「涙あり、笑いあり。奇想天外。全く期待してなかったが、見事に裏切ってくれた。」劇場版 ルパンの娘 満塁本塁打さんの映画レビュー(感想・評価)
涙あり、笑いあり。奇想天外。全く期待してなかったが、見事に裏切ってくれた。
フジテレビのテレビ版は全く見ていない。こういう中心のキャラクターが定まったTVシリーズの映画版は、わかりやすいかわりに、可もなく不可もなしのどうでも良い作品が定番だ。だから事前の無料リーフレットは見ていたけど、ただそれだけ。
なーんにも期待していなかった。あら探ししてやろうとスクリーンに臨んだ。
ところがぐいぐい引き込まれて、涙あり、笑いあり、躍動感ありの力作だったよ。
殆ど、泥棒の術、手練手管はカンケーなくて、深田恭子を中心とするフアミリー、泥棒一家のおちゃらけアクション+ミュージカル+人間ドラマ。子供にもわかりやすく、大人にも共感を得やすい作り。リズミカル。小沢真珠はじめとしたおちゃらけが秀逸のわりに泣かせる。
何しろ、エンタメとして面白くさせるには王道と言える「タイムマシン=過去の書き換え」「大切な人を失った悲しみや怒り、大切な家族の絆」を大道具として用いているから鉄板な上に、
ドラマとして「爆発しないで数秒前に絶対止まる」とわかりきっている時限爆弾で緊張感煽るから面白い。おちゃらけミュージカルや、独特の濃い存在感で笑わせる藤岡弘も麿赤兒も良い。見て損は無い安定作。老若男女全世代向け。
深田恭子、渡部篤郎、小沢真珠のコミカルな演技も、久々お目見えの観月ありさの若々しさも良い。でも一番良いのは、主人公の本当の父母と赤ん坊の娘の貧乏なストリートマジシャンだけれども、その貧乏だけれども間違いの無い幸せと、その父親の死を書き換える、時系列的に崩れていく深田恭子と瀬戸康史と娘の現在の幸せの「2つの幸せ」の拮抗。主人公の葛藤で泣かせる。タイムループはバックトウザフューチャー以来、現在の書き換えと合わせ、映画でもテレビでも使いまわされてきた描写。それでも時限爆弾と相まってチコっと目が潤んだ。すすり泣きも聞こえた。