「「ろう」という生き方」サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
「ろう」という生き方
メタルバンドの話で、ものすごく騒がしい作品なのかと思っていたら、むしろ聴覚を失ってゆくミュージシャンの物語だった。まあ、メタルバンドのドラマーが主人公なので、最初の印象が間違っているわけではないのだが。
タイトルの「サウンド・オブ・メタル」はダブルミーニングだった。メタルバンドの主人公が音を失っていくという点でメタルの音の物語でもあるが、もう一つは、聴力を取り戻すためのインプラント手術後の音を指している。インプラント手術は簡単に言うと金属を耳に埋め込むようなもので、疑似的に聴力を回復させるためのもの。この音が大変に不快な金属音なのだ。映画は主人公が手術を受けた後の音を観客にも体感させる。世界の音の何もかもが金属の反響音として聞こえてくる。本作は、そんな描写も含めて、「ろう」とは治すべき病気や障害ではなく一つの生き方の実践であると描いている。ろう者のコミュニティが牧歌的な心地よいコミュニティとして描かれているのもその表れだ。音が非常に重要な作品なので、本当は映画館で観たい作品である。
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