劇場公開日 2021年3月5日

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「物足りなさもあるが、不屈の精神に感銘」野球少女 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5物足りなさもあるが、不屈の精神に感銘

2021年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

ドラマ「梨泰院クラス」でトランスジェンダーの役を演じたイ・ジュヨンが、今作では“男の世界”である韓国のプロ野球界に挑む女子高校生に扮しており、若くしてジェンダーの平等や多様性といったテーマを託される俳優になりつつある。いわゆる典型的な美人女優ではなく、クールな顔立ちと強い意思を感じさせる目力がそうしたキャスティングの一因だろうか。

小柄だが130km/hの直球を投げるチュ・スインは、男子ばかりの高校野球部に特例で入部し3年目を迎え、卒業後もプロに進みたいと切望する。部の監督やコーチ、母親からも反対されるが、諦めずに努力を続ける姿に周囲も考えを改めるようになり、やがてプロ球団のテストを受けるという大きなチャンスを得るが…というストーリー。

イ・ジュヨンは撮影前に投球の猛特訓をしたそうだが、リトルリーグ時代から男子をしのぐ活躍をしていたという設定の割に、肘が曲がったままのフォームは不自然さを感じさせ、速球投手というキャラクターに説得力が足りない(投げた球が映るショットはCGで処理している)。あと、予算的な事情だとは思うが、通常のスポーツ映画なら最大の盛り上がりになるであろう試合の場面が一度もないのはやはりさびしい。本作が長編デビューとなるチェ・ユンテ監督は、トライアウト(入団テスト)のシークエンスなどで中々達者な演出を見せているので、次作に期待したい。

高森 郁哉