「狼vs狼」孤狼の血 LEVEL2 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
狼vs狼
凄かった。
鈴木氏の存在感たるや、絶品だった。
台詞を聞かせる技術とでも言うのだろうか…あれほどに荒ぶりがなってはいても鮮明に聞こえる。録音部が優秀なのだろうか?素晴らしかった。
見事なまでの続編で…大上に感化され狼に成長した日岡。大上とは違うタイプではあるが組織からは「孤狼」と呼ばれるに相応しい。
対する上林も、ヤクザの組織からはみ出す「孤狼」だった。武闘派と呼ばれるタイプになるのだろうか…現行の体制に牙を剥き噛み付く姿には、昔ながらの血筋を感じてしまう。
正反対の組織に属しながらも、現体制に反抗する姿は共通するようにも思えて、ラストの一騎打ちを経て、こいつらが手を組む未来なんかも想像してしまう程であり、だからこそ射殺って結末は衝撃的だった。
共存は出来ない。
同族嫌悪って言葉があるけど、生存競争でもいい。孤独な狼は、並び立つもう一匹を認めはしないのだと。
終始、負け続ける日岡も印象的で…。
その辺りが大上に及ばない部分でもあるかの表現に思えたり。素質というものがあるのなら、大上と上林は生粋であり先天的なもので、日岡は後天的なもののようにも感じる。
そんな棲み分けを感じさせる演出に、身震いさえ覚える。勿論ら勝手な推論ではあるのだが。
俺的に1番助かったのは、役者陣があつかう流暢な広島弁だった。ご当地の方が聞くとどういう印象なのかは分からんが、少なくとも俺には流暢に聞こえた。アレをエセ関西弁でやられてたらと思うと…正直、ここまで集中して見れなかったと思う。
その広島弁に代表されるように、役者陣は、皆様、好演で熱演だった。
梅雀さんが担うパートも見応えあった。
彼らはおそらく内務調査班のエキスパートなのだろう。その為の履歴を抜かりなく準備してるあたり、過去に何匹もの狼を仕留めたハンターなのだと思う。
そしてここにも、日岡の孤狼ならざる気質が落とし込まれてたりもする。彼は仲間を求めたのだ。
西野さんはもっと評価されてもいいと思う。
坂道グループで平手さんの評価は聞きはするが、西野さんの表現力も群を抜いてる。視線とか呼吸の間合とか…作為がある行為に作為を感じないのだ。それが基本ではあるけれど、やってと言われて出来るものではない。
アイドルが出してくるものではないのだ。他作品でも、西野さんの好演は光ってた。
話が逸れた。
そして、暴対法が施行される。
ヤクザがヤクザであった時代は終わり、獣達は檻に閉じ込められる。野生の狼が闊歩する時代は終わったのだ。
ラストのシークエンスは、片田舎で駐在として勤務する日岡。ある日「野生の狼を見かけた」との通報があり山狩りに駆り出される。
「野生の狼は絶滅した」と突っぱねる日岡。
だが彼は山狩りで、その狼を目撃する。
幻なのかもしれない。
本編は「どこにいるんだ」と狼を探す日岡の後姿で終わる。
日岡自身は大上の後継者だ。
だが、暴対法の施行により、日岡の後継者は居ない。狼の血筋は絶えたのだ。
彼は居るはずのない狼を探す。
まだ、どこかに…飼い慣らされる事を良しとしない、野生の血脈を探すのだ。
白石作品には総じて反骨精神を感じてしまう。
決して暴力を推奨してるわけではないのだが、現代への反抗というか、自由への渇望というか…表面上、安全ではあるが窮屈極まりない現代への疑念。
目には見えない檻の脅威。
飼い慣らされてていいのか?
体制に押し潰されても生きていると言えるのか?
そんな監督の絶叫が今作からも発せられてるようだった。