌朝、ルーの家から出て行くルーベン。
あてはあるのだろうか?
ベンチに座ると教会の鐘が鳴っているようだ。
それはグワーン、プワーンと反響して耐え難く五月蝿い。
思わずルーベンはサウンドプロフェッサーを、外してしまう。
ホッとして安堵して寛いだ表情を取り戻すルーベン。
そこで映画は終わる。
彼が今後どのように決断して生きていくのかは、分からない。
ただ支援者センター長のジョーの言った言葉。
「聞こえないことはは障害では無い。」
「静けさを受け入れた先に平穏な生活がある」
この言葉が耳に残っている。
とは言っても若者が仙人のような境地になのは簡単ではない。
人はパンのみで生きるもにあらず・・・だし。
やはり悩ましいです。